1. 社名の2語では収まらない、4つに分かれた事業の姿
2026年3月期の連結売上高は4兆566億円、経常利益は5,185億円だった。売上高は前期比▲6.5%、経常利益は▲2.5%である。
電力会社の決算は、燃料費と販売電力量、そして原子力の稼働という3点で語られやすい。一般的な見方はそこに収れんする。
ところが有価証券報告書の事業別の内訳を開くと、この会社は4つの報告セグメントに分かれている。エネルギー、送配電、情報通信、そして生活・ビジネスソリューションだ。
外部顧客への売上高で見た構成比は、エネルギーが80.4%、送配電が9.5%。電気を作って売る事業と、電気を届ける事業で89.9%を占める。
残る1割が、情報通信の5.5%と生活・ビジネスソリューションの4.6%だ。合計10.1%。売上の見え方だけを追えば、たしかに「おまけ」に見える比率である。
2. 売上の1割で経常利益の16%。事業別に見える利益の非対称
2026年3月期のセグメント別の経常利益は、エネルギーが3,773億円、送配電が630億円、情報通信が470億円、生活・ビジネスソリューションが390億円だった。
4事業を単純に足し上げると5,265億円になる。このうち電気に直結しない2事業の合計は861億円で、全体の16.4%を占める。
売上構成比では10.1%だった2事業が、利益では16%台まで比重を上げる。
利益率を並べると理由が見えてくる。セグメント間の内部取引を含む売上高に対する経常利益率は、生活・ビジネスソリューションが17.5%、情報通信が14.8%。
対してエネルギーは10.9%、送配電は6.0%にとどまる。規制の枠組みが効く送配電と、燃料価格に振られるエネルギーは、構造的に利益率が抑えられる事業だ。
さらに効いてくるのが、使っている資産の重さの違いである。4事業のセグメント資産の合計は12兆8,333億円で、エネルギーが8兆7,087億円、送配電が2兆7,329億円を占める。
一方、情報通信事業のセグメント資産は3,580億円しかない。4事業合計の2.8%である。その2.8%の資産で、経常利益の8.9%近くを稼いでいる。
発電所と送配電網という巨大な設備を抱える本業と、通信インフラを使う事業では、投じた資産1単位あたりの稼ぎがまるで違う。同じ会社の中に、資本の効率が一桁違う事業が同居していることになる。
電力株は一般に、規制産業として資本効率の低さを前提に語られやすい。だが事業別に割ると、その前提が当てはまらない区画が会社の内側にある。この2つの見方は、どちらも同時に成り立っている。
しかも情報通信は稼ぐだけの事業になっていない。2026年3月期の設備投資は748億円で、減価償却費411億円を大きく上回る。投じた額が償却を超えている以上、この事業はまだ拡張の段階にあると読める。
売上の伸びも対照的だ。エネルギーの外部売上高は前期比▲7.9%、送配電は▲0.8%だったのに対し、生活・ビジネスソリューションは+1.8%と唯一の増収である。情報通信は▲0.6%と、ほぼ横ばい圏を保った。
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出所:関西電力株式会社 有価証券報告書をもとに筆者作成
3. 1カ月で2割超の切り上がりと、PBR0.93倍という水準
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出所:各種資料をもとに筆者作成
株価に目を移す。8月14日の終値は2,401円だった。そこから8月19日には2,360円まで下押しし、これが直近1カ月で最も低い終値になった。
反転は8月20日で、終値は2,558円まで一気に水準を上げた。8月末は2,811円、9月1日には2,955円。9月3日の3,026円が直近1カ月で最も高い終値である。
その後は2,900円台での小動きが続き、9月11日の終値は2,965円だった。前営業日の2,957円とほぼ横ばいだが、1カ月前と比べれば2割を超える上昇である。
この2段階の切り上がりが何によるものかは、開示情報だけでは断定できない。電力セクター全体への資金流入や、バリュエーションの見直しが意識された可能性は考えられる。
9月11日時点のPER(株価収益率)は10.65倍、PBR(株価純資産倍率)は0.93倍だ。2026年3月末のBPS(1株当たり純資産)は3,101円で、株価はまだ純資産の水準を下回っている。
このPERは、会社の2027年3月期予想EPS(1株当たり当期利益)278円23銭を前提にした数字である。会社は同期の当期利益を前期比▲18.4%の3,100億円と見込んでおり、10倍台という水準は大幅な減益を織り込んだあとのものだ。
1カ月で2割超上げても、なおPBRは1倍に届かない。市場が何を織り込み、何を織り込んでいないのかを考えるには、ちょうどいい水準にある。
4. 筆者コメント
印象的なのは、利益の出どころと会社の呼び名がここまでずれている点だ。
「関西の電力会社」という言い方は間違っていない。売上の9割は電気に直結している。それでも利益の6分の1は、電気を作ることも届けることもしない事業から来ている。
このずれが残り続けているのは、投資家の関心が電気の側に寄る構造そのものが原因だろう。燃料価格、販売電力量、原子力の稼働。これらは四半期ごとに追える変数で、ニュースにもなりやすい。
対して通信や不動産、施設運営の積み上がりは、年1回の事業別開示を開かないと姿が見えない。追いにくいものは話題になりにくく、話題にならないものはイメージに反映されない。
株価がPBR1倍を下回ったまま切り上がっている局面では、この見えにくい側を数字で確かめておく意味が大きい。事業別の内訳を自分で割ってみることを、ぜひおすすめしたい。