9月は、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が入った緑の封筒が、順次届く時期です。次の支給日は10月15日で、以降も偶数月の15日に、年金とは別の入金として振り込まれます。
この給付金は、年金やその他の所得が一定の基準を下回る人に、年金へ上乗せして支給されるものです。ただし、要件を満たしていても自動では始まりません。請求書を出して初めて支給が動き出します。
今回は、2026年度の給付額と支給要件、緑の封筒が届いたあとの提出方法、そして「請求は毎年必要なのか」という疑問を順に整理します。あわせて、2025年6月に成立した年金制度改正法で何が変わるのかもみていきます。
なお、2026年度の給付基準額と、公的年金の平均受給月額に関する解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 上乗せの対象になるのは、どのくらいの年金額の人か
給付金の話に入る前に、公的年金そのものの水準を確認しておきます。2026年度の給付基準額をまとめた記事では、厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、60歳以上の受給権者の平均年金月額を次のように示しています。
1.1 厚生年金(国民年金部分を含む)の平均年金月額
〈全体〉平均年金月額:15万289円
〈男性〉平均年金月額:16万9967円
〈女性〉平均年金月額:11万1413円
1.2 国民年金の平均年金月額
〈全体〉平均年金月額:5万9310円
〈男性〉平均年金月額:6万1595円
〈女性〉平均年金月額:5万7582円
国民年金は全体で5万円台、厚生年金は15万円台です。ただし、これはあくまで全体をならした数字にすぎません。
実際の受給額には大きな個人差があり、月額30万円を超える人がいる一方で、1万円未満のケースもあります。現役時代の働き方と年金への加入期間が、そのまま金額の差として表れるためです。
年金とその他の所得を合わせても一定の基準を下回る場合には、「年金生活者支援給付金」を受け取れる可能性があります。
2. 給付金は「老齢・障害・遺族」の3種類に分かれている
年金生活者支援給付金は、年金収入やその他の所得が一定の基準額を下回る年金生活者の暮らしを支えることを目的とした制度です。2カ月に一度、年金に上乗せする形で支給されます。
2019年に始まった比較的新しい制度で、受け取っている基礎年金の種類に応じて次の3つに分かれます。給付額の決まり方も支給要件も、それぞれ別に定められています。
- 老齢年金生活者支援給付金(補足的老齢年金生活者支援給付金)
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
3. 2026年度の給付額は前年度から3.2%の増額
給付額は、公的年金と同じように物価の変動などを踏まえて年度ごとに見直されます。
2026年度(4月分から)の金額は、前年度に比べて+3.2%の引き上げとなりました。
3.1 【2025年度→2026年度】年金生活者支援給付金の支給金額
3.2 2026年度「年金生活者支援給付金」の給付額
- 老齢年金生活者支援給付金(月額):5620円(※基準額)
- 障害年金生活者支援給付金(月額):1級 7025円・2級 5620円
- 遺族年金生活者支援給付金(月額):5620円
老齢については、この5620円はあくまで基準額です。実際の給付額は、保険料の納付済期間などに応じて一人ひとり計算されます。
また、上記はいずれも月額です。給付金は偶数月の支給日に2カ月分がまとめて、年金と同じ口座へ、年金とは別の入金として振り込まれます。基準額どおりを受け取れる場合、1回の支給で約1万1000円、年額にすると約6万7000円という計算です。
なお「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2025年3月における平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金4146円、障害年金生活者支援給付金5727円、遺族年金生活者支援給付金5228円でした。基準額と実際の平均には差があることも、あわせて知っておきたいところです。
※2025年3月において認定されている平均給付金額です。給付基準額が月5310円だった令和6年度に支給されていた金額のため、2026年度の5620円とは基準が異なります。
4. 支給要件は3種類で異なる。所得の線は10月分から上がる
続いて、誰が対象になるのかを確認します。以下の所得基準額は、令和8年10月分から適用されるものです。
「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」の対象となるのは、それぞれの基礎年金(障害基礎年金もしくは遺族基礎年金)を受給していて、前年の所得が491万8000円以下の人です。
この判定に、障害年金や遺族年金といった非課税の収入は含まれません。また、所得の基準額は扶養親族等の数に応じて引き上げられます。
3種類のうち老齢だけは、本人の所得に加えて「年齢」と「世帯全体の課税状況」も要件に入ります。次で詳しくみていきましょう。
4.1 「老齢年金生活者支援給付金」の支給要件
老齢年金生活者支援給付金の対象となるのは、下記1~3の要件をすべて満たす人です。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後生まれの方は82万6500円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は82万4100円以下
老齢の判定にも、障害年金・遺族年金などの非課税の収入は含まれません。
気をつけたいのは2番目です。本人の年金額が基準を下回っていても、同じ世帯に住民税を課税されている家族が一人でもいれば、世帯の要件を満たさないことになります。
また、「基準額ぎりぎりで給付対象となる人」との間に不公平が生じないよう、「基準額をわずかに超えて給付対象外となる人」には「補足的老齢年金生活者支援給付金(※)」が支給されます。
※補足的老齢年金生活者支援給付金:1956(昭和31)年4月2日以後に生まれた方で82万6500円を超え92万6500円以下である方、1956年4月1日以前に生まれた方で82万4100円を超え92万4100円以下である方に支給されます。所得が増えるにつれて、補足的老齢年金生活者支援給付金の給付額は減ります。
5. 緑の封筒が届いたら。請求書の出し方は2通り
公的年金と同じように、年金生活者支援給付金も請求手続きをしなければ支給が始まりません。要件を満たしているだけでは動かない、という点が最初の関門です。
5.1 請求書が届くタイミングは、年金の受給状況で変わる
これから65歳を迎える人には、誕生日の3カ月前に、老齢基礎年金の請求書に同封される形で給付金の請求書が届きます。必要事項を記入し、老齢基礎年金の請求書とあわせて提出します。
すでに年金を受給中の人で、新たに給付金の対象となった場合は、日本年金機構から毎年9月の第1営業日以降、順次「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送されます。はがきが入っているのが、緑の封筒です。
提出方法は2通りあります。令和7年1月以降にこのはがき型の請求書が届いた人は、電子申請で提出できます。電子申請を使わない場合は、はがきに氏名などを記入し、同封の目隠しシールを貼ったうえで、郵便ポストに投函します。
なお、支給要件に該当するかどうかを日本年金機構が確認できない人には、はがき型ではなく「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」と「所得状況届」が送付されます。繰上げ受給中の場合も書類の様式が異なります。
はがきには、請求した場合に支給される見込額(月額)が記載されています。封筒を開けた時点で、自分がいくら受け取れるのかを確認できる仕組みです。給付金の位置づけや封筒の色ごとの違いについては、年金生活者支援給付金の対象者・給付額・申請方法をまとめた記事もあわせてご覧ください。
6. 請求は毎年必要? 2年目以降の手続きと通知書
年金生活者支援給付金は、近年たびたび実施されている住民税非課税世帯向けの現金給付のような一時的な支援とは違い、要件を満たしている限り継続して受け取れる制度です。
そのため、一度請求書を提出すれば、要件を満たしている間は2年目以降の手続きは不要です。毎年出し直す必要はありません。
ただし、手続きが不要になるだけで、判定そのものは毎年行われています。継続支給の判定結果は前年の所得に基づき、毎年10月分(12月支給分)から1年間反映されます。
継続認定の結果、給付額が変わる場合は「年金生活者支援給付金 支給金額変更通知書」が、支給対象外となった場合は「年金生活者支援給付金 不該当通知書」が郵送されます。金額に変更がなければ通知書は届きません。
毎年度の額改定にともなう通知は、これとは別に「年金生活者支援給付金 支給金額(改定)通知書」として届きます。
なお、「日本国内に住所がないとき」「年金が全額支給停止のとき」「刑事施設等に拘禁されているとき」のいずれかに該当する場合、給付金は支給されません。
7. 2025年の年金制度改正で何が変わるのか
給付金の話から少し視野を広げます。公的年金の制度そのものは、現役世代にとってもシニア世代にとっても、働き方や暮らしと密接に関わっています。
2025年6月13日、国会で年金制度改正法が成立しました。主な見直しのポイントを整理しておきましょう。
7.1 社会保険の加入対象が広がる
- 短時間労働者の加入要件(賃金要件・企業規模要件)の見直し。いわゆる年収「106万円の壁」撤廃へ
7.2 在職老齢年金の基準が大きく緩む
- 支給停止調整額は2025年度の月51万円から、2026年度は月65万円へ大幅緩和
7.3 遺族年金の仕組みが見直される
- 遺族厚生年金の男女差を解消
- 子どもが遺族基礎年金を受給しやすくする
7.4 保険料と年金額の計算に使う賃金の上限が上がる
- 標準報酬月額の上限を、月65万円→75万円へ段階的に引き上げ(2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円)
7.5 私的年金の制度も広がる
- iDeCo加入年齢の上限引き上げ(2026年12月施行予定)
- 企業型DCの拠出限度額の拡充(2026年12月施行予定)
- 企業年金の運用の見える化(公布から5年以内に実施)
これらの見直しは、働きながら年金を受け取る人の手取りや、将来受け取る年金額に影響します。給付金の要件に使われるのも前年の所得ですから、働き方が変わる時期は、あわせて確認しておきたいところです。
8. まとめにかえて
年金生活者支援給付金は、2026年度に前年度から3.2%増額され、老齢の基準額は月5620円、障害は1級7025円・2級5620円、遺族は5620円となりました。老齢については基準額をもとに保険料の納付済期間などに応じて計算されるため、実際に受け取る金額は一人ひとり異なります。
対象になるかどうかを分けるのは、前年の所得です。老齢では、令和8年10月分から82万6500円(昭和31年4月1日以前生まれは82万4100円)という線が使われ、これに65歳以上であることと、同一世帯の全員が市町村民税非課税であることが加わります。障害・遺族は前年の所得が491万8000円以下という要件です。
9月から順次届く緑の封筒を開けて、まずは記載されている見込額を確かめるところからです。手続きは一度きりでも、判定は毎年10月分から入れ替わります。届いた通知書の中身や、ご自身が対象になるかどうかの判断は、年金事務所やお住まいの市区町村の窓口で確認しながら進めていただければと思います。

