2. 報酬とは別の理由で付く上乗せ
標準報酬月額は年金額の基礎になりますが、厚生年金には家族構成によって加算される仕組みもあります。加給年金です。
加給年金の中身は、LIMOの記事「厚生年金と国民年金、受給額の差はどれくらいあるのか?平均は約2倍、配偶者がいると最大年42万円の加給年金が上乗せされ、65歳で打ち切られる?」から要点を借りて確認します。
日本年金機構の資料によると、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人が、生計を維持している配偶者や子を持つ場合、老齢厚生年金に「加給年金額」が加算されます。
この制度は厚生年金保険法に基づく仕組みであり、国民年金だけに加入している人には、これに相当する上乗せ制度はありません。同じ「配偶者がいる世帯」でも、厚生年金加入者かどうかで、受け取れる年金の中身が変わってきます。
出所:厚生年金と国民年金、受給額の差はどれくらいあるのか?平均は約2倍、配偶者がいると最大年42万円の加給年金が上乗せされ、65歳で打ち切られる?
なお日本年金機構によると、この20年という期間には、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15年から19年ある場合を含みます。加算を受けるには届出が必要です。
金額は2つの部分に分かれます。
令和8年4月からの金額は、配偶者について基本額24万3800円に、受給者の生年月日に応じた特別加算(3万6000円〜17万9900円)が上乗せされます。特別加算が上限まで付く場合、配偶者分だけで合計は年42万3700円です。
特別加算の金額は、年金を受け取る本人の生年月日によって段階的に決まります。生年月日が若いほど特別加算が高くなる設計のため、同じ配偶者ありという条件でも、本人の年代によって加給年金の総額は変わってきます。
出所:厚生年金と国民年金、受給額の差はどれくらいあるのか?平均は約2倍、配偶者がいると最大年42万円の加給年金が上乗せされ、65歳で打ち切られる?
厚生年金の平均に加給年金の上限を単純に上乗せすると月18万5597円になる2/2
出所:日本年金機構「加給年金額と振替加算」、日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」、厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
子がいる場合の加算もあります。
子についても、18歳到達年度の末日までの子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子であれば加算対象となります。金額は1人目・2人目の子であれば配偶者と同じ基本額が加算されますが、3人目以降は減額されます。
また、配偶者加算のような特別加算は子には上乗せされません。配偶者と子の両方が対象になる場合は、それぞれの加算額が合算されます。
出所:厚生年金と国民年金、受給額の差はどれくらいあるのか?平均は約2倍、配偶者がいると最大年42万円の加給年金が上乗せされ、65歳で打ち切られる?
3人目以降の子の額は、令和8年4月から各8万1300円です。
月額に直すと重みが見えます。
加給年金の配偶者分(上限額)年42万3700円を12か月で割ると、月額に直しておよそ3万5308円です。これを厚生年金の平均受給月額15万289円に単純に上乗せすると、月額はおよそ18万5597円になります。
もちろん、この試算は加給年金が上限額まで付く場合の一例にすぎません。特別加算の金額は本人の生年月日によって変わるため、実際の上乗せ額は人によって幅があります。
出所:厚生年金と国民年金、受給額の差はどれくらいあるのか?平均は約2倍、配偶者がいると最大年42万円の加給年金が上乗せされ、65歳で打ち切られる?
ただし終わりがあります。
日本年金機構の資料によると、加給年金額の対象になっている配偶者が65歳になると、それまで支給されていた加給年金額は打ち切られます。配偶者自身が65歳になれば、配偶者本人の老齢基礎年金の受給が始まるため、役割が切り替わるという考え方です。
この切り替わりに際して届出が必要になる場合はありますが、家計にとっては、それまで加給年金分として見込んでいた収入が、ある時点で無くなることを意味します。
出所:厚生年金と国民年金、受給額の差はどれくらいあるのか?平均は約2倍、配偶者がいると最大年42万円の加給年金が上乗せされ、65歳で打ち切られる?
配偶者が65歳になる前に止まることもあります。
日本年金機構によると、配偶者が厚生年金保険の被保険者期間20年以上の老齢厚生年金や退職共済年金(組合員期間20年以上)を受け取る権利があるとき、または障害年金を受けられる間は、配偶者加給年金額は支給停止されます。
令和4年4月以降は、実際に受け取っていなくても受け取る権利がある場合が対象です。ただし令和4年3月時点で加給年金が支給されていた方などには経過措置が設けられています。
打ち切り後の補填にも世代差があります。
加給年金が打ち切られる代わりに、条件を満たせば配偶者自身の老齢基礎年金に「振替加算」が上乗せされる仕組みがあります。しかし振替加算の金額は配偶者の生年月日が若いほど少なくなり、昭和41年4月2日以後生まれの配偶者はゼロになります。
つまり、現役世代に近い年齢の配偶者を持つ場合、加給年金が打ち切られた後の補填は基本的に期待できません。
出所:厚生年金と国民年金、受給額の差はどれくらいあるのか?平均は約2倍、配偶者がいると最大年42万円の加給年金が上乗せされ、65歳で打ち切られる?
振替加算は、年金を請求する際の裁定請求書に配偶者の情報を記入することで行われます。後から該当することになった場合は「老齢基礎年金額加算開始事由該当届」の提出が必要です。
3. 3か月で決まる部分と、家族構成で決まる部分
ここまで、9月から適用される標準報酬月額の決まり方と、報酬とは別の理由で付く加給年金を見てきました。
定時決定は、事業主が届け出た4月・5月・6月の報酬をもとに厚生労働大臣が標準報酬月額を決定し直す仕組みで、決まった額は9月から翌年8月までの各月に適用されます。算定に使うのは支払基礎日数が17日以上の月で、特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上です。
短時間就労者は17日以上の月が1か月もなければ15日以上17日未満の月の平均で算定され、3か月とも15日未満なら従前の額のままです。4月から6月に繁忙期が重なる人は、前年7月から当年6月までの平均で算定する年間平均という道もあります。
標準報酬月額は毎月の保険料だけでなく、将来の老齢厚生年金の計算にも使われます。なお短時間労働者の賃金要件は2026年10月に撤廃される予定で、加入対象は今後広がっていきます。
一方、厚生年金には報酬の多さとは無関係に付く上乗せもあります。被保険者期間が20年以上あり生計を維持している配偶者がいる場合、令和8年4月からの加給年金は基本額24万3800円に特別加算(3万6000円〜17万9900円)が付き、上限まで付くと配偶者分だけで年42万3700円です。
ただし配偶者が20年以上の老齢厚生年金を受け取る権利を持つ間は支給停止となり、配偶者が65歳になれば打ち切られます。昭和41年4月2日以後生まれの配偶者には振替加算による補填もありません。
ご自身の標準報酬月額と加給年金の対象可否は、年金事務所にご確認ください。
参考資料
- 日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」
- 日本年金機構「保険者決定」
- 日本年金機構「8月、9月の随時改定予定者にかかる算定基礎届の提出について」
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生年金と国民年金、受給額の差はどれくらいあるのか?平均は約2倍、配偶者がいると最大年42万円の加給年金が上乗せされ、65歳で打ち切られる? 老齢基礎年金の満額は月7万608円、厚生年金の平均は15万289円。国民年金にはない家族構成連動の上乗せ制度も解説
- ねんきん定期便の見込額はどこまで正確?50歳未満と50歳以上で異なる算出方法を解説 実際の受給額とずれが生じやすいポイントを公的資料で確認
LIMO編集部社会保障解説班