9月は、敬老の日にあわせて高齢世帯の家計や資産の統計が取り上げられることの多い月です。
そこで目にするのが、世帯の資産を金額で区切って並べた表です。自分がどの区分に入るのかは、手元の残高をあてはめればすぐに分かります。
ただ、この区分は等しい幅で並んでいるわけではありません。純金融資産1億円以上を富裕層、5億円以上を超富裕層と呼ぶ区切りの下には、もっと狭い間隔で区分が並んでいます。区分のどこにいるかが分かっても、次の境界までがどれだけ離れているかは、表には書かれていません。
この記事では、年間収入の区分ごとの金融資産の中身、純金融資産で区切った区分の割合と世帯数、年代別の貯蓄額を確かめます。そのうえで、区分と区分の境界がどれだけ離れていて、そこに届くまでの年数にどれだけ差がつくのかを計算します。
なお、純金融資産による区分ごとの割合や、年収別・年代別の資産のデータに関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 【令和7年調査】年収別で見る金融資産の実態と特徴
はじめに、年間収入で区切った表から見ていきます。金融経済教育推進機構(J-FLEC)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和7年)」には、世帯の年間収入を7つに区切ったうえで、預貯金・債券・株式・投資信託といった種類ごとの平均額が並べられています。
年収別のデータと年代別の貯蓄額を通しで見たい方は、【最新データ】日本の富裕層の割合は?年代別の平均貯蓄額と年収別データから見る資産形成の最適解が参考になります。
1.1 金融資産を持たない世帯まで数に入れた平均であることを先に押さえる
ここから並ぶ金額は、金融資産をまったく持っていない世帯も母数に含めた平均です。持っている世帯だけを取り出した数字とは水準が違いますので、その前提で読み進めてください。
金融資産保有額は、年間収入の区分ごとにどこまで開いているのか「全国と7つの区分」
まず、種類を分けない合計額です。
全国:1940万円
- 収入はない:634万円
- 300万円未満:858万円
- 300~500万円未満:1431万円
- 500~750万円未満:1755万円
- 750~1000万円未満:2222万円
- 1000~1200万円未満:2725万円
- 1200万円以上:5635万円
下から6つの区分は、634万円から2725万円まで、一段ずつなだらかに上がっていきます。ところが最後の1200万円以上だけが5635万円で、1つ手前の2725万円から一気に離れます。年間収入で区切った表でも、区分の幅はそろっていないことが分かります。
預貯金(運用または将来の備え)は、区分が上がるとどこまで積み上がるのか
全国:745万円
- 収入はない:385万円
- 300万円未満:368万円
- 300~500万円未満:631万円
- 500~750万円未満:693万円
- 750~1000万円未満:908万円
- 1000~1200万円未満:1028万円
- 1200万円以上:1649万円
預貯金は、最も小さい368万円と最も大きい1649万円のあいだが5倍に届きません。合計額のような段差は、この種類では出てきません。
債券の保有額は、区分ごとにどこで大きく動くのか
全国:78万円
- 収入はない:7万円
- 300万円未満:36万円
- 300~500万円未満:54万円
- 500~750万円未満:58万円
- 750~1000万円未満:67万円
- 1000~1200万円未満:91万円
- 1200万円以上:343万円
債券は、全国で78万円と金額そのものが小さい種類です。それでも1200万円以上の343万円は、1つ下の91万円の3倍を超えます。
株式の保有額は、上の区分でどこまで伸びているのか
全国:433万円
- 収入はない:33万円
- 300万円未満:191万円
- 300~500万円未満:235万円
- 500~750万円未満:365万円
- 750~1000万円未満:434万円
- 1000~1200万円未満:572万円
- 1200万円以上:1792万円
株式は、1200万円以上の区分で1792万円まで伸びます。同じ区分の預貯金1649万円を超えていて、種類ごとの順位が入れ替わるのは、7つの区分のなかでここだけです。
投資信託の保有額は、区分ごとにどう並んでいるのか
全国:216万円
- 収入はない:153万円
- 300万円未満:79万円
- 300~500万円未満:167万円
- 500~750万円未満:189万円
- 750~1000万円未満:238万円
- 1000~1200万円未満:292万円
- 1200万円以上:682万円
投資信託も、区分が上がるにつれて金額が大きくなります。ただ「収入はない」区分の153万円が、300万円未満の79万円を上回っています。働いて得る収入が止まったあとに、それまでに積み上げたものを取り崩しながら暮らしている世帯が含まれるためと考えられます。
債券・株式・投資信託の合計額と、金融資産全体に占める割合はどう見えるのか
値動きのある3つを合わせた金額と、それが金融資産全体の何%にあたるかを並べます。
全国:727万円(24.79%)
- 収入はない:193万円(8.99%)
- 300万円未満:306万円(22.14%)
- 300~500万円未満:456万円(26.21%)
- 500~750万円未満:612万円(23.42%)
- 750~1000万円未満:739万円(34.29%)
- 1000~1200万円未満:955万円(26.68%)
- 1200万円以上:2817万円(26.69%)
金額のほうは、区分が上がるにつれて大きくなります。一方、金融資産全体に占める割合は、750~1000万円未満の34.29%がやや高いほかは、「収入はない」区分を除けばおおむね20%台に並びます。値動きのある置き場所を使うこと自体は、収入の高い区分に限った話ではない、という読み方ができます。
ここで押さえておきたいのは、この表が年間収入で区切られている点です。次の章で出てくる富裕層・超富裕層の区分は、収入ではなく手元に残っている資産の額で区切られています。同じ「区分」という言葉でも、目盛りが違います。
2. 富裕層・超富裕層への道!純金融資産の「5つの区分」1億円以上保有の世帯はどれくらいいる?
ここからは、収入ではなく資産の額で区切った表を見ていきます。株式会社野村総合研究所のレポート『野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計』では、世帯の純金融資産保有額によって次のように区切られています。
- 富裕層:世帯の純金融資産保有額が1億円以上5億円未満
- 超富裕層:世帯の純金融資産保有額が5億円以上
純金融資産は、持っている金融資産から負債を引いた額を指します。住宅ローンなどが残っていれば、その分だけ差し引いた金額でこの区分にあてはめることになります。
2.1 区分の境界は、どの金額に置かれているのか
下に掲げた出所の図表では、この2つの区分の下にも区切りが置かれていて、上から超富裕層、富裕層、そして純金融資産5000万円以上1億円未満、3000万円以上5000万円未満、3000万円未満と、全体で5つの区分に分かれています。境界にあたる金額は3000万円・5000万円・1億円・5億円の4つです。
この4つを並べると、間隔がそろっていないことが分かります。3000万円から5000万円までは2000万円ですが、5000万円から1億円までは5000万円、1億円から5億円までは4億円あります。区分を1つ上がるという言い方は同じでも、越える金額はまったく違います。記事の後半では、この間隔の違いが年数にどう表れるのかを計算します。
2.2 富裕層・超富裕層の割合と世帯数は、どこまで増えたのか
この2つの区分が全世帯に占める割合は、次のとおりです。
- 富裕層:約2.75%
- 超富裕層:約0.21%
2つを合わせても3%に届きません。ただ、2023年の調査では、この2つの区分の世帯数が2005年以降で最も多くなりました。
【2023年】時点での富裕層・超富裕層の世帯数
- 富裕層:153万5000世帯
- 超富裕層:11万8000世帯
割合そのものは小さいものの、世帯数は増えています。背景には、株式市場の値上がりや投資信託の広がりによって、持っている資産の評価額が上がったことがあると考えられます。収入から貯めた分だけでなく、すでに置いてあった資産が値上がりした分が効いている、という見方ができます。
裏返すと、値上がりの分を受け取れるかどうかは、資産のうちどれだけを値動きのある置き場所に回しているかで変わります。前の章で見た区分ごとの内訳と、この章の区分がつながるのはこの点です。ただし値動きは下にも振れますから、元本割れの可能性は常に残ります。
3. 年代別の貯蓄額は、平均値と中央値でどの年代がいちばん離れるのか「単身世帯・二人以上世帯」
次は、年代で区切った表です。J-FLEC(金融経済教育推進機構)の『家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和7年)』および『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和7年)』から、金融資産を保有していない世帯を含む数字を並べます。
3.1 単身世帯で、平均値と中央値の開きがいちばん大きいのはどの年代か
【単身世帯】年代別の貯蓄額 平均値と中央値(金融資産を保有していない世帯を含む)3/4
出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(令和7年)」をもとにLIMO編集部作成
- 20歳代:平均値255万円・中央値37万円
- 30歳代:平均値501万円・中央値100万円
- 40歳代:平均値859万円・中央値100万円
- 50歳代:平均値999万円・中央値120万円
- 60歳代:平均値1364万円・中央値300万円
- 70歳代:平均値1489万円・中央値500万円
平均値と中央値の差がいちばん大きいのは60歳代で、1364万円と300万円のあいだに1064万円の開きがあります。40歳代は平均値859万円に対して中央値100万円で、中央値は30歳代と同じ額のまま、平均値だけが伸びています。中央値が60歳代で300万円、70歳代で500万円と動くのは、退職金を受け取る時期にあたることが影響していると考えられます。
3.2 二人以上世帯で、中央値が大きく伸びるのはどの年代か
【二人以上世帯】年代別の貯蓄額 平均値と中央値(金融資産を保有していない世帯を含む)4/4
出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(令和7年)」をもとにLIMO編集部作成
- 20歳代:平均値525万円・中央値125万円
- 30歳代:平均値1096万円・中央値311万円
- 40歳代:平均値1486万円・中央値500万円
- 50歳代:平均値1908万円・中央値700万円
- 60歳代:平均値2683万円・中央値1400万円
- 70歳代:平均値2416万円・中央値1178万円
中央値がいちばん大きく動くのは50歳代から60歳代にかけてで、700万円から1400万円へと倍になります。ここでも退職金の受け取りが効いていると考えられます。70歳代では平均値も中央値も60歳代を下回り、取り崩す時期に入ったことがうかがえます。単身世帯とくらべると、平均値も中央値も二人以上世帯のほうが高い水準です。世帯の人数が多い分、暮らしにかかる費用も将来への備えも大きくなるためです。
3.3 自分がどの区分にいるかを確かめるとき、中央値を先に見ておく理由
平均値は、資産の大きい一部の世帯に引き上げられます。前の章で見たとおり、純金融資産1億円以上の世帯は全体の3%に届かない規模ですが、金額そのものが大きいため、平均値のほうを押し上げます。年代のなかで自分がどのあたりかを確かめる目安としては、真ん中にあたる中央値のほうが使いやすいという見方ができます。
たとえば二人以上世帯の60歳代は、平均値2683万円に対して中央値1400万円で、1283万円の開きがあります。どちらの数字を自分の目安に置くかで、次の境界までの距離の見え方も変わってきます。
4. 物価高に負けない!資産形成を始める前に確認すべき3つのポイント
ここまで、年間収入の区分ごとの金融資産の中身、純金融資産で区切った区分の割合と世帯数、年代別の貯蓄額を見てきました。
3つを並べて見えてくるのは、区分の表が示すのは現在地までだということです。同じ表を見ていても、いまいる区分が違えば、次に手をつけるところは変わります。
置き場所の比重を海外と比べておきます。日本銀行調査統計局が2025年8月29日に公表した「資金循環の日米欧比較」によると、米国の家計金融資産のうち「現金・預金」の割合は11.5%です。日本の家計とは比重が大きく異なります。
物価が上がる局面では、預貯金に置いたままの資金は、額面が変わらなくても買えるものが目減りしていきます。一方、値動きのある置き場所に回した資金には価格変動リスクが伴います。どちらにも避けられない性質があるため、片方に寄せきるかどうかではなく、どの区分にいるかに合わせて配分を決めていく形になります。
4.1 中央値を目安にした、3つの段階の分け方
どの順で手をつけるかを、3つの段階に分けて整理します。
1つ目は、暮らしを守る資金を確保する段階です。いつでも引き出せる形で、毎月の生活費の3〜6カ月分を持っておきます。30歳代の二人以上世帯なら、100万〜150万円程度が1つの目安です。
2つ目は、運用で増えた分に課税されない枠を使う段階です。毎月一定額を積み立てる形にして、手取り年収の10〜15%を目安に置くという考え方があります。金額を先に決めておくと、値動きのたびに出し入れする場面が減ります。
3つ目は、余っている資金を分けて置く段階です。暮らしを守る資金と毎月の積立に支障が出ない範囲で、値幅を受け入れられる部分に回します。ここは急いで動かすところではなく、無理のない範囲でゆっくり広げていく部分です。
手をつける前に書き出しておく3つの項目
- いま動かせる資金が、同じ年代の中央値に対してどのあたりにあるか
- 毎月いくらを、どの置き場所に積み立てているか
- 純金融資産で見たときに、負債を引いたあとの額がいくらになるか
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5. 【独自試算】3000万円・5000万円・1億円・5億円という区分の境界は、どれだけ離れていて、届くまでの年数にどれだけ差がつくのか
区分の表は、自分の位置までは教えてくれますが、次の境界までの距離までは示しません。そこで、境界どうしの間隔を金額で並べ、同じ条件で積み上げたときにそれぞれの境界へ届くまで何年かかるのかを計算します。
前提条件
- 区分の境界は、株式会社野村総合研究所のレポートの図表「階層別にみた保有資産規模と世帯数」に置かれている、純金融資産保有額3000万円・5000万円・1億円・5億円の4つとする
- 出発点は、J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和7年)」の金融資産保有額の全国平均1940万円(金融資産を保有していない世帯を含む)とする
- この1940万円をそのまま運用に回し、あわせて毎月3万円を積み立てるものとする
- 年利は3%で一定と置く。月利は(1+年利)の12分の1乗から1を引いて求め、毎月末に積み立てて翌月から複利で回す
- 負債はないものとして、金融資産の額をそのまま純金融資産の区分にあてはめる
- 税金、手数料、物価の変動は考えない
- 年数は小数第2位を四捨五入した概数で示す
①区分の境界どうしは、どれだけ離れているか
- 3000万円から5000万円まで:2000万円
- 5000万円から1億円まで:5000万円(2000万円の2.5倍)
- 1億円から5億円まで:4億円(5000万円の8倍)
②出発点1940万円から、それぞれの境界に届くまでの年数
- 3000万円:118カ月=約9.8年
- 5000万円:276カ月=約23.0年
- 1億円:515カ月=約42.9年
- 5億円:1132カ月=約94.3年
③1つ上の境界まで、それぞれ何年かかるか
- 出発点から3000万円まで:約9.8年
- 3000万円から5000万円まで:約13.2年
- 5000万円から1億円まで:約19.9年
- 1億円から5億円まで:約51.4年
④金額の間隔の広がり方と、年数の差の広がり方をならべる
- 金額の間隔は、1060万円(出発点から3000万円まで)、2000万円(約1.9倍)、5000万円(2.5倍)、4億円(8倍)と広がる
- 年数の差は、約9.8年、約13.2年(約1.3倍)、約19.9年(約1.5倍)、約51.4年(約2.6倍)と広がる
- 金額の間隔が8倍に広がる区間でも、年数の差は約2.6倍にとどまる。残高が増えるほど1年に増える額も大きくなるため、金額の開き方ほどには年数が伸びない
この前提では、いちばん下の境界である3000万円までは約9.8年、その次の5000万円までは約13.2年です。年数だけを見れば、隣の境界どうしはそれほど離れていません。一方で、1億円から5億円までは約51.4年、出発点から数えると約94.3年になり、同じ前提のまま積み上げる期間としては現実的な長さを超えます。区分を1つ上がるという言い方は同じでも、どの区間にいるかで意味がまったく変わる、ということです。
ここでの年数は、上の前提から出した目安にすぎません。年利3%は計算のために置いた一定の値で、実際の運用成績は上下しますし、元本割れの可能性もあります。税や手数料のかかり方は商品や契約の条件によって変わるケースもあり、収入も支出も家族の状況も一つひとつ違います。ご自身の場合にどう当てはまるかは、取引のある金融機関の窓口や、お手元の契約の書面で確かめながら見ていくことになります。
6. 【監修者コメント・村岸理美】区分の境界の数字を、自分の家計に当てはめる前に確かめておきたいこと
今回のデータで最も注目していただきたいのは、区分の境界が等間隔で並んでいない点です。3000万円から5000万円までは2000万円ですが、1億円から5億円までは4億円あります。記事中の試算のように、同じ条件で積み上げたときの年数に置き換えると、この違いがはっきり出てきます。区分の名前は1つ上がるだけでも、越える距離は同じではありません。
適用の条件を補っておきます。試算の出発点に使われている1940万円は、J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和7年)」の、金融資産を保有していない世帯を含む全国平均です。金融資産を持っている世帯だけで集計した数字とは水準が違いますし、二人以上世帯の調査ですので、単身世帯には当てはまりません。もう一点、区分に使われているのは純金融資産で、金融資産から負債を引いた額です。記事の試算は負債がないものとして計算していますので、住宅ローンなどが残っている場合は、その分だけ境界までの距離が延びます。富裕層約2.75%、超富裕層約0.21%という割合と、153万5000世帯・11万8000世帯という世帯数は2023年調査の推計値で、時点が異なる数字と並べて読むときには注意が必要です。CFPとして家計相談を受けるなかでも、資産の側だけを足し上げて、負債を書き出していないケースは少なくありません。
ファイナンシャル・プランナーとしてお伝えしたいのは、区分の表は他人と自分をならべる道具ではなく、自分の数字から逆算するための目盛りだということです。年に一度、金融機関から届く残高のお知らせがそろう時期を決めて、資産の合計と負債の残高を書き出し、そこから次の境界までの差額を出してみるとよいと思います。年利3%という前提も、そのときどきの環境で見直すべき数字です。数字の置き方に迷うときは、取引のある金融機関の窓口や、税の部分は税務署や税理士に確認しながら進めていただければと思います。


