5. 2027年2月期1Qの減益は、どこから来たのか
直近の決算は2027年2月期1Qである。売上収益は1,064億円で前年同期比▲3.9%、営業利益は141億円で▲11.7%、親会社の所有者に帰属する四半期利益は96億円で▲7.5%だった。
減収減益だが、中身は少し違う。会社の説明によると、減収の主因はデベロッパー事業で前年にあった内装・施設関連の大口受注の反動減だ。
一方で百貨店事業、SC事業、決済・金融事業を中心に売上総利益が堅調に増加し、会社が併せて開示する事業利益は前年同期比で1.7%の増益になった。営業利益が減ったのは、前年に計上した固定資産売却益の反動だとしている。
つまり本業の稼ぐ力を示す利益は増えており、営業利益の減益は前年の一時的な利益との比較から生まれている。構造が傷んだという読み方は、この開示からは導きにくい。
会社は2027年2月期の通期で、売上収益4,690億円(+5.4%)、営業利益470億円(▲4.1%)、当期利益290億円(+2.5%)を見込む。営業利益の1Q進捗率は30.0%で、単純な4分の1のペースは上回っている。
5.1 5期の利益トレンドの中での位置
過去5期の営業利益を並べると、2022年2月期の93億円から190億円、430億円、581億円と大きく切り上がり、2026年2月期は490億円に反落した。
2026年2月期は営業利益が前期比▲15.8%、当期利益が▲31.7%で、5期ぶりの減益となった期だ。ROEも10.5%から6.9%へ低下している。
会社計画は2027年2月期も営業利益で減益を見込む。利益のピークが2025年2月期だったという形は、計画上もまだ維持されている。株価が水準を切り下げた背景に、この利益トレンドの頭打ちが重なっている可能性は高い。
6. 小売業の中央値と噛み合わない、資産の重さ
この会社の収益構造は、小売業という区分の平均像とかなり違う。2026年2月期の連結営業利益率は11.0%で、小売業259社の営業利益率中央値3.7%を大きく上回る。
ところが総資産回転率(売上を総資産で割った資産の使用効率)は0.39回にとどまり、中央値の1.50回とは比べものにならない。薄利多売という小売業のイメージとは、真逆の組み合わせである。
総資産は1兆1,415億円に達する。内訳を開くと土地が3,020億円、投資不動産が1,771億円で、不動産を抱えた会社のバランスシートに近い。自己資本比率36.4%は中央値48.1%を下回り、有利子負債は1,765億円ある。
セグメント資産まで下りると、利益率の差の意味が変わってくる。百貨店事業の資産は6,360億円、SC事業は2,836億円だ。
それぞれの営業利益を資産で割ると、百貨店事業4.7%、SC事業4.8%となり、ほぼ並ぶ。売上に対する利益率では9.6ポイントも開いていた2つの事業が、投下した資産に対するリターンではほとんど差がない。
営業キャッシュフローは669億円、設備投資は264億円で、投資を吸収してなお余裕がある。配当は年54円で5期連続の増配、配当性向47.8%は小売業の中央値32.9%を上回る水準だ。
7. 筆者コメント
業界内での立ち位置に照らすと、この会社を小売業の物差しで測ることにそもそも無理がある。区分としての小売業には、日々商品を回転させて稼ぐ業態が多く含まれる。この会社はその対極に近い。
興味深いのは、指標を一段入れ替えるだけで事業の序列が入れ替わることだ。売上で見れば百貨店、利益率で見ればショッピングセンター、そして投下資産に対するリターンで見ればほぼ互角になる。
どれが正しいというより、どの指標で語るかによって見える景色が変わるということだろう。利益率の高さだけを取り出して事業の優劣を決めると、そのために寝かせている資産の重さを見落としやすい。
不動産を持つことは、収益の安定と資本効率の犠牲を同時に引き受ける選択でもある。この会社を見るときは、利益率と資産の重さをセットで並べる姿勢を持ってほしい。決算短信の連結数値だけでは、その両面は見えてこない。
参考資料
8.1 免責事項
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石津 大希