3. 65歳で働き続けるか、もう辞めるのか決め難いワケ
65歳の時点で仕事を続けるかどうかは、多くの世帯にとって決めにくい選択です。その理由を、貯蓄と別の数字から確かめておきましょう。
3.1 65歳の平均余命は男19.68年、女24.52年に延びた
厚生労働省が2026年7月に公表した「令和7年簡易生命表の概況」によると、65歳の平均余命は男19.68年、女24.52年でした。65歳まで生きた人の平均は84.68歳・89.52歳という計算になります。
同じ表の寿命中位数は男84.13年、女90.17年です。65歳で退職すると、そこから20年から25年を年金と貯蓄でまかなうことになります。
前ページで見た無職世帯の貯蓄2494万円を、この年数で割ると年100万円台になります。医療費や介護費が加わる時期でもあるため、期間の長さが判断を難しくしています。
3.2 65歳以上の無職世帯は年齢が上がるほど収入が減る
家計調査報告(家計収支編)2025年平均によると、二人以上の世帯のうち世帯主が65歳以上の無職世帯の実収入は、年齢階級によって次のように違います。
- 65〜69歳:29万110円
- 70〜74歳:28万7725円
- 75歳以上:25万2798円
可処分所得も65〜69歳が24万5710円、70〜74歳が24万8599円、75歳以上が22万1235円と、75歳以上で下がります。
一方で消費支出は65〜69歳の29万6997円が最も多く、年齢階級が上がるにつれて少なくなっていました。収入も支出も動くため、どの時点で働き方を変えるかで家計の姿が変わります。
4. 老後資金の中でも「貯蓄」が特に重要
年金の額は加入していた制度と期間で決まり、受け取り始めてからは大きく動きません。それに対して貯蓄は、いつ何に使うかを自分で決められる部分です。
ここでは65歳を迎える前に確認しておきたい点を3つ挙げます。
4.1 平均額ではなく中央値と分布で自分の位置を見る
65歳以上の世帯の平均は2564万円ですが、中央値は1777万円です。さらに300万円未満の世帯も14.9%あります。
平均額を目標に置くと、実態から離れた計画になりやすくなります。中央値と分布の両方を見て、自分の位置を確かめるほうが役に立ちます。
4.2 預貯金と有価証券では使えるまでの早さが違う
2025年は預貯金が減って有価証券と保険が増えました。ただし有価証券は元本が保証される資産ではなく、必要なときの評価額が読めません。
医療費や住宅の修繕のようにいつ発生するか分からない支出に備える分は、すぐ動かせる預貯金で持っておく形が現実的でしょう。使う時期が決まっているお金と、当面使わないお金を分けて考える必要があります。
4.3 年金の見込額を先に確かめてから取り崩す額を決める
貯蓄をいくらのペースで取り崩せるかは、年金でどこまでまかなえるかによって変わります。自分の受給予定額はねんきん定期便やねんきんネットで確認できます。
すでに受給している場合は、毎年6月に届く年金振込通知書で振込額そのものが分かります。額面ではなく振込額を前提に置くと、見通しがずれにくくなります。
働き方を変える時期や取り崩しの計画は、世帯の状況によって答えが変わります。判断に迷う場合は、年金事務所や金融機関の窓口で確認しておくと安心です。
5. まとめにかえて
二人以上の世帯のうち世帯主が65歳以上の世帯では、貯蓄現在高が2500万円以上の世帯が36.3%で約3分の1を占めていました。一方で300万円未満の世帯も14.9%あります。
65歳以上の無職世帯の平均貯蓄は2494万円で、前年から66万円・2.6%の減少となり6年ぶりに減りました。減ったのは定期性預貯金と通貨性預貯金で、有価証券と生命保険などは増えています。
65歳の平均余命は男19.68年、女24.52年に延びました。まずは自分の年金の見込額と貯蓄の残高を並べて確かめるところから始めたいところです。
参考資料
太田 彩子