厚生年金に入る義務がない事業所でも、申請すれば加入できます。
日本年金機構によると、任意適用の申請には従業員の半数以上が適用事業所となることに同意していることが必要です。事業主が申請し、厚生労働大臣の認可を受けた場合は、従業員全員が加入することになります。
この記事では強制適用の範囲と任意適用の手続きを確認したうえで、加入すると保険料と受給額がどう変わるのかを見ていきます。
1. 【任意適用事業所】義務がなくても、申請すれば厚生年金に入れる
厚生年金保険は事業所単位で適用されます。まず義務がある事業所の範囲から確かめます。
1.1 法人はすべて強制適用。個人は常時5人以上から
出発点は強制適用の範囲です。
日本年金機構は、厚生年金保険の適用事業所となるのは株式会社などの法人の事業所だとしています。事業主のみの場合も含まれます。また、従業員が常時5人以上いる個人の事業所についても、農林漁業、サービス業などの場合を除いて適用事業所となります。
除かれるサービス業の例として、機構はクリーニング業、飲食店、ビル清掃業等を挙げています。自分の事業所が該当するかは、事業所業態分類票で確認することになります。
被保険者となるべき従業員を使用している場合は、必ず加入手続きをしなければなりません。法人であれば従業員が1人でも、社長1人だけでも強制適用の対象になるということです。
1.2 令和4年10月から士業の個人事業所も強制適用
範囲は広がってきています。
日本年金機構は、令和4年10月から、法律・会計にかかる業務を行う士業に該当する個人事業所のうち、常時5人以上の従業員を雇用している事業所は強制適用事業所となったとしています。
それまでは個人事業所であれば業種によって除外されていた分野が、順次対象に入ってきているということです。
1.3 任意適用には従業員の半数以上の同意が必要
ここが任意適用の入口です。
強制適用の対象外の事業所であっても、従業員の半数以上が厚生年金保険の適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けることにより適用事業所となることができます。健康保険と厚生年金保険のいずれかまたは両方に加入できます。
提出時期は従業員の2分の1の同意後、速やかにとされています。提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所で、電子申請、郵送、窓口持参のいずれかです。
1.4 認可を受けると従業員全員が加入する
同意した人だけではありません。
事業主が申請し、厚生労働大臣の認可を受けた場合は、従業員全員が加入することになります。保険給付や保険料は、適用事業所と同じ扱いになるとされています。
つまり半数以上の同意で申請でき、認可されれば同意しなかった人も含めて全員が被保険者になるということです。この点は事前に共有しておく必要があります。
1.5 資格取得日は認可を受けた日
いつからかも決まっています。
任意適用の適用年月日、つまり被保険者の資格取得年月日は、厚生労働大臣の認可を受けた日です。申請した日や同意を得た日ではありません。
認可が下りるまでは従来どおりの扱いが続くため、加入を前提とした保険料の計算や給与処理は、認可日を確認してから始めることになります。
1.6 添付書類は同意書と住民票と公租公課の領収書
必要な書類も定められています。
添付書類は3つです。従業員の2分の1以上の同意を得たことを証する任意適用同意書、事業主世帯全員の住民票原本(個人番号の記載がないもの)、そして公租公課の領収書です。
住民票はコピー不可で、直近の状態を確認するため、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものが必要です。事業所の所在地が個人事業主の住民票の住所と異なる場合は、賃貸借契約書のコピー等を別途添付します。
1.7 公租公課は原則1年分。コピーでよいが5種類すべて出す
領収書の範囲が広い点に注意が必要です。
公租公課の領収書は原則1年分で、所得税(国税)、事業税(道府県税)、市町村民税(市町村税)、国民年金保険料、国民健康保険料のすべての領収書を提出します。こちらはコピーで構いません。
ただし、領収書の代わりに未納がないことを確認できる公的な証明書を添付する場合は、原本での提出が必要です。電子申請の場合、公租公課の領収書は画像ファイル(JPEG形式)による添付データとして提出できます。
1.8 パートは4分の3基準で判定される
誰が加入するのかも押さえておきます。
適用事業所に常用的に使用される70歳未満の方は、国籍や性別、年金の受給の有無にかかわらず厚生年金保険の被保険者となります。雇用契約書の有無などとは関係なく、労務の対償として給与や賃金を受ける使用関係があるかどうかで判断されます。試用期間中でも報酬が支払われる場合は使用関係が認められます。
パートタイマーやアルバイト等でも、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上である方は被保険者となります。
1.9 4分の3未満でも入る道がある
基準を下回る働き方でも、対象になる仕組みがあります。
日本年金機構によると、「特定適用事業所」「任意特定適用事業所」または国・地方公共団体に属する事業所では、パートタイマー・アルバイト等の所定労働時間または所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満であっても、週の所定労働時間が20時間以上あること、所定内賃金が月額8.8万円以上であること、学生でないことの3つをすべて満たす場合は被保険者になります。
特定適用事業所とは、厚生年金保険の被保険者数が一定以上の事業所のことで、現在は51人以上が基準です。ただし厚生労働省によると、この企業規模の要件は10年かけて段階的に縮小・撤廃され、月額8.8万円という賃金の要件も法律の公布から3年以内に撤廃されることが決まっています。
任意適用の認可を受けて適用事業所になったあと、さらに任意特定適用事業所の申出をするという道もあります。手続きは年金事務所で確認してください。加入すると保険料の負担は生じますが、受け取る年金の中身も変わります。
なお、国民年金と厚生年金の保険料の仕組みや受給額の違いに関する詳しい解説は、LIMOの記事「国民年金と厚生年金の違いは何か?保険料の逆転する等級を編集部が具体的な数字で試算。標準報酬月額とは」および「国民年金と厚生年金の切り替え、退職時は「14日以内」に手続きが必要。本当の期限は2年、未納1年で年金が約2万円減る?試算をチェック」から一部を引用・参照しています。

