4. 先の順位の人が受給権を取得すると、あとの順位の人は「遺族としない」

優先順位という言葉からは、上位の方が受け取らなくなったら次の方に回ってくるように思えます。遺族厚生年金の条文はそうなっていません。

4.1 厚生年金保険法第59条第2項が定める書き方

条文は次のように定めています。

「前項の規定にかかわらず、父母は、配偶者又は子が、孫は、配偶者、子又は父母が、祖父母は、配偶者、子、父母又は孫が遺族厚生年金の受給権を取得したときは、それぞれ遺族厚生年金を受けることができる遺族としない」

つまり、先の順位の方が受給権を取得した時点で、あとの順位の方は「遺族」から外れる書き方になっています。

先の順位の遺族が受給権を取得すると、あとの順位の遺族は対象から外れる2/2

先の順位の遺族が受給権を取得すると、あとの順位の遺族は対象から外れる

出所:e-Gov法令検索「厚生年金保険法」第59条第2項を参考にLIMO編集部作成

4.2 受給権を得た人が失権しても、あとの順位には移らない

条文の「遺族としない」という扱いは、先の順位の方が受給権を取得した時点で決まります。

遺族厚生年金の受給権は、受給権者が死亡したとき、婚姻したとき(内縁関係を含む)、直系血族または直系姻族以外の方の養子となったときなどに失権します。

こうした事情で先の順位の方の受給権がなくなった場合でも、あとの順位の方に権利が移る仕組みにはなっていません。

5. 同じ順位の人が2人以上いるときは人数で分ける

順位が同じ遺族が複数いる場合の扱いも、条文に書かれています。

5.1 配偶者以外の遺族が2人以上いるときの計算

厚生年金保険法第60条第2項は「配偶者以外の者に遺族厚生年金を支給する場合において、受給権者が二人以上であるときは、それぞれの遺族厚生年金の額は、(中略)受給権者ごとに同号の規定により算定した額を受給権者の数で除して得た額とする」と定めています。

子が3人で受け取る場合は、算定した額を3で割った額がそれぞれの年金額になります。世帯として受け取る合計が増えるわけではありません。

6. 自分の家族構成でだれが対象になるかを確かめておく

遺族厚生年金は、順位と年齢の要件が組み合わさって結論が出ます。

6.1 子どもの年齢と、父母・祖父母の生年月日を書き出してみる

子と孫は18歳になった年度の3月31日まで、父母と祖父母は死亡当時55歳以上という要件があります。家族の年齢を並べてみると、いまの時点でだれが対象になりうるのかが見えてきます。

生計を維持されていたかどうかの判断もあわせて確かめられるので、実際の見込みは年金事務所または街角の年金相談センターで相談しておくと安心です。

7. まとめ

遺族厚生年金を受け取れる遺族は配偶者・子・父母・孫・祖父母で、受け取れるのはそのうち最も優先順位の高い方だけです。

厚生年金保険法第59条第2項は、先の順位の方が受給権を取得したときは、あとの順位の方を「遺族としない」と定めています。上位の方の受給権がなくなっても、下位の方に移る仕組みではありません。

2026年4月分からの額は報酬比例部分の4分の3が基本で、被保険者期間が300月に足りない場合は300月とみなして計算されます。順位と要件をあらかじめ確かめておくことが、備え方を考える出発点になります。

参考資料

村岸 理美