1. 売上の6割は百貨店。それでも利益率の序列は違う

グループの社名に百貨店の屋号は入っていない。それでも連結子会社には大丸松坂屋友の会が並び、売上の柱も百貨店事業だ。百貨店の会社という像はここから来ている。

2026年2月期の売上収益(IFRS)は4,450億円で、このうち百貨店事業が2,677億円。構成比は60.2%に達する。

本業が百貨店なのだから、稼ぐ力の序列も百貨店が一番のはずだ。そう考えるのが自然だろう。ところがセグメント別の営業利益率を並べると、百貨店事業は11.2%にとどまる。

これに対してSC事業は20.7%だ。売上はわずか660億円で構成比14.8%にすぎないのに、利益率は百貨店事業を9.6ポイント上回っている。

売上の主役と、利益率の主役が一致していない。この2つは対立する話ではなく、同じ会社の中で同時に成り立っている事実だ。

2. 売上15%のSC事業が、セグメント利益の4分の1を稼ぐ

2026年2月期のセグメント別の営業利益は、百貨店事業が298億円、SC事業が136億円、デベロッパー事業が70億円だ。決済・金融事業は9億円、その他が4億円と続く。

これを構成比に置き換えると、百貨店事業は57.5%。売上構成の60.2%からわずかに目減りする。

一方のSC事業は26.3%を占める。売上では14.8%しかない事業が、利益では4分の1を超える。

利益率の水準は一時的なものではない。SC事業の営業利益率は2022年2月期の4.0%から、8.1%、16.4%、20.3%、そして2026年2月期の20.7%へと切り上がってきた。

同じ期間の百貨店事業は、▲2.4%の赤字から3.5%、9.8%、11.3%を経て11.2%である。両者の関係は5期を通じて一貫しており、直近2期は9ポイント台の差で定着している。

念のため付け加えると、グループで最も利益率が高いのはSC事業ではない。決済・金融事業の21.5%だ。ただし売上42億円、営業利益9億円という規模で、利益構成比は1.8%にとどまる。収益性の高さと利益貢献の大きさは別の話である。

2.1 SC事業はどこから来た事業なのか

SC事業という名前は、開示の歴史をたどると比較的新しい。2020年2月期までの有価証券報告書では、このセグメントは「パルコ事業」として開示されていた。

現在のSC事業に属する連結子会社を見ると、パルコデジタルマーケティング、シンガポールのPARCO(SINGAPORE)PTE LTDがいずれも議決権100%で並ぶ。会社自身も1Qの決算短信で、このセグメントを「ショッピングセンター(SC)事業」と呼んでいる。

百貨店は商品を仕入れて売る商売であり、ショッピングセンターはテナントに場所を貸す商売だ。原価構造が違うのだから、利益率が並ばないのは理屈としては自然だろう。

とはいえ、それが開示上の数字としてここまではっきり出ていることは、セグメント情報を開かないと見えない。百貨店の会社という像が更新されにくいのは、売上という最も目に入りやすい数字が、いまも百貨店で6割を占めているからだろう。

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出所:J.フロント リテイリング株式会社 有価証券報告書をもとに筆者作成

出所:J.フロント リテイリング株式会社 有価証券報告書をもとに筆者作成

3. 1カ月で1割強下げた株価と、PER22倍台という水準

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

株価の足元は決して強くない。8月14日の終値は2,914円だったが、そこから水準を上げて8月27日には3,139円を付けた。8月中旬以降の終値ではこれが最も高い水準だ。

そこからは切り下げが続く。9月1日に2,933円まで戻したのを最後に2,900円台を割り込み、9月11日の終値は2,607円となった。8月中旬以降の終値では最も低い。

8月14日と比べれば1割強、8月27日の水準と比べれば2割弱の下落幅になる。ボラティリティ(株価の日々の値動きの激しさ)はこの1カ月、明らかに高まっていた。

もっとも直近は落ち着いている。9月10日の終値2,604円に対して9月11日は2,607円で、ほぼ横ばいだ。下げの勢いそのものは9月上旬でいったん止まった形にみえる。

下落の理由を一つに決めることはできない。相場全体の地合いに加え、2027年2月期の会社計画が営業利益で減益を見込む内容であること、直近1Qの営業利益が前年同期比で減ったことなどが意識された可能性はある。

9月11日時点でPER(株価収益率)は22.24倍、PBR(株価純資産倍率)は1.55倍だ。PERは水準として高い方に位置する。2026年2月期のROE(自己資本利益率)が6.9%で、小売業259社の中央値7.5%を下回っていることを踏まえると、この利益水準に対して市場が払っている値段は軽くはない。

4. 筆者コメント

売上の主役と利益率の主役が一致しない会社を、市場はどう値付けするのだろうか。私がこの銘柄で最も気になるのはそこだ。

百貨店事業は消費環境や訪日需要の波を受けやすい。売上構成で6割を占めるのだから、株価がその波に沿って振れるのは自然なことだ。

だが利益の4分の1は、性質の違うテナント賃料型の事業から出ている。賃料型の収益は、百貨店の売上ほど短期の消費動向に振られにくいと考えられる。ここが百貨店と同じ物差しで値踏みされているとすれば、収益の質の差はバリュエーションに十分反映されていないことになる。

逆に言えば、株価が振れる局面はセグメント別の収益性を読み直す機会でもある。同じ会社の中に、値動きの説明変数が複数あるとみておきたい。連結の営業利益率だけを追っていると、どの事業が何を支えているのかは見えてこない。決算のたびにセグメント情報まで開いて確かめる習慣を持つことをおすすめしたい。