10月は、公的年金が2カ月分まとめて振り込まれる月です。通知に印字された金額を見て、この先も足りるのかを考える方は少なくありません。

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金を含む)の平均年金月額は男女全体で15万289円でした。

ただ、この平均から足りない額を計算すると、分布の下側にいる人の実感とは大きくずれていきます。この記事では、下から4分の1の位置にいる人の月額を階級別の人数から割り出し、足りない額を20年分に積み上げて確かめます。

長井 祐人
「足りない額は平均から計算すればよい」と決めつける前に、公的年金という土台が自分の場合はどのあたりに来るのか、その位置から見た不足はいくらになるのか、その不足を上乗せでどう埋めるのか、という順番で考えていくと、話が整理しやすくなります。

なお、厚生年金の受給額の階級ごとの人数に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント
【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント

1. 同じ厚生年金でも受け取る額に差がつくのはなぜなのか「2階建ての仕組みから確認」

【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイントでは、階級ごとの人数を一覧で取り上げています。

公的年金は、暮らしている人が広く加入する層と、勤め先を通じて加入する層が重なった形をしています。

下の層が「国民年金」、上の層が「厚生年金」で、この重なりを建物にたとえたのが2階建てという言い方です。同じ制度に入っていても、どの層をどれだけ積んだのかで受け取る額が変わってきます。

公的年金制度の種類1/3

公的年金制度の種類と加入する制度を2階建てで示した図

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

1.1 1階の「国民年金」は加入する範囲と保険料がどう決まっているのか

下の層から見ていきます。誰が加入し、いくら納め、いくら受け取れるのかは、次の3点で示されています。

  • 加入対象:原則、日本に住む20歳から60歳未満のすべての人
  • 保険料:全員一律、年度ごとに見直しあり(※1)
  • 年金額:保険料を全期間(480カ月)納付した場合、65歳以降に満額の基礎年金(※2)を受給できる(未納期間分に応じて減額調整)

※1 国民年金保険料:1万7920円(2026年度の月額)
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:7万608円(2026年度の月額)

1.2 2階の「厚生年金」は報酬と加入期間がどう金額に反映されるのか

上の層も同じ3点で並べてみます。金額の決まり方が1階とはっきり違います。

  • 加入対象:主に会社員、公務員など
  • 保険料:収入に応じて(上限あり)決定する報酬比例制
  • 年金額:加入期間や納付保険料により決定(国民年金に上乗せして支給)

1階で納める額は、誰でも変わりません。年度ごとの見直しはあるものの、収入の違いが保険料に反映されることはない仕組みです。

2階のほうは、給与や賞与といった報酬に率を掛けて保険料が決まる「報酬比例制」がとられています。報酬が大きければ納める額も大きくなり、その積み重ねが受け取る額に映ります。ただし報酬には上限があり、そこから上は反映されません。

加入していた制度がどちらか、あるいはどちらの期間が長かったかで、65歳以降の金額には人ごとの開きが生まれます。分布に幅が出るのは、この仕組みがそのまま形になった結果だといえます。

長井 祐人
土台の高さは働き方の記録がそのまま出てくる部分で、いまから大きく積み増せるものではありません。だからこそ、足りない額を数える前に「ねんきん定期便」で自分の見込みを確かめておいてください。数えはじめる位置が変わると、答えも変わります。

2. 厚生年金の受給額は分布の下側までどこまで広がっているのか「年金月額の階級別人数」

報酬と加入期間で金額が決まると分かっても、下側にどれだけの人が積み上がっているのかは、平均の数字を見ているだけでは分かりません。公表されている階級別の人数で確かめます。

男女全体でみた厚生年金(国民年金を含む)の平均年金月額は15万289円でした。厚生労働省の資料「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によるものです。

公的年金の支払いは原則2カ月に一度ですから、この平均であれば1回の振込は約30万円という計算になります。

それでは、平均にあたる月額15万円に届いている人は、受給権者全体のどれくらいなのでしょうか。

※以下の厚生年金の年金月額には、国民年金(老齢基礎年金)部分を含みます。

2.1 【男女全体】月15万円の線に届く人の割合と、下側に積み上がる人数を確認

厚生年金(国民年金を含む)の年金月額分布2/3

厚生年金の年金月額分布

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

【男女全体】平均年金月額15万289円の分布で、下から数えるとどの階級に届くのか

  • ~1万円:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

厚生年金を月額15万円以上受け取っている人は、男女全体の受給権者のうち49.8%で、半分には届いていません。厚生年金を受け取っていない人まで含めて数えれば、この割合はもっと下がります。

階級を下から順に足していくと、9万円未満までで約200万人、10万円未満までで約300万人を超えます。分布の下側は空いているのではなく、平均の手前に人が層になって積み上がっている形です。

2.2 【男女別】分布の下側の厚みは男女でどれだけ違うのか

下側の厚みは、男女に分けるとまったく違う姿になります。

厚生年金保険年金月額階級ごとの受給権者数(男女別)3/3

厚生年金保険年金月額階級ごとの受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

【男性】平均年金月額16万9967円の分布を、下から数えるとどうなるのか

  • ~1万円:3万446人
  • 1万円以上~2万円未満:1万257人
  • 2万円以上~3万円未満:5404人
  • 3万円以上~4万円未満:5185人
  • 4万円以上~5万円未満:1万4747人
  • 5万円以上~6万円未満:3万9134人
  • 6万円以上~7万円未満:13万4214人
  • 7万円以上~8万円未満:23万186人
  • 8万円以上~9万円未満:26万278人
  • 9万円以上~10万円未満:26万99人
  • 10万円以上~11万円未満:29万8838人
  • 11万円以上~12万円未満:37万6357人
  • 12万円以上~13万円未満:45万6689人
  • 13万円以上~14万円未満:54万9337人
  • 14万円以上~15万円未満:65万7775人
  • 15万円以上~16万円未満:76万4713人
  • 16万円以上~17万円未満:85万3718人
  • 17万円以上~18万円未満:92万6462人
  • 18万円以上~19万円未満:95万5327人
  • 19万円以上~20万円未満:91万3998人
  • 20万円以上~21万円未満:82万204人
  • 21万円以上~22万円未満:68万2702人
  • 22万円以上~23万円未満:50万9842人
  • 23万円以上~24万円未満:34万1191人
  • 24万円以上~25万円未満:22万4720人
  • 25万円以上~26万円未満:14万7563人
  • 26万円以上~27万円未満:9万2856人
  • 27万円以上~28万円未満:5万4156人
  • 28万円以上~29万円未満:2万9810人
  • 29万円以上~30万円未満:1万4935人
  • 30万円以上~:1万8801人

【女性】平均年金月額11万1413円の分布は、下側にどれだけ人が集まっているのか

  • ~1万円:1万2953人
  • 1万円以上~2万円未満:3880人
  • 2万円以上~3万円未満:2万9993人
  • 3万円以上~4万円未満:6万3025人
  • 4万円以上~5万円未満:6万1945人
  • 5万円以上~6万円未満:6万9313人
  • 6万円以上~7万円未満:18万892人
  • 7万円以上~8万円未満:34万8764人
  • 8万円以上~9万円未満:54万1901人
  • 9万円以上~10万円未満:75万1358人
  • 10万円以上~11万円未満:81万3990人
  • 11万円以上~12万円未満:69万5128人
  • 12万円以上~13万円未満:52万2466人
  • 13万円以上~14万円未満:37万4169人
  • 14万円以上~15万円未満:27万1489人
  • 15万円以上~16万円未満:20万322人
  • 16万円以上~17万円未満:14万7604人
  • 17万円以上~18万円未満:10万5489人
  • 18万円以上~19万円未満:7万1561人
  • 19万円以上~20万円未満:4万8617人
  • 20万円以上~21万円未満:3万3387人
  • 21万円以上~22万円未満:2万1931人
  • 22万円以上~23万円未満:1万4116人
  • 23万円以上~24万円未満:8813人
  • 24万円以上~25万円未満:5491人
  • 25万円以上~26万円未満:3233人
  • 26万円以上~27万円未満:1811人
  • 27万円以上~28万円未満:927人
  • 28万円以上~29万円未満:479人
  • 29万円以上~30万円未満:223人
  • 30万円以上~:482人

月額15万円以上を受け取っている人の割合は、男性で68.8%、女性で12.3%です。

男性は14万円以上15万円未満より上の階級に人数の山があり、女性は9万円以上12万円未満のあたりに山があります。同じ「分布の下側」といっても、男女で指している金額の帯が違うわけです。

公的年金は老後の暮らしの土台ですが、それだけで足りるかどうかは人によって違います。「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で自分の見込みを確かめたうえで、早いうちに資金の計画を立てておきたいところです。

長井 祐人
ご相談の場では、雑誌や記事で見た平均をそのまま自分の受け取り額として置いて、足りない額を計算していた方に何度もお会いしています。分布のどのあたりに自分がいるのかを先に決めてから引き算をすると、出てくる数字はかなり変わります。

2026年度の改定後の金額や、働き方によって加入が変わる条件まで押さえておきたい場合は、来月、6月15日支給分から年金が増える!厚生年金+基礎年金「月15万円(年180万円)」を超える人はどれくらい?2026年度最新金額と106万円の壁見直しを解説が参考になります。

3. 【独自試算】分布の下位25%の人が月15万円の暮らしを続けると、20年でどれだけ足りなくなるのか

ここからは編集部による独自の試算です。平均から引き算した不足額と、分布の下側から引き算した不足額が、20年分に積み上げるとどこまで離れるのかを確かめます。前提は次のとおりです。

  • 使う数字:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」の年金月額階級ごとの受給権者数と、平均年金月額
  • 暮らしにかかる額:この記事で基準にしている月15万円(年180万円)と置く
  • 下位25%の月額の求め方:階級ごとの人数を下から足していき、全体の25%に届く階級のなかを人数で比例配分して1000円の位まで求める
  • 積み上げる期間:20年(65歳から85歳までを想定)
  • 不足額は毎月同じ額で続くものとして単純に足し上げ、運用による増減は考えない
  • 年金額の改定、物価の変動、税や社会保険料の天引き、公的な給付や支援は考えない

まず平均から引き算します。男女全体の平均年金月額15万289円は、月15万円を289円上回っています。年額では3468円、20年分では6万9360円の余りで、平均を自分の額として置くかぎり不足は出てこない計算です。

次に分布の下側から引き算します。男女全体の受給権者を下から順に足していくと、全体の25%に届くのは10万円以上11万円未満の階級のなかで、比例配分すると月額は約10万8700円でした。月15万円との差は4万1300円、年額では49万5600円、20年分では991万2000円になります。平均で計算したときの6万9360円の余りと比べると、その差は998万1360円です。同じ資料の同じ月15万円という基準を使っても、数えはじめる位置が変わるだけで1000万円近い開きが出ます。

男女別でも同じ手順で求めました。男性の下位25%は約13万9900円で、月15万円との差は1万100円、年額12万1200円、20年分では242万4000円です。女性の下位25%は約9万500円で、差は月5万9500円、年額71万4000円、20年分では1428万円になります。男性の242万4000円と女性の1428万円では、5倍以上の開きがあります。

あくまで目安であり、この金額を保証するものではありません。下位25%の月額は階級の幅のなかを人数で比例配分して求めた推計で、実際の分布の形によって前後します。暮らしにかかる額を月15万円と置いたのはこの記事の基準に合わせたためで、住居費や医療費の状況によって必要な額は一人ずつ違います。不足を上乗せで埋めようとする場合、値動きのある商品を使えば価格変動リスクがあり、元本割れとなる場合もあります。自分の見込み額や受けられる給付については、年金事務所などの窓口や専門家に確認しながら進めてください。

4. 【監修者コメント・熊谷良子】平均から出した不足額と、分布の下側から出した不足額は別の数字

熊谷 良子

平均から出した不足額と、分布の下側から出した不足額は、性質が異なる数字です。前者は令和6年度の集計として確定している平均年金月額を使った引き算で、金額そのものは動きません。後者は階級の幅のなかを人数で比例配分して求めた推計値で、階級の刻み方が変われば結果も動きます。どちらか一方が正しいという整理にはなりませんが、同じ確からしさで並べないほうが、判断を誤りにくいように思います。

記事に出てくる平均額について、2点を補います。1つは、この金額に国民年金の金額を含んでいることです。厚生年金の上乗せ分だけの金額ではありません。もう1つは、全年齢の受給権者を対象にした平均であって、65歳以上に限った数字ではないことです。また、暮らしにかかる額を月15万円と置いていますが、これは記事の基準に合わせた仮の水準で、実際の生活費を調べた統計の数字ではありません。

不足額を見るときは、まず住居費から確かめていただくのがよいように思います。持ち家か賃貸かで、月々の必要額は大きく変わります。次に保健医療、そのあとに交際費という順で見ていくと、どこを削れてどこは動かせないのかが分かれてきます。相談の場では、この順で並べたところで必要な上乗せの大きさが変わる、という整理に行き着くことが少なくありません。年金の制度や給付の要件は改正される可能性もありますので、実際の手続きは所管の窓口に確認したうえで進めていただくのが確かです。