2. 財産目録に書く預貯金は、どのあたりに集まっているのか

通帳のコピーを財産目録として使えるということは、遺言書に書く財産の中心が預貯金になりやすいという意味でもあります。その預貯金の分布を確認します。

分布の読み方は、LIMOの記事「貯金100万円から800万円で足踏みする「なんとなく貯金」の壁。各種調査の数字で見極め、抜け出す方法と新NISA試算を紹介」から要点を借りて確認します。

総務省統計局「家計調査報告〔貯蓄・負債編〕」2025年(令和7年)平均(2026年5月19日公表)によると、二人以上の世帯における貯蓄現在高の平均値は2059万円でした。ただし、この平均値は一部の高額資産保有世帯に引き上げられやすい数字です。

階級ごとの世帯割合は、100万円未満が10.1パーセント(貯蓄がない世帯を含む)、100万円以上800万円未満が29.0パーセント、800万円以上1000万円未満が5.6パーセントとなっています。

出所:LIMO「貯金100万円から800万円で足踏みする「なんとなく貯金」の壁。各種調査の数字で見極め、抜け出す方法と新NISA試算を紹介」

この29.0パーセントという数字には前提があります。

この29.0パーセントは、公表されているグラフの数値表示(100万円台が5.4パーセント、200万円台が4.8パーセント、300万円台が3.8パーセント、400万円台が4.1パーセント、500万円台が4.2パーセント、600万円台が3.4パーセント、700万円台が3.3パーセント)を、編集部が単純に足し合わせたものです。

この総務省の統計には、実は「100万円以上800万円未満」という一つの区分は存在しません。標準級間隔100万円ごとの数字を、編集部が7つ足し合わせたものです。

出所:LIMO「貯金100万円から800万円で足踏みする「なんとなく貯金」の壁。各種調査の数字で見極め、抜け出す方法と新NISA試算を紹介」

800万円以上1000万円未満の5.6パーセントも同じつくりです。800万円台の3.1パーセントと900万円台の2.5パーセントを足したもので、総務省にこの区分そのものはありません。

100万円以上800万円未満に29.0%が集まる一方、1000万円以上が過半を占める2/2

二人以上世帯の貯蓄現在高階級別の世帯の割合を100万円未満から1000万円以上まで4区分で示した表

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果-(二人以上の世帯)」をもとにLIMO編集部作成

ひとりで暮らしている場合は、見る統計が変わります。

総務省「家計調査報告〔貯蓄・負債編〕」は、二人以上の世帯のみを対象とした統計です。単身世帯の貯蓄現在高(ストックとしての保有額)は、同じ形式では公表されていません。

そのため、単身の方が自分の貯蓄額を確認する際は、J-FLECの調査を参照するのが実務上の代替手段になります。

出所:LIMO「貯金100万円から800万円で足踏みする「なんとなく貯金」の壁。各種調査の数字で見極め、抜け出す方法と新NISA試算を紹介」

その調査の数字も出ています。

J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」(2025年12月18日公表)によると、金融資産保有額は二人以上世帯で平均値1940万円・中央値720万円、単身世帯で平均値919万円・中央値130万円でした。

注意すべきなのは、この調査における「金融資産」の定義です。J-FLECの調査では、預貯金のうち「日常的な出し入れ・引落しに備えている部分」は集計対象に含まれません。運用や将来のために蓄えている部分だけが計上される仕組みです。

出所:LIMO「貯金100万円から800万円で足踏みする「なんとなく貯金」の壁。各種調査の数字で見極め、抜け出す方法と新NISA試算を紹介」

2つの統計を並べるときの注意点もあります。

総務省の家計調査の「貯蓄現在高」とは対象範囲の前提が異なるため、2つの統計の数字をそのまま並べて比較することはできません。「自分は総務省の統計と、どちらの定義に近い数字を見ているのか」を意識しておくと、数字の読み違いを避けられます。

あわせて、貯蓄の目的(住宅資金・教育資金・老後資金など)ごとに口座を分けておくと、「今いくら、何のために貯まっているか」が可視化され、途中で目的を見失いにくくなります。

出所:LIMO「貯金100万円から800万円で足踏みする「なんとなく貯金」の壁。各種調査の数字で見極め、抜け出す方法と新NISA試算を紹介」

3. 3900円の前に、書き方で止まらないこと

ここまで、自筆証書遺言書保管制度の手数料と様式のルール、そして財産目録のもとになる預貯金の分布を見てきました。

保管の申請の手数料は1件(遺言書1通)につき3900円で、納付は収入印紙です。遺言書情報証明書の交付は1通1400円、遺言書保管事実証明書は1通800円、モニターによる閲覧は1回1400円、原本の閲覧は1回1700円です。保管の申請の撤回と変更の届出には手数料がかかりません。

費用より先に確かめておきたいのが様式です。用紙はA4サイズで片面のみ、余白は上5ミリメートル・下10ミリメートル・左20ミリメートル・右5ミリメートルを確保し、余白に1文字でもはみ出していると書き直しになります。ホチキスで綴じず、封筒も不要です。申請できるのは遺言者本人だけで、予約も必須です。

2026年3月2日の省令改正では、DV被害者の住所等の非表示措置が新設され、遺言書が1枚の場合はページ番号の記載も不要になりました。

財産目録は自書でなくてもよく、通帳のコピーを添付する方法でも作成できます。目的ごとに口座を分けていれば、この目録は書きやすくなります。

ただし貯蓄現在高の階級別分布を見ると、100万円以上800万円未満の世帯が29.0パーセントを占め、単身世帯の貯蓄現在高はそもそも家計調査では公表されていません。自分がどの統計のどの定義を見ているのかを確かめたうえで、遺言書の内容そのものは弁護士等の法律の専門家に、手続きの進め方は最寄りの遺言書保管所にご相談ください。

参考資料

LIMO編集部貯蓄解説班