10月は、年金生活者支援給付金の所得の基準額が新しい水準に切り替わる月です。判定に使われる数字が変わるため、去年は対象外だった人が対象に入ることもあります。
60歳を過ぎてから受け取れる公的なお金は、年金本体のほかにもいくつも用意されています。ただ、その多くは、条件に当てはまっているだけでは口座に入りません。自分から申し出て、書類を出したところでようやく動きはじめます。
保険代理店で約2000世帯のご相談に携わってきた立場から見ていて気になるのは、手続きの手前で止まってしまう理由が、たいてい「対象外だと分かったから」ではないことです。対象なのかどうかが分からないままになっていて、そのまま確かめずに終わる。この記事では、9つの制度について、どこで対象の線が引かれているのかを一つずつ見ていきます。
なお、60歳・65歳以上が受け取れる公的な給付金に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 申請しないと動かないお金は、なぜ「自分は対象外」と思わせてしまうのか
老齢年金、障害年金、遺族年金といった公的な仕組みは、暮らしを支える柱です。ただ、受け取る資格が生じた時点で振り込みが始まる形にはなっていません。
支給を動かすのは、受け取る本人が出す「年金請求書」です。この書類が窓口に届いてから審査が進み、そこで支払いの手続きが立ち上がります。
どの制度がどの窓口に並んでいるのかを先に一覧で見ておきたい場合は、【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!「知っておきたい」お金の仕組みを徹底解説にまとめています。
同じ形は、国や自治体が設ける給付金や補助金にも当てはまります。どれも、受け取る側が申請を出すところを入口にしています。
提出が期限を過ぎたり、添付する書類が足りなかったりすると、受け取れる額が減ったり、そもそも支給に至らなかったりすることがあります。
ここで起きやすいのが、案内が届かないことを「自分は対象に入っていない返事」として受け取ってしまうことです。案内が届く制度と届かない制度が混ざっているため、届かないことは何の答えにもなっていません。だからこそ、制度ごとにどの数字で対象が切り分けられているのかを、先に押さえておく形が要ります。
2. 【老齢年金】上乗せの2つは、どこで対象の線が引かれているのか
老齢年金を受け取っている人が一定の要件に当てはまると、本体の年金に足して受け取れる仕組みが2つあります。線が引かれている場所は、それぞれ違います。
2.1 年金版の家族手当と呼ばれる「加給年金」は、どこまでが加算の範囲なのか
加給年金は、厚生年金に20年以上加入していた人が65歳になったときに、生計を維持している年下の配偶者や子がいる場合に、年金へ足される仕組みです。
役割としては、年金の側にある家族手当のようなものだと考えると分かりやすくなります。
加算の対象になるのは、「65歳未満の配偶者」または「18歳到達年度の末日までの間の子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子」がいる場合です。
加給年金の支給要件を確認
加算が始まるタイミングは、加入期間が20年に達した時期によって2つに分かれます。
- 厚生年金加入期間が20年(※)以上ある人は、65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)から
- 65歳到達後(もしくは定額部分支給開始年齢に到達した後)に被保険者期間が20年(※)以上となった人は、在職定時改定時、退職改定時(または70歳到達時)から
(※)または、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15年から19年
ここで一段、対象から外れる線が引かれています。配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上あるもの)や退職共済年金(組合員期間が20年以上あるもの)を受け取る権利を持っている場合、または障害厚生年金、障害基礎年金、障害共済年金などを受け取っている場合、配偶者加給年金額は支給停止となります。自分の加入期間だけを見ていると気づきにくい部分です。
2026年度の加給年金額は、配偶者と子でいくら違うのか
2026年度の年額は、配偶者が24万3800円、1人目・2人目の子が各24万3800円、3人目以降の子が各8万1300円です。
これに加えて、老齢厚生年金を受給中の人の生年月日により、配偶者の加給年金額に3万6000円から17万9900円の特別加算額が支払われます。幅が大きいのは生年月日の区分によるもので、自分で選べる部分ではありません。
配偶者が65歳を迎えたあとの「振替加算」はどこへ引き継がれるのか
配偶者が65歳になると加給年金は終わります。ただ、一定の要件を満たせば、そこから先は配偶者自身の老齢基礎年金に「振替加算」という形で一定額が引き継がれます。加算がなくなるのではなく、付く先が入れ替わるという理解になります。
2.2 所得の基準で決まる「老齢年金生活者支援給付金」は、どの数字で判定されるのか
老齢年金生活者支援給付金は、老齢基礎年金を受け取っている人のうち、所得や世帯の収入が一定の基準以下である場合に、暮らしの底上げのために支給されるものです。
年金本体とは別の法律に基づいて支給される「給付金」という位置づけです。判定に世帯全員の課税状況が入るため、自分の年金額だけを見ていても答えが出ません。
老齢年金生活者支援給付金の対象になる3つの条件を確認
次の3つを、すべて満たすことが求められます。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者であること
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が、昭和31年4月2日以後生まれの人は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの人は80万6700円以下であること
3つめの収入金額には、障害年金や遺族年金などの非課税収入は含まれません。また、昭和31年4月2日以後に生まれた人で80万9000円を超え90万9000円以下の人、昭和31年4月1日以前に生まれた人で80万6700円を超え90万6700円以下の人には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。基準をわずかに超えた場合に、そのまま切り捨てにはならない形が用意されています。
この所得の基準額は、令和8年10月分から変わります。どちらの数字で判定されるかは月分によって分かれますので、両方を並べて見ておいてください。
老齢年金生活者支援給付金の所得基準額
- 令和8年9月分まで:80万9000円以下(昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下)
- 令和8年10月分から:82万6500円以下(昭和31年4月1日以前に生まれた方は82万4100円以下)
補足的老齢年金生活者支援給付金の対象となる所得の範囲
- 令和8年9月分まで:80万9000円を超え90万9000円以下(昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円を超え90万6700円以下)
- 令和8年10月分から:82万6500円を超え92万6500円以下(昭和31年4月1日以前に生まれた方は82万4100円を超え92万4100円以下)
2026年度の給付基準額は月額いくらに改定されたのか
2026年度の給付基準額は月額5620円で、前年度より3.2%の増額となりました。この基準額をもとに、保険料の納付状況などに応じて実際の給付額が計算されます。
実際に届く給付額は、どの式で決まるのか
次の2つを足したものが、月々の給付額になります。
- 保険料納付済期間に基づく額(月額)は、5620円に、保険料納付済期間を被保険者月数480月で割った割合をかけた金額
- 保険料免除期間に基づく額(月額)は、1万1768円に、保険料免除期間を被保険者月数480月で割った割合をかけた金額
保険料免除期間にかける金額は、毎年度の老齢基礎年金の額の改定に応じて動きます。つまり、月額5620円という数字は基準額であって、そのまま届く額ではありません。自分の納付済期間と免除期間の月数が分かれば、おおよその見当は付けられます。
3. 【雇用保険】働き続ける人の3つの給付金は、どこで対象から外れるのか
働き続ける人に関わる給付金も見ていきます。シニアの就労を支える仕組みは整ってきていますが、一般的には60歳を境に収入が下がる傾向があります(※)。就職活動や就労の継続が、若いころと同じ調子で進む人ばかりでもありません。
ここでは、雇用保険に関連する手当や給付金を3種類取り上げます。いずれも、年齢と加入期間のどこかに線が引かれています。
(※)国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」による年齢階層別の平均給与:50歳代後半男性735万円、女性356万円、60歳代前半男性604万円・女性294万円、60歳代後半男性472万円・女性240万円
3.1 65歳未満で早めに再就職した人の「再就職手当」は、何で額が変わるのか
再就職手当は、早い時期の再就職を後押しするための手当です。失業から再就職まで、あるいは失業から事業の開始までの期間が短いほど、受け取れる額は多くなります。
再就職手当の支給要件を確認
- 対象者:雇用保険受給資格者で基本手当の受給資格がある人
- 支給要件:対象者が雇用保険の被保険者となる、または事業主となって雇用保険の被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給
再就職手当の給付率は、残した日数でどこまで変わるのか
額は、就職などをする前日までの失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数によって、給付率が分かれます(1円未満の端数は切り捨て)。所定給付日数の3分の1以上を残して就職した場合は支給残日数の60%、3分の2以上を残して就職した場合は支給残日数の70%です。
なお、再就職手当を受け取って再就職先で6カ月以上雇用され、その6カ月間の賃金が離職前より少ない場合は、「就業促進定着手当」の対象にもなります。手当を受け取ったら終わり、という形ではありません。
3.2 60歳から65歳未満で働き続ける人の「高年齢雇用継続給付」は、いくらまで支給されるのか
高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の人が働き続けるとき、賃金が60歳到達時より下がった場合に支給される給付金です。
高年齢雇用継続給付の支給要件を確認
- 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者
- 支給条件:賃金が60歳到達時の75%未満となった状態で働き続ける場合
高年齢雇用継続給付の支給率は、いつの時点で分かれるのか
支給額は、最高で賃金額の10%(※)相当額です。
(※)2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は15%
老齢年金を受け取りながら厚生年金に加入して高年齢雇用継続給付を受け取る場合、在職による年金の支給停止に加えて、最大で標準報酬月額の4%(※)にあたる金額が支給停止となります。2025年3月31日以前に支給要件を満たす人は6%です。受け取れる額と止まる額の両方を並べて見る必要があるところです。
3.3 65歳以上で仕事を離れた人の「高年齢求職者給付金」は、どう受け取る形なのか
高年齢求職者給付金は、65歳以上になってから失業した人に支給される給付金です。
高年齢求職者給付金の支給要件を確認
対象になるのは、高年齢被保険者、つまり65歳以上の雇用保険加入者で失業した人です。そのうえで、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上あり、かつ失業の状態にあることが求められます。失業の状態とは、離職して「就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)があり積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態」を指します。
高年齢求職者給付金の給付金額は、被保険者期間でどう分かれるのか
被保険者であった期間が1年未満なら30日分の基本手当相当額、1年以上なら50日分の基本手当相当額です。
65歳未満が受け取る失業手当は4週間に一度ずつ失業の認定を受けてから給付されますが、この高年齢求職者給付金は一括で支給されます。受け取り方の形が違うため、失業手当と同じものだと思っていると見落としやすくなります。
4. 【医療・介護・生活】負担を抑える制度は、どこまでが対象に入るのか
60代、70代と年齢が上がるにつれて重くなってくるのが、医療費と介護費用です。これらの出費で家計が行き詰まらないように、公的医療保険と介護保険には上限額のしくみと払い戻しの仕組みが置かれています。ただし、どの費用が計算に入るのかという線引きが、制度ごとに異なります。
4.1 医療費が高くなった月の「高額療養費制度」は、何を基準に払い戻されるのか
月の初めから終わりまでにかかった医療費の自己負担額が、年齢や所得に応じて定められた自己負担限度額を超えたとき、超えた分が後から払い戻される制度です。
一般的な所得層とされる70歳未満・年収約370万〜約510万円の区分では、ひと月の自己負担限度額の基本が「約8万5800円+(医療費から28万6000円を引いた額)の1%」という形で定められています。
ここで問題になるのが、事前の手続きをしていない場合です。退院時に窓口で数百万円を一旦立て替え、払い戻しは3〜4カ月後になるという立て替えの負担が発生します。
2026年現在は、マイナ保険証を利用するか、事前に「限度額適用認定証」を申請しておくことで、窓口での支払いを最初から上限額までに抑えることが可能です。上限額そのものを知らないままだと、この手続きに行き着きません。
4.2 介護の負担を抑える「高額介護サービス費」から外れる費用は何なのか
介護保険サービスを利用して支払った1カ月の自己負担額(1割から3割)の合計が、所得に応じた上限額を超えたとき、超えた分が払い戻される制度です。
気をつけたいのは、計算の対象から完全に外れる費用があることです。介護施設での食費・居住費(部屋代)・日常生活費や、特定福祉用具購入費・住宅改修費は、この計算に入りません。
上限額があるから施設に入っても月額数万円で済む、と受け取っていると、対象外の食費や居住費が毎月10万円以上加算されて資金が足りなくなる原因になりえます。上限があるのは「対象になる費用」の側だけです。
4.3 医療と介護を合わせる「高額医療・高額介護合算療養費制度」は、いつまでに申請するものなのか
1年間の区切りは毎年8月1日から翌年7月31日までで、この期間にかかった医療費と介護費用の自己負担額を世帯で合算し、基準額を超えた分の払い戻しを受けられる制度です。
年単位の計算になるため意識から抜けやすいのですが、支給対象になる世帯には原則として医療保険者から案内が届きます。
ただし、計算期間の途中で75歳になって後期高齢者医療制度に移った、退職して会社の健康保険から国民健康保険に切り替わったといった保険の異動があった場合は、データが分断されて案内が届きません。自分から過去の保険者に申請して合算の手続きを行わないと、2年の時効で消えてしまいます。案内が来ないことと対象外であることが、ここでもずれます。
4.4 住民税非課税世帯向けの「臨時給付金・自治体支援」は、どこで対象外になるのか
物価の高騰への対策として、住民税非課税世帯を対象にした7万円や10万円の臨時給付金が、政府や自治体から支給されることがあります。
この給付金は、その時々の補正予算や地方交付金を活用した一時的なものです。注意したいのは、「住民税が課税されている方(別居の家族などを含む)の税法上の扶養親族等のみで構成されている世帯」は、世帯分離をして住民票の上では非課税の単身世帯になっていても、給付の対象外とされる点です。住民票の世帯状況ではなく、税法上の扶養状況が判定に影響します。
現金の給付と税の控除を一本化していく方向についても議論が進んでいます。今後の制度の姿を知っておきたい場合は、【2026年8月最新】給付付き税額控除とは?いつから・いくらもらえる?「給付一本化」への転換と今後のスケジュールでくわしく解説しています。
5. 2025年の年金制度改正で、遺族厚生年金はどこが見直されるのかを確認
2025年6月に成立した「年金制度改正法」の狙いの一つは、働き方や家族構成が多様になったことに合わせて年金制度を整えることでした。
この改正では、いわゆる「106万円の壁」の撤廃に関わる社会保険の加入要件の拡大に加えて、遺族年金についての見直しも盛り込まれました。
5.1 遺族厚生年金の男女差は、どの年齢の区分で解消に向かうのか
いまの遺族厚生年金のしくみでは、受給する人の性別によって次のような差がありました。
現行の遺族厚生年金の仕組みを、男女それぞれで確認
女性は、30歳未満で死別した場合が5年間の有期給付、30歳以上で死別した場合が無期給付です。男性は、55歳未満で死別した場合は給付なし、55歳以上で死別した場合は60歳から無期給付となっています。
こうした差の解消に向けた見直しは、2028年4月から施行される予定です。
2028年4月から施行される予定の仕組みは、誰が対象になるのか
原則5年間の有期給付に当たるかどうかの要件が、男女の別ごとに細かく示されました。
- 女性は、施行直後(2028年4月)に原則5年間の有期給付の対象となるのが、「18歳年度末までのこどもがいない、2028年度末時点で40歳未満の方」です(すでに遺族厚生年金を受給している方や、2028年度に40歳以上になる女性は見直しの影響を受けません)
- 男性は、新たに5年間の有期給付を受けられるようになるのが、「18歳年度末までのこどもがいない60歳未満の方」です
- こどもがいる場合は、18歳年度末までのこどもがいるあいだは現行制度と同じで、見直しの影響はありません。こどもが18歳になった後、さらに5年間は増額された有期給付および継続給付の対象となります
5.2 有期給付と継続給付は、金額と要件がどこまで具体化されたのか
配慮が必要とされる場合の給付についても、金額の水準と要件の中身が定められました。有期給付には新たに「有期給付加算」が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍となります。
5年間の有期給付が終わった後も、障害状態にある方や収入が十分でない方は、引き続き増額された遺族厚生年金を受給できます。単身の場合、就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下の方は継続給付が全額支給され、おおむね月額20万円から30万円を超えると全額支給停止となります。
遺族基礎年金の側にも見直しが入りました。同一生計にある父または母が遺族基礎年金を受け取れなかった場合について、2028年4月からはこども自身が受け取れる形になります。
5.3 在職老齢年金の基準額は、いくらまで引き上げられたのか
一方で、働きながら年金を受け取ると年金が減額される在職老齢年金のしくみについては、就労意欲を阻害しているとの批判から、減額される基準額が65万円に引き上がりました。働き続けながら受け取れる範囲が広がった部分です。
6. 著者からひとこと:分からないままの部分を、確かめられる金額に置き換える
ここまで、申し出て初めて動く公的なお金を並べてきました。どの制度も、対象を切り分けている数字がはっきりしています。分からないのは制度ではなく、自分がその数字のどちら側にいるのか、という部分です。
7. 申請の前によく出る3つの疑問を確認
7.1 Q. 失業手当を受け取っている期間は、配偶者の社会保険の扶養に入れるのか
A. 失業手当(基本手当)の日額で分かれます。失業手当は非課税なので所得税の計算には入りませんが、健康保険の扶養の審査では収入として厳しく数えられます。60歳未満なら日額3612円(年収換算130万円未満)、60歳以上なら日額5000円(年収換算180万円未満)を超えている場合、手当を受け取っている期間は配偶者の扶養に入れず、自分で国民健康保険に加入して保険料を払うことになります。
7.2 Q. 役所から給付金の案内が届かないのは、対象外という返事なのか
A. そうとは限りません。年金生活者支援給付金のようにはがきが届くものもありますが、加給年金、高年齢雇用継続給付、失業手当などはいずれも自己申告(申請主義)です。条件を満たしていても役所からの案内はありません。自分で年金事務所やハローワークへ出向き、対象になるかどうかを尋ねるところから始まります。
7.3 Q. 失業手当と特別支給の老齢厚生年金は、どちらを取ると受け取る総額が多くなるのか
A. 個別の年金額と、失業手当の日額・給付日数を比べて計算しないと答えは出ません。現役時代の給与が高く失業手当の日額が高い人はハローワークで手続きをしたほうが手元に残り、逆に給与が低めで年金の加入歴が長い人は、失業手当を受けずに年金を受け取り続けたほうが総額が多くなる場合があります。退職の前に最寄りの年金事務所で年金見込額を出し、ハローワークの失業手当の計算ツールなどで見積もっておくとよいでしょう。
8. 【独自試算】高額療養費の上限を知らないまま窓口で払うと、1カ月あたりの差額はどこまで開くのか
高額療養費制度は、上限額を知っているかどうかで、同じ月の支払いが変わってきます。上限を知らずに窓口で3割を払い、払い戻しの申請もしなかった場合と、上限額までで止めた場合とで、ひと月の差がどれくらいになるのかを置いてみます。
前提条件
- 70歳未満で、一般的な所得層(年収約370万〜約510万円)に当たる人として計算する
- ひと月の自己負担限度額は、記事に出てきた「約8万5800円+(医療費から28万6000円を引いた額)の1%」の式をそのまま使う
- 医療費は、同じ月に同じ医療機関でかかった総額(10割)とし、窓口での自己負担は3割で置く
- 限度額適用認定証の申請もマイナ保険証の利用もせず、払い戻しの申請もしなかった場合の支払額と、上限額との差を見る
- 月をまたぐ入院、世帯での合算、多数回該当による引き下げは含めない
①医療費が30万円かかった月
- 窓口での3割の支払い:9万円
- 上限額:8万5800円+(30万円−28万6000円)の1%=8万5800円+140円=8万5940円
- 差額の目安:約4060円
②医療費が50万円かかった月
- 窓口での3割の支払い:15万円
- 上限額:8万5800円+(50万円−28万6000円)の1%=8万5800円+2140円=8万7940円
- 差額の目安:約6万2060円
③医療費が100万円かかった月
- 窓口での3割の支払い:30万円
- 上限額:8万5800円+(100万円−28万6000円)の1%=8万5800円+7140円=9万2940円
- 差額の目安:約20万7060円
医療費が30万円の月では差額は約4060円にとどまりますが、100万円の月では約20万7060円まで開きます。上限額そのものは医療費が増えてもほとんど動かず、1%分だけしか上がらないため、医療費が大きい月ほど差が広がるという形です。いずれも上の前提で置いた目安であり、実際の限度額は所得の区分や年齢、多数回該当の有無によって変わります。自分がどの区分に当たるのかは、加入している健康保険の窓口やお住まいの市区町村の窓口で確認していただくのが確かです。
9. 【監修者コメント・熊谷良子】上限額の計算式と、差額の試算は、確からしさの性質が違う数字
この記事に出てくる自己負担限度額の計算式と、そこから導いた差額の試算は、確からしさの性質が異なる数字です。計算式のほうは制度の仕組みから決まるもので、区分が分かれば結果も定まります。差額のほうは、その月にどれだけ医療費がかかるかという前提を置いて初めて出てくる推計値です。この2つを同じ重みで並べないほうが、判断を誤りにくいように思います。
適用の条件も添えておきます。記事に出ている「8万5800円+(医療費から28万6000円を引いた額)の1%」という式は、70歳未満で年収約370万〜約510万円の所得区分にあたる人の限度額です。所得の区分が変わればこの式そのものが変わりますし、70歳以上では別の区分が設けられています。ご自身がどの区分なのかを先に確かめていただかないと、差額の大小は意味を持たない数字になってしまいます。
加給年金の配偶者分の年24万3800円は、厚生年金の加入期間が20年以上あり、65歳到達時に生計を維持している65歳未満の配偶者がいる人の金額です。配偶者の側に被保険者期間20年以上の老齢厚生年金を受け取る権利があれば支給停止になります。老齢年金生活者支援給付金の月額5620円も2026年度の給付基準額で、実際の給付額は保険料の納付済期間と免除期間から計算されますから、そのまま届く額ではありません。所得の基準額は令和8年10月分から変わり、制度は今後も見直される可能性があります。要件の当てはめは年金事務所やお住まいの市区町村の窓口で確認したうえで進めていただくのが確かです。


