4. 日本年金機構をかたる偽SMSを見分けるポイントが4つある

文面だけで真偽を判断するのが難しい場合は、次の4つのポイントを確認してください。

4.1 「未納で今月から年金支給停止」は、そもそも制度上あり得ない

まず疑ってほしいのが「保険料未納と年金支給停止は、そもそも別の話」だという制度の根本です。

国民年金保険料の納付義務がある第1号被保険者(原則20歳から59歳)が保険料を滞納したまま督促や催告に応じない場合、最終的に生じるのは財産の差押え(強制徴収)であり、日本年金機構自身がその手続きを公表しています(日本年金機構)。

逆に言えば、「保険料未納を理由に、いま受け取っている年金の支給を今月から止める」という制度は存在しません。

この一点だけでも、偽SMSの脅し文句が的外れだと見抜けます。まだ年金を受け取っていない20〜59歳の現役世代に同様の文面が届いた場合も、そもそも「いま受け取っている年金」自体が存在しないため、「今月から支給を止める」という脅しはやはり成立しません。

4.2 2. 65歳以上に「未納」の通知が届くこと自体、年齢的に不自然

国民年金保険料の納付義務があるのは原則20歳から59歳までで、60歳になると納付義務そのものがなくなります。(60〜65歳未満は「任意加入制度」、65〜70歳未満も受給資格期間が不足する方に限り「特例任意加入」という、自分の意思で保険料を納め続ける例外はありますが、対象はごく一部にとどまります。この任意加入者が保険料を滞納した場合に、義務加入者と同じ強制徴収・差押えの対象になるかどうかは、公式ページ上では明記されていません)。

そのため、すでに年金を受け取っている65歳以上の大半にとっては、「保険料未納」の通知が届くこと自体がやはり不自然だと考えてよいでしょう。

なお、65歳以上の年金からは介護保険料や後期高齢者医療保険料が「特別徴収(天引き)」されていますが、これは国民年金保険料の納付とは別の仕組みであり、両者を混同しないよう注意したいところです(日本年金機構)。

4.3 本物の日本年金機構が「絶対にしないこと」を知っておく

年齢や制度の話とは別に、「本物の年金機構が絶対にしないこと」も確認しておきましょう。警察庁は、日本年金機構の職員が次のような行為を一切行わないとして注意を呼びかけています(警察庁)。

  • 電話での自動音声ガイダンスを使った連絡
  • マイナンバーカードの画像提出の依頼
  • 口座番号など個人情報の聴取
  • 銀行振込やATM操作の案内

電話での自動音声ガイダンスや、SMS・メールでの個人情報の入力・送金誘導など、経路を問わずこうした行為を年金機構が行うことは絶対にありません。「マイナンバーカードの写真を送って」「口座番号を教えて」と言われた時点で、名乗る相手が何であれ偽物と考えてよいでしょう。

4.4 4. 正規のスマホ決済との違いを知っておく

国民年金保険料はPayPayなど6つのスマホ決済アプリで納付できる正規の仕組みが実際に存在します(日本年金機構)。ただしこれはあくまで、自宅に郵送された「納付書」に印字されたバーコードを、自分でアプリのカメラを使って読み取る方式に限られます。

SMSやメールに貼られたリンクやQRコードから決済画面に進むよう誘導された場合は、正規の納付経路ではないため、その時点で偽物と判断してよいでしょう。

少しでも不安な場合は、文面のリンクや電話番号は使わず、日本年金機構の公式窓口である「ねんきんダイヤル」(0570-05-1165、ナビダイヤル未対応の場合は03-6700-1165)に、自分で調べた番号からかけ直して事実を確認するのが安全です(日本年金機構)

5. クリックしてしまった・情報を入力してしまったときの対応手順と相談先

すでにリンクをタップしてしまった、あるいは個人情報を入力してしまった場合でも、落ち着いて次の手順を踏めば被害を最小限に抑えられる可能性があります。国民生活センターは、SMS・メール型のフィッシング被害について次のような対応を呼びかけています(国民生活センター)。

  • 同じID・パスワードを使い回している他のサービスがあれば、すべてパスワードを変更しましょう
  • クレジットカード情報を入力してしまった場合は、カード会社や金融機関に直ちに連絡しましょう
  • QRコード決済などで実際に送金してしまった場合は、決済アプリの運営会社に連絡するとともに、警察相談専用電話「#9110」や最寄りの警察署にも早めに相談し、被害届の提出を検討しましょう
  • 判断に迷う場合や実際に金銭的な被害が出た場合は、消費者ホットライン「188」に相談しましょう

なお、フィッシングサイト経由でQRコード決済アプリから送金してしまった場合、その支払いは決済事業者からの補償対象にならないケースがある点にも注意したいところです(フィッシング対策協議会)。

あくまで「郵送された納付書のバーコードを自分で読み取る」場合とは違い、SMS内のリンクから誘導されて送金した以上は正規の納付ではないため、「送ってしまったお金は戻らないかもしれない」という前提で、まずは被害の拡大を防ぐことを優先しましょう。

5.1 主な相談・通報窓口一覧

  • 警察相談専用電話「#9110」:詐欺かどうか判断に迷う場合の相談窓口(警察庁)
  • 悪質商法などの匿名通報ダイヤル「0120-924-839」:匿名での情報提供が可能(警察庁)
  • 消費者ホットライン「188」:フィッシング被害や消費者トラブル全般の相談窓口(国民生活センター)
  • フィッシング対策協議会(info@antiphishing.jp):不審なメール・SMS・サイトの情報提供先(フィッシング対策協議会)
  • 日本年金機構「ねんきんダイヤル」(0570-05-1165):年金の手続き状況を自分から確認したいときの窓口(日本年金機構)

6. まとめにかえて|「年金の偽SMS」にも、振り込め詐欺と同じ警戒心を

日本年金機構をかたる偽SMSは、電話のオレオレ詐欺と違って、声のトーンや会話のやり取りから違和感に気づくきっかけがない分、一人で静かに読んでしまいやすいものです。

だからこそ、「未納」「差し押さえ」「今月から支給停止」といった不安をあおる言葉が並んでいたら、まずリンクを開かずに一呼吸置きましょう。「保険料未納の帰結は差押えであって、今の年金を止めることではない」という制度の基本、そして65歳以上ならそもそも納付義務自体がほぼないという事実を思い出すこと、そして本物の日本年金機構が「絶対にしないこと」を思い出すことが、遠回りに見えて一番確実な対策になります。

7. 筆者からのコメント

熊谷 良子

この記事では「65歳以上ならまず不自然」という見分け方を紹介しましたが、60代前半で任意加入制度を使い、自分の意思で保険料を納め続けている方は、少し注意が必要です。

任意加入者が保険料を滞納した場合に、義務加入者と同じ強制徴収・差押えの対象になるのかどうかは、日本年金機構の公式ページ上でも明記されていません。年齢だけで「あり得ない」と判断できるのは、あくまで受給がすでに始まっている方が中心だという点は覚えておきたいところです。

ご自身やご家族が任意加入で保険料を納めている場合は、年齢の話よりも「マイナンバー画像や口座番号を聞かれたら偽物」「SMS内のリンクからの送金は偽物」という、年金機構が絶対にしない行為のチェックリストのほうを優先して確認することをおすすめします。任意加入か義務加入かにかかわらず使える、いちばん確実な見分け方です。

参考資料