会社員と自営業・個人事業主では、社会保険の仕組みがまったく異なります。

それでも、実際に負担する保険料の総額を比べてみると、実は大きくは変わらないケースがあります。

一方で、老後に受け取れる年金額には、はっきりとした差が生まれます。

この記事では、年収(自営業は所得)700万円・単身で40年間働き続けたと仮定した場合を例に、現役時代の保険料と老後の年金額を試算し、比較します。

あわせて、自営業がその差を埋めるためにできる備えについても整理します。

1. 年収(所得)700万円・単身なら、現役時代の保険料は年間いくらか

まずは、現役時代に毎年支払っている保険料そのものを比べてみます。ここでは40歳未満・東京都在住という条件で試算します。

※会社員は額面年収(給与総額)、自営業は売上から必要経費を差し引いた所得金額をベースに、それぞれの制度上の計算基準を700万円と仮定して試算しています。

1.1 会社員は健康保険料+厚生年金保険料で本人負担が年間約99万円

会社員が加入する協会けんぽの健康保険料率は、令和8年度の東京都の場合で9.85%です。これに、令和8年度から新たに徴収が始まった「子ども・子育て支援金」の0.23%を加えた率を、会社と本人で折半します。年収700万円であれば、本人負担分は年間で約35万2800円です。

厚生年金保険料率は18.3%で固定されており、これも会社と本人で折半します。本人負担分は年間で約64万500円です。

健康保険と厚生年金を合わせた本人負担の合計は、年間で約99万3300円になります。

1.2 自営業は国民健康保険料+国民年金保険料で年間約98万円

自営業の場合、国民健康保険料は住んでいる自治体ごとに料率が異なります。ここでは東京都特別区の令和8年度モデル料率を使って試算します。所得700万円・単身であれば、医療分・後期高齢者支援金分・子ども子育て支援金分を合わせて、年間で約76万2200円になります。

国民年金保険料は全国一律の定額で、令和8年度は月額1万7920円、年間では約21万5000円です。

国民健康保険と国民年金を合わせた負担の合計は、年間で約97万7200円になります。会社員の約99万3300円と比べると、本人が支払う金額そのものはそれほど変わりません。

年収(所得)700万円・単身なら、現役時代の保険料は年間いくらか1/2

年収(所得)700万円・単身なら、現役時代の保険料は年間いくらか

出所:全国健康保険協会「令和8年度保険料率のお知らせ」日本年金機構「国民年金保険料」練馬区「国民健康保険料の計算方法」をもとにLIMO編集部作成

和田直子

現役時代の負担額だけを見ると、会社員と自営業でそれほど差がないように感じるかもしれません。ただし、これはあくまで一例です。国民健康保険料は自治体ごとに料率や均等割の金額が異なるため、住んでいる場所によって数万円単位で変わることがあります。

ご自身の保険料を正確に知りたい場合は、お住まいの市区町村が公表している保険料の試算ページや窓口で確認することをおすすめします。

2. 保険料の中身はまったく逆、会社員は年金重視・自営業は医療重視

負担の合計額は近くても、その中身を分解すると、会社員と自営業では重心がまったく逆になっていることが分かります。

2.1 会社員の負担の半分は会社が肩代わりしている

会社員の健康保険料と厚生年金保険料は、いずれも会社との折半です。つまり、本人が支払っているのと同じ金額を、会社側も別途負担しています。年収700万円の場合、会社が負担する分も年間で約99万円にのぼり、本人負担と合わせると実質的には約198万円が保険料として動いている計算になります。

この「見えない上乗せ」があることが、会社員の厚生年金保険料の負担感が大きく見えても、老後の受給額に反映されている理由のひとつです。

2.2 自営業の国民健康保険料には上限があるが、それでも高水準

国民健康保険料には、所得がいくら高くても保険料がそれ以上には増えない「賦課限度額」という上限があります。医療分・支援金分・介護分それぞれに上限額が設けられており、所得700万円程度でもこの上限に近づく区分が出てきます。

一方で、国民健康保険料には会社側の負担にあたる仕組みがなく、すべて自分で支払う必要があります。上限のおかげで青天井にはなりませんが、それでも会社員の健康保険料より高水準になりやすいのが実情です。

3. 老後に受け取れる年金には月13万円近い差がある

現役時代の負担が近い水準であるのに対し、老後に受け取れる年金額は、会社員と自営業で大きく変わります。

3.1 会社員は基礎年金+厚生年金の2階建てで月額約19万8500円

会社員は、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取れます。令和8年度の老齢基礎年金の満額は月額7万608円です。老齢厚生年金は年収に応じた報酬比例部分として上乗せされ、年収700万円で40年間働いたと仮定した簡易試算では、月額約12万7900円になります。

両方を合わせると、月額は約19万8500円です。あくまで年収が40年間変わらないと仮定した試算のため、実際の受給額は現役時代の年収の推移によって変わります。

3.2 自営業は基礎年金のみで月額7万600円(満額)

自営業は国民年金の第1号被保険者にあたり、原則として老齢基礎年金しか受け取れません。40年間保険料を納め続けても、受け取れるのは満額でも月額7万600円です。

会社員との差は月額で約12万8000円、倍率にすると約2.8倍になります。何年働いても受け取れる年金額が変わらないという点は、自営業にとって現役時代からの備えが特に重要になる理由です。

和田直子

老齢厚生年金の試算は、年収がずっと変わらないという前提の簡易的なものです。実際には、昇進や転職で年収が上下しながら40年間を過ごす人がほとんどのため、キャリア全体の平均年収は現在の年収よりも低くなることが多い点には注意が必要です。

とはいえ、報酬比例の仕組みがある以上、会社員が基礎年金だけの自営業より受給額が上乗せされること自体は変わりません。ご自身の場合の目安を知りたい方は、日本年金機構の「ねんきん定期便」やねんきんネットで、実際の加入記録に基づいた見込み額を確認してみることをおすすめします。