日本で働いた外国人が帰国するとき、納めた保険料の一部が戻る制度があります。
日本年金機構によると、脱退一時金は日本国籍を有しない方が被保険者資格を喪失して日本を出国した場合に、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に請求できるものです。ただし受け取ると、それ以前のすべての期間が年金加入期間ではなくなります。
この記事では請求の要件と計算のしかた、受け取る前に確認したい点を見たうえで、期間が足りないときのもうひとつの出口を確認します。
1. 【脱退一時金】日本を出た外国人が請求できる一時金
脱退一時金は国民年金と厚生年金保険にそれぞれ用意されており、要件と計算式が別に定められています。まず共通する部分を確かめます。
1.1 対象は6か月以上の加入で受給資格期間10年に届かない人
要件は複数あり、そのすべてを満たす必要があります。
厚生年金保険の脱退一時金では、日本国籍を有していないこと、公的年金制度の被保険者でないこと、厚生年金保険(共済組合等を含む)の加入期間の合計が6月以上あること、老齢年金の受給資格期間(10年間)を満たしていないこと、障害厚生年金(障害手当金を含む)などの年金を受ける権利を有したことがないこと、日本国内に住所を有していないことが挙げられています。
日本年金機構は、2017年(平成29年)8月から老齢年金の受給資格期間が10年に短縮されたため、受給資格期間が10年以上ある場合は将来日本の老齢年金として受け取ることができ、脱退一時金を受け取ることはできないとしています。
1.2 請求できるのは日本に住所を有しなくなった日から2年以内
期限は短めです。
最後に公的年金制度の被保険者資格を喪失した日から2年以上経過していないことが要件です。資格喪失日に日本国内に住所を有していた場合は、同日後に初めて日本国内に住所を有しなくなった日から2年以内となります。
請求書は外国語と日本語が併記された様式で、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、インドネシア語、フィリピノ(タガログ)語、タイ語、ベトナム語、ミャンマー語、カンボジア語、ロシア語、ネパール語、モンゴル語の14言語に対応しています。
1.3 厚生年金は平均標準報酬額に支給率を掛けて計算
金額の決まり方を見ていきます。
厚生年金保険の脱退一時金は、被保険者であった期間の平均標準報酬額に支給率を掛けて算出します。平均標準報酬額は、2003年(平成15年)4月より前の期間の標準報酬月額に1.3を乗じた額と、同年4月以後の期間の標準報酬月額および標準賞与額を合算した額を足し、全体の被保険者期間の月数で割った額です。
支給率は、最終月(資格喪失した日の属する月の前月)の属する年の前年10月の保険料率に2分の1を乗じた率へ、被保険者期間の区分に応じた数を掛けたものです。最終月が1月から8月であれば前々年10月の保険料率を使います。
1.4 支給率の上限は5.5、2021年4月から60月に延びた
区分ごとの数字も示されています。
最終月が2021年(令和3年)4月以降の場合、支給率は6月以上12月未満で0.5、12月以上18月未満で1.1、18月以上24月未満で1.6、24月以上30月未満で2.2、30月以上36月未満で2.7、36月以上42月未満で3.3、42月以上48月未満で3.8、48月以上54月未満で4.4、54月以上60月未満で4.9、60月以上で5.5です。
2021年(令和3年)4月より、計算に用いる月数の上限が36月(3年)から60月(5年)へ引き上げられました。特定技能1号の創設により期限付きの在留期間の最長期間が5年となったことなどを踏まえた見直しです。最終月が2021年3月以前の場合は、36月を上限として計算されます。
1.5 国民年金は保険料額の半分に月数を掛ける
国民年金側は定額です。
計算式は、最後に保険料を納付した月が属する年度の保険料額に2分の1を乗じ、保険料納付済期間等の月数の区分に応じた数を掛けたものです。最後に保険料を納付した月が2026年(令和8年)4月から2027年(令和9年)3月の場合、6月以上12月未満で5万3760円、12月以上18月未満で10万7520円と積み上がり、60月以上で53万7600円です。
国民年金に加入していても保険料が未納となっている期間は、この6月以上という要件に該当しません。また国民年金の脱退一時金は、国民年金第1号被保険者としての加入期間についてのみ支払われます。
1.6 受け取ると以前のすべての期間が年金加入期間から消える
ここがもっとも重い点です。
日本年金機構は、脱退一時金を受けとると、脱退一時金を請求する以前のすべての期間が年金加入期間ではなくなってしまうため、将来日本の老齢年金を受け取る可能性などを考えた上で慎重に検討するようにと呼びかけています。
上限月数を超えて加入していた方が請求した場合、支給金額は上限月数で計算されますが、それ以前のすべての期間が年金加入期間ではなくなります。そのため日本に複数回の在留を繰り返し、加入期間が通算で上限月数以上になる予定の方が加入期間に応じた受給を希望する場合は、出国の都度請求することが必要になる場合があるとされています。
1.7 国民年金と厚生年金の期間は合算されない
要件の数え方にも注意点があります。
国民年金と厚生年金保険の両制度の期間の合算は行われず、支給額はそれぞれの保険期間に基づいて計算されます。日本年金機構が挙げている例では、国民年金保険料の納付済期間が4月、厚生年金保険の被保険者期間が4月のみの場合、合計すると8月になりますが、合算は行われないため脱退一時金を請求することはできません。
受け取る口座にも制約があります。ゆうちょ銀行および一部インターネット専業銀行では脱退一時金を受け取ることができません。日本国内の金融機関で受け取る場合は、口座名義がカタカナで登録されていることが必要です。
1.8 転出届を出した後でないと請求できない
手続の順番も決まっています。
日本年金機構等が請求書を受理した日に住所がまだ日本にある場合は請求できません。住んでいる市区町村に転出届を提出した後で請求する必要があります。出国前に日本国内から提出する場合は、請求書が住民票の転出(予定)日以降に到達するように送付します。
転出届を提出せずに再入国許可またはみなし再入国許可を受けて出国した場合は、その有効期間が経過するまでの間は国民年金の被保険者とされるため、請求できません。なお年金通算の協定を結んでいる相手国の加入期間がある方は、一定の要件のもとで期間を通算し、日本と協定相手国の年金を受け取れる場合があります。判断に迷う場合は年金事務所にご相談ください。
なお、期間が足りないときに足す側の仕組みに関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

