17. 利息や配当は、受け取るだけで自動的に所得へ数えられるわけではない。申告に含めるかどうかを選べる部分と選べない部分の見分け方を、IFA・橋本 優理が解説

60歳代は、それまで積み上げてきたお金の使い方を、増やすことから受け取ることへ切り替えていく時期です。証券会社の口座を初めて開く方も、この年代には少なくありません。使う予定が決まらないまま預金に置いてある分をどうするか、ここで一度考えることになります。前半でみたように、住民税が非課税になるかどうかは、その年に受け取った所得を合計して判定する仕組みですから、受け取る形をつくったあとで、その受け取り方が判定にどう関わるのかまで見ておく必要があります。インターネットの無料相談サービスを立ち上げたときに実感したのですが、多くの方が調べるのは「何を買えばいいか」までで、「受け取ったあとどうなるか」は検索の言葉になりません。ご相談で最初にうかがうのも、どの商品を選ぶかではなく、増えた分をどういう形で受け取ることになるかです。相談の場では次のような声を耳にします。

17.1 預金に置いたままのお金を債券に回して安定した収入を得たいが、受け取ったあとの税金の扱いが分からない

60歳代(ご相談者)

「会社員として働いてきて、証券会社の口座を開いたばかりです。これまで普通預金に置いたままにしているお金があって、使う予定も決まっていないので、そのままにしておくのがもったいないように感じていました。大きく増やしたいというより、値動きに振り回されずに、安定した収入が入ってくる形にしたいと思っています。それで、外貨で発行された債券をいくつか候補として挙げてもらい、まずは少額から始めてみようかと考えているところです。

気になっているのは、受け取ったあとのことです。債券と株式は税金の扱いが似ていて、預金とは違うと聞きました。ただ、利息や配当を受け取ったときに、自分で申告しなければならないのか、しなくてよいのか、しないほうがよいのかが分かりません。住民税の扱いにも関わってくるのなら、始める前に知っておきたいのです」

相談の場でも、受け取る形を整えるところまでは決められたのに、受け取ったあとに申告するかしないかまでは考えていなかったという方に数多くお会いします。

17.2 【IFA・橋本 優理が回答】受け取り方が何通りもあれば、税の入口も何通りもある

橋本 優理

資産運用のご相談では、税金に関するご質問も少なくありません。
「利息を受け取れる形にしておけば、あとは受け取るだけ」と決めつける前に、税金の扱いを確認しておくことが大切です。
利益の受け取り方によって、かかる税金が変わってきます。
利息と配当と売却の差では税の入口が違って申告に含めるかどうかを選べる部分があると知っておくことが、受け取ったあとに混乱を防ぐポイントになります。

17.3 ポイント1:預金に置いたままのお金を、全部動かさずに置き場所を分ける

まずお願いしているのは、置いたままのお金を全部動かさないことです。使う予定が決まっていないお金は、動かしていないという意味では止まって見えますが、いつ必要になるか分からないという性質も同時に持っています。ですから、置き場所を分けます。近いうちに使う可能性がある分は、そのままいつでも引き出せる形で残しておく。しばらく使わないと言える分だけを、収入が入る形に移していく。この分け方をせずに全額を移してしまうと、急な出費が出たときに、動かしたばかりのものを手放して戻すことになります。手放して戻すというのは、その時点の価格で売るという意味ですから、買ったときを下回っていれば、そのまま損が出ます。すでに年金型の保険や外貨での預金、投資信託といった別の置き場所をお持ちの場合は、それも一緒に並べたうえで、どの区分に寄っているかを見てください。一つの区分に集まっているなら、寄っている分を薄める向きに動かすのが先です。少額から始めてみたいというお考えは、この分け方とよく合います。

17.4 ポイント2:利息を受け取る仕組みと、候補を絞るときに見る条件を確かめる

次に、債券という仕組みそのものを確かめます。債券は、発行するところにお金を貸して、決められた時期ごとに利息を受け取り、期限が来たら額面が戻ってくることを前提にした資産です。株式のように、その会社の業績によって受け取る額が増えたり減ったりするものではありません。ここが「安定した収入」と言われる理由です。ただし、貸す先が返せなくなれば、利息も額面も約束どおりには戻りません。ですから候補を絞るときには、いくら受け取れるかの前に、貸す先がどこなのかを見ます。見る条件は多くありません。貸す先の信用の程度を外部の会社が評価した記号があり、その目安が一つ。期限までの残りの長さが二つ目です。同じ貸す先でも、残りが長いものほど、途中の値動きは大きくなります。三つ目が、どの通貨で発行されているかです。この三つを並べると、候補はかなり絞れます。何本かを横に並べて、受け取れる利息の水準が高いものには必ずその理由があると考えてみてください。信用の程度が低い、期限が遠い、通貨に不安がある。理由が分かって納得できるものだけを残していく、という順序で選んでいただくのが安全です。

17.5 ポイント3:いまの金利と為替の環境が、受け取る額にどう関わるかを押さえる

三つ目は、いまの環境をどう見るかです。債券から受け取れる利息の水準は、その通貨の国の金利の高さに引っ張られます。ここ数年は、円よりも外貨のほうが金利が高い局面が続いてきたので、外貨で発行された債券のほうが受け取れる利息の水準が高く見えます。これが、外貨のものが候補に挙がる理由です。ただし、円で暮らしている方にとっては、そこに為替が挟まります。外貨で受け取った利息と、期限が来て戻ってきた額面を、円に直したときにいくらになるか。買ったときより円が安くなっていれば円で見た額は増え、円が高くなっていれば減ります。利息の水準の高さが、為替の動きで打ち消されることもあるということです。逆に、為替の動きで手元に残る額が増えることもあります。ですから、外貨のものを選ぶときは、利息の水準だけで比べないでください。円に戻す時期が決まっているお金なのか、しばらく外貨のまま置いておける性質のお金なのか。そこを分けて考えると、外貨で持つ意味があるかどうかが見えてきます。金利の環境は変わりますから、いま高く見えることがこの先も同じように続く前提では組まないほうがよいと思います。

17.6 ポイント4:利息・配当・売却の差は別々に計算され、申告に含めるかどうかを選べるかどうかも区分によって違う

最後が、受け取ったあとの扱いです。ここは「債券と株式は似ていて、預金とは違う」というところから話が始まります。預金の利息は、受け取る時点で税金が引かれて完結し、こちらで何かを選ぶ場面がありません。ところが、投資から受け取るお金には受け取り方が何通りかあって、それぞれ税の入口が違います。債券の利息や、株式や投資信託から受け取る配当。期限まで持って戻ってきた額面と、買ったときとの差。期限を待たずに売ったときの差。外貨のまま持っていた分を円に戻したときに出た差。同じ「増えた分」でも、これらは別の区分として計算されます。区分が違うということは、税率も、申告するかしないかを選べるかどうかも違うということです。とくに配当は、受け取る時点で税金が引かれて済ませることもできますし、こちらから申告に含めることもできる、選べる部分があります。そして、申告に含めた場合には、その分がその年の所得として合計される側に回りますから、住民税が非課税になるかどうかの判定にも入ってきます。申告に含めれば税金が戻ることもある一方で、判定は動く。片方だけを見て決めると、思っていたのと逆の結果になることがあります。期限まで持つのか、途中で売る可能性を残すのかによって、どの区分で受け取ることになるかも変わってきますので、始める前に、受け取り方ごとにどの区分になるのかを担当者に一度整理してもらってください。そのうえで、申告に含めるかどうかの判断は、お住まいの自治体の窓口や税務署、税理士に確認してから決めていただくのが確実です。

安定した収入が入る形をつくることと、受け取ったあとに手元にどれだけ残るかは、分けて考える必要があります。受け取り方が何通りもあるということは、選べる場面がそれだけあるということでもあります。これは一つの考え方であり、どの区分にどれだけ置くのが適しているかや、申告に含めたときに判定がどう動くかは、収入の内容や世帯の状況、選んだ商品の条件によって異なります。まずは、置いたままになっているお金のうち、しばらく使わないと言える分がどれくらいあるかを確かめるところから始めてみてください。そのうえで、利息・配当・売却の差がそれぞれどの区分で計算され、そのうちどれが住民税の判定に入るのかは、受け取る形を決める前に、税務署や税理士、お住まいの自治体の窓口で確認しておいてください。

18. まとめにかえて

配当は、受け取る時点で税が差し引かれる形なら、そこで手続きが終わります。ただ、こちらから申告に含めた年は、その分が合計する所得の側に回ります。神戸市の例では、65歳以上で年金だけの単身の世帯なら合計所得45万円が基準額でした。申告に含めると戻ってくる税がある一方で、国民健康保険料の応益分の減額が外れると負担が増えます。まずは納付書で応益分保険料の額と減額の区分を確かめ、戻る額と増える額を同じ紙に並べてみてください。そのうえで、申告に含めるかどうかの判断は市区町村の窓口や税務署、税理士に確かめながら進めていただくのが確かです。

参考資料

橋本 優理