2. 加入すると、保険料と受給額はどう変わるか

認可を受けると従業員全員が厚生年金の被保険者になります。第1号被保険者のままでいる場合と何が変わるのかを確認します。

保険料と受給額の違いは、LIMOの記事「国民年金と厚生年金の違いは何か?保険料の逆転する等級を編集部が具体的な数字で試算。標準報酬月額とは」から要点を借りて確認します。

厚生年金は、会社員や公務員が加入する制度です。国民年金の上に上乗せされる「2階部分」にあたり、厚生年金に加入している人は、自動的に国民年金にも加入していることになります。

つまり厚生年金加入者は、国民年金だけの人より保険料の負担先が増えるわけではなく、勤務先を通じて2つの制度に同時に加入している状態です。二重に保険料を払っているわけではありません。

出所:LIMO「国民年金と厚生年金の違いは何か?保険料の逆転する等級を編集部が具体的な数字で試算。標準報酬月額とは」

保険料の計算方式が違います。

日本年金機構の公表資料によると、国民年金の保険料は令和8年度で月額1万7920円です。所得の多い少ないに関わらず、全員が同じ金額を納めます。令和7年度は1万7510円、令和6年度は1万6980円で、年度ごとに見直されています。

一方、厚生年金の保険料率は18.3パーセントで固定されており、標準報酬月額(おおよその月給)にこの率を掛けて計算します。事業主と被保険者が半分ずつ負担する労使折半のため、本人が実際に負担するのは半分の9.15パーセントです。

等級ひとつ分の違いで、国民年金より安いか高いかがひっくり返る2/2

標準報酬月額の等級別に厚生年金の本人負担額と国民年金保険料を比べた表。第9等級の15万円は1万3725円で国民年金より4195円安く、第13等級の19万円は1万7385円で535円安く、第14等級の20万円は1万8300円で380円高く、第19等級の30万円は2万7450円で9530円高いことを示している

出所:日本年金機構「国民年金保険料」日本年金機構「厚生年金保険料額表」をもとにLIMO編集部作成

どこで高低が入れ替わるのかも試算されています。

厚生年金の本人負担額は、標準報酬月額×9.15パーセントで決まります。ただし標準報酬月額は、報酬月額をそのまま使うのではなく、日本年金機構の保険料額表にある32段階の等級に当てはめて決まる仕組みです。理論上の交点を単純計算すると19万5847円になりますが、これに該当する等級は実在しません。

実際の等級表で確認すると、標準報酬月額19万円(報酬月額18万5000円以上19万5000円未満・第13等級)の本人負担は1万7385円で、国民年金の定額1万7920円より535円安くなります。一方、標準報酬月額20万円(報酬月額19万5000円以上21万円未満・第14等級)の本人負担は1万8300円で、380円高くなります。

等級を離すと差は広がります。

標準報酬月額15万円(第9等級)の本人負担は1万3725円で、国民年金より4195円安くなります。標準報酬月額30万円(第19等級)の本人負担は2万7450円で、9530円高くなります。

パートで厚生年金に加入している方にとって、この逆転構造は意外な発見だと思います。「厚生年金は保険料が高い」というイメージが先行しがちですが、等級1つ分の違いで結論がひっくり返る境目が、実際に存在します。

本人負担だけで比べる危うさも指摘されています。

厚生年金には事業主負担分の9.15パーセントが別途上乗せされており、制度全体で見れば国民年金より手厚い保険料が支払われています。さらに厚生年金には、健康保険(協会けんぽや組合健保)が原則セットで付いてきます。

傷病手当金や出産手当金など、国民健康保険には無い給付も含まれるため、保険料の本人負担額だけで両者を比較するのは一面的な見方にすぎません。

受給額の決まり方も違います。

老齢基礎年金(国民年金から受け取る年金)は、保険料を納めた期間の長さで金額が決まります。満額を納めた人と、一部未納がある人とでは金額が変わりますが、現役時代の収入の多い少ないは関係ありません。

一方、厚生年金から受け取る老齢厚生年金は、加入期間に加えて、現役時代の標準報酬月額(おおよその収入水準)も反映されます。同じ加入期間でも、収入が高かった人ほど受け取る年金額は多くなる仕組みです。

出所:LIMO「国民年金と厚生年金の違いは何か?保険料の逆転する等級を編集部が具体的な数字で試算。標準報酬月額とは」

3. 半数以上の同意で、全員の年金が変わる

ここまで、強制適用と任意適用の範囲、任意適用の手続き、そして加入すると保険料と受給額がどう変わるのかを見てきました。

強制適用事業所となるのは法人の事業所(事業主のみの場合を含む)と、常時5人以上の従業員がいる個人の事業所(農林漁業やクリーニング業・飲食店などのサービス業の一部を除く)です。令和4年10月からは、士業に該当する個人事業所のうち常時5人以上を雇用している事業所も強制適用になりました。

それ以外の事業所は、従業員の半数以上の同意を得て事業主が申請し、厚生労働大臣の認可を受けることで適用事業所になれます。認可されると従業員全員が加入し、資格取得年月日は認可を受けた日です。

添付書類は任意適用同意書、事業主世帯全員の住民票原本(コピー不可・90日以内発行)、公租公課の領収書(原則1年分・コピー可・所得税・事業税・市町村民税・国民年金保険料・国民健康保険料)の3つです。

加入すると保険料は定額から定率に変わります。国民年金の令和8年度の保険料は月1万7920円、厚生年金の本人負担は標準報酬月額の9.15パーセントで、標準報酬月額19万円(第13等級)なら1万7385円と535円安く、20万円(第14等級)なら1万8300円と380円高くなります。

ただし事業主負担分が別に上乗せされ、健康保険も原則セットで付くため、本人負担額だけの比較は一面的です。受給額も老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされる形に変わります。ご自身の事業所が強制適用か任意適用かは、年金事務所にご確認ください。

参考資料

LIMO編集部社会保障解説班