5. 2027年3月期1Qの進捗と、通期で見込む利益の反転
2026年3月期の減収減益について、会社は決算短信で要因を説明している。総販売電力量は1,522億kWhで前年度比2.5%の減少となり、販売電力料収入が減ったことなどから売上高は2,804億円の減収になった。
支出面では他社購入電力料や火力燃料費が減少し、営業費用は3兆6,190億円と2,491億円(▲6.4%)減った。中期経営計画の総仕上げの年として「KX(Kanden Transformation)」に取り組み、掲げた財務目標も概ね達成したとしている。
収入と費用が同じ方向へ動いたため、減収でも経常利益の落ち込みは▲2.5%で止まった。売上の減少がそのまま利益の減少にならないのは、この事業の費用構造の特徴だ。
この5期の振れ幅は大きい。2023年3月期は営業損益が▲520億円の赤字、2024年3月期は営業利益7,289億円。その後は2025年3月期4,688億円、2026年3月期4,375億円と、高水準から緩やかに下りてきた。
ROE(自己資本利益率)も1.0%、21.8%、15.7%、11.7%と正常化の途上にある。直近の11.7%は電気・ガス業29社のROE中央値7.9%を上回り、営業利益率10.8%も業種中央値6.9%より高い。自己資本比率35.1%だけは業種中央値40.8%を下回るが、2022年3月期の19.2%からは着実に積み上がってきた。
2027年3月期1Qは、売上高1兆79億円、営業利益203億円、経常利益528億円、当期利益1,370億円だった。当期利益が経常利益を大きく上回っており、経常段階より下の項目で大きなプラスが生じたことになる。
通期予想は売上高4兆5,000億円(+10.9%)、営業利益2,500億円(▲42.9%)、経常利益2,900億円(▲44.1%)、当期利益3,100億円(▲18.4%)である。
この予想に対する1Qの進捗率は、経常利益が18.2%、営業利益が8.1%。当期利益だけは44.2%と先行しているが、これは上に触れた経常より下の要因によるものだ。
増収を見込みながら利益は大きく落とす予想になっている。保守的な置き方である可能性も、事業環境の変化を織り込んだ結果である可能性も、現時点では両方残る。
配当は2026年3月期の75円に対し、2027年3月期は80円を予想している。2期連続の増配で、配当性向は22.0%。業種中央値23.2%とほぼ並ぶ位置だ。
6. 国内47社のグループ構造が映す、電気以外の広がり
事業別の数字の背後にある器も見ておきたい。2026年3月末時点で有価証券報告書に記載された国内の関係会社は47社ある。
電気通信事業を営む完全子会社オプテージは資本金330億円。個人向けのインターネット接続、法人向け通信、有線一般放送、小売電気、警備業、電気通信設備の賃貸を手がける。情報通信事業の姿はここに重なると考えられる。
生活・ビジネスソリューションの側にも顔が並ぶ。不動産の分譲と賃貸を行う関電不動産開発は完全子会社で、ホテル事業とゴルフ場運営、バス事業を営む関電アメニックスも連結子会社だ。
富山県で旅客と貨物の輸送を担う黒部峡谷鉄道も完全子会社である。会員制の健康管理支援やサプリメント販売を手がける関西メディカルネットは議決権の80%、電子線照射による滅菌と材料改質を行う関西電子ビームは99.3%を保有する。
規制対象の送配電網は、資本金400億円の関西電力送配電が完全子会社として切り出されている。
通信、不動産、ホテル、鉄道、健康管理、滅菌。並べてみると、これを「関西の電力会社」の1語で束ねるのは無理がある。売上構成比10.1%という数字の中身は、それなりに雑多で、それなりに厚い。
7. 筆者コメント
業種内での立ち位置に照らすと、この会社の見え方はもう一段変わる。
ROEも営業利益率も業種中央値を上回り、自己資本比率だけが下回る。電力各社が横並びで語られやすいなかで、収益性が上・財務の厚みが下という組み合わせは、それほど平凡な姿ではない。
もっとも、自己資本比率の低さをそのまま弱さと読むのは早い。営業キャッシュフロー6,523億円に対し投資キャッシュフローが▲5,719億円、設備投資は5,806億円に達する。稼いだ現金をほぼそのまま設備へ回している会社だ。
電力事業はもともと負債を使って長期の設備を持つのが基本形で、財務の厚みが薄いこと自体は事業モデルの帰結でもある。問われるのは、その負債で買った資産がどれだけ稼いでいるかだろう。
その観点で言えば、資産の3%弱で利益の1割近くを生む区画が育っていることは、資本配分の論点として軽くない。決算を追うときは、連結の1本線ではなく事業別の資産と利益の対応を並べて見てほしい。
参考資料
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石津 大希