海外に資産を持っていると、確定申告とは別に税務署へ出す書類があります。
国税庁によると、令和6年分の国外財産調書の総提出件数は1万4544件、総財産額は8兆1945億円でした。前年から件数は9.8%、財産額は26.3%増えています。
この記事では提出義務の基準と、公表された財産の中身を確認したうえで、資産1億円台という規模が統計上どこに位置しているのかを見ていきます。
1. 【国外財産調書】5000万円を超える国外財産があると提出義務
国外財産調書は、一定額以上の国外財産を持つ人が毎年提出する書類です。まず、誰が対象になるのかを確かめます。
1.1 対象は5000万円を超える国外財産を持つ居住者
国税庁は提出義務者について、居住者(非永住者を除く)で、その年12月31日においてその価額の合計額が5000万円を超える国外財産を有する方と示しています。
基準は年末時点の合計額です。国外にある不動産や有価証券、預金などを合わせて5000万円を超えるかどうかで決まります。
1.2 提出期限は翌年6月30日
出す先と時期も決まっています。
翌年6月30日までに、所得税の納税地を所轄する税務署長へ提出します。国外財産調書合計表の添付が必要です。記載するのは国外財産の種類、数量および価額その他必要な事項です。
確定申告の期限とは別に、6月末という独立した期限が設けられているということです。
1.3 総提出件数は1万4544件で、前年から9.8%増
では、実際にどれだけ出されているのか。
令和6年分の総提出件数は1万4544件でした。前年から1301件、9.8%の増加です。これは令和6年12月31日時点の財産価額を記載して提出されたもので、提出期限の令和7年6月30日までに提出された分を集計しています。
前年の令和5年分は1万3243件でしたので、1年で1300件あまり増えたことになります。
1.4 総財産額は8兆1945億円で26.3%増
金額の伸びは、件数の伸びを大きく上回っています。
総財産額は8兆1945億円で、前年から1兆7048億円、26.3%の増加でした。件数の伸びが9.8%ですから、金額のほうが2.7倍の速さで増えている計算になります。
前年の令和5年分の総財産額は6兆4897億円です。1年で1兆7000億円あまり積み上がったことになります。
1.5 1件あたりは約5億6300万円
1件あたりに直すと、規模が見えてきます。
総財産額8兆1945億円を総提出件数1万4544件で割ると、1件あたり約5億6300万円です(編集部算出)。前年は6兆4897億円を1万3243件で割って約4億9000万円でしたので、1年で7000万円あまり増えたことになります。
提出義務の基準は5000万円超ですが、実際に出している人の平均はその11倍あまりという水準です。
1.6 東京局が件数の63.7%、財産額の80.6%
地域の偏りも、はっきり出ています。
件数は東京局9262件(63.7%)、大阪局2094件(14.4%)、名古屋局933件(6.4%)、その他2255件(15.5%)です。財産額は東京局6兆6047億円(80.6%)、大阪局7200億円(8.8%)、名古屋局3005億円(3.7%)、その他5694億円(6.9%)でした。
件数では東京局が6割強ですが、金額では8割に達します。東京局に集まっているのは件数以上に金額のほうだということです。
1.7 中身は有価証券が66.9%
何を持っているのかも公表されています。
財産の種類別では、有価証券5兆4817億円(66.9%)、預貯金8817億円(10.8%)、建物5397億円(6.6%)、貸付金2618億円(3.2%)、土地1686億円(2.1%)、上記以外の財産8611億円(10.5%)です。
3分の2が有価証券で、不動産である建物と土地を合わせても8.7%にとどまります。国外財産といって海外の不動産を思い浮かべるかもしれませんが、実際の中身は証券が中心です。
なお国税庁は、四捨五入の関係により総財産額と局別の合計額および財産の種類別の合計額は一致せず、財産の種類別の構成比の合計も100%にならないと注記しています。
1.8 提出しないと加算税が5%加重される
出さなかった場合の扱いもあります。
国税庁は、提出期限内に調書を提出しなかった場合や記載すべき財産を記載しなかった場合に国外財産に係る申告漏れが生じたときは、過少申告加算税等が5%加重されると示しています。書類の提示請求に応じない場合は、加重割合が5%から10%に引き上げられます。
さらに、偽りの記載で提出した場合や正当な理由なく期限までに提出しなかった場合は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処されることがあるとされています。海外に資産をお持ちで判断に迷う場合は、所轄の税務署や税理士にご確認ください。
なお、資産規模ごとの立ち位置やインフレによる目減りに関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

