3. 12月からiDeCoの拠出限度額が引き上げ。私的年金の見直しで押さえておきたいポイント

老後の生活を支えるのは、公的年金だけではありません。国は、公的年金に上乗せする「私的年金」の制度についても見直しを進めています。

2025年に成立した年金制度改正法などにより、iDeCoや企業型DCの拡充、企業年金の情報開示などが順次進められています。

私的年金の見直しについて4/4

私的年金の見直しについて

出所:厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」

3.1 iDeCoの加入可能年齢を70歳未満まで拡大【2026年12月】

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を拠出・運用して老後の資産を準備する私的年金制度です。掛金が全額所得控除の対象となるほか、運用益も非課税になるなど、税制上の優遇措置が設けられています。

2026年12月1日からは、一定の要件を満たす60歳以上70歳未満の人にも加入対象が広がります。

対象となるのは、iDeCoの加入者や運用指図者だった人、企業年金からiDeCoへ資産を移換する人などです。また、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給しておらず、マッチング拠出を利用していないことなども要件となります。

なお、2029年11月30日までの経過措置として、これらに該当しない60歳以上70歳未満の人についても、一定の条件のもとで加入が認められます。

3.2 iDeCo・企業型DCの拠出限度額も引き上げ【2026年12月】

2026年12月1日からは、iDeCoや企業型DCの拠出限度額も引き上げられます。

会社員など国民年金の第2号被保険者については、企業型DCの拠出限度額が原則として月5万5000円から月6万2000円へ引き上げられます。

iDeCoについても、企業年金に加入していない会社員などは月2万3000円という従来の上限が見直され、企業年金の掛金などと合わせて月6万2000円の共通枠が設けられます。

また、自営業者やフリーランスなど国民年金の第1号被保険者については、iDeCoと国民年金基金を合わせた拠出限度額が月6万8000円から月7万5000円へ引き上げられます。

なお、これに先立つ2026年4月には、企業型DCのマッチング拠出について「加入者掛金は事業主掛金を超えられない」という制限が撤廃されました。

3.3 企業年金の「見える化」も進む

企業年金については、運営状況や資産運用などに関する情報を広く公開する「見える化」も進められています。

これまで企業年金の情報は加入者本人への通知や厚生労働省への報告が中心で、一般には十分に公開されていませんでした。

今後は、厚生労働省が一定の情報を取りまとめて公表し、加入者や企業が他社の企業年金と比較・分析できる環境を整備する予定です。

施行日は、2025年6月20日の改正法公布から5年以内に政令で定められることになっています。

3.4 私的年金も含めて老後資金を考える

公的年金は老後生活を支える重要な収入源ですが、それだけで希望する生活費をすべてまかなえるとは限りません。

また、公的年金には、現役世代の人口減少や平均余命の伸びなどに応じて年金額の伸びを調整する「マクロ経済スライド」の仕組みがあります。

そのため、公的年金の見込額を確認したうえで、iDeCoや企業年金、NISAなども活用しながら、自分に合った方法で老後資金を準備していくことが大切です。

4. FPからのアドバイス|数字を見る順番を決めておく

老後資金の相談を受けていて感じるのは、調べる順番が逆になっているということです。

4.1 ①まず自分の見込額を出す

出発点は平均月額やなんとなくの受給額ではありません。ねんきん定期便かねんきんネットで確認できる「自分の見込額」です。

50歳以上の方の定期便には、現在の加入条件が60歳まで続いた場合の見込額が載っています。

なお、50歳未満の方はこれまでの加入実績に基づく額なので、そのまま将来の受取額と読まないよう注意してください。

4.2 ②次に、足りない金額を月単位で出す

見込額が分かったら、生活費との差を月いくらかで出します。年間ではなく月で見るほうが、生活の実感に近くなります。

なお、本記事で紹介した年金額はあくまでも額面であり、手取りは違います。社会保険料や税が引かれるため、実際に使えるのは額面より少なくなります。

手取りベースで差を出しておくと、あとの計画が狂いにくくなります。

4.3 ③掛金は「続けられる額」から決める

そのうえで、iDeCoや新NISAの掛金を決めます。上限が引き上げられたからといって、そこから逆算する必要はありません。

筆者がこれまで相談を受けたなかでは、積立額を高く設定しすぎたため、家計が苦しくなって途中で見直すケースもありました。

原則60歳まで引き出せないiDeCoでは、この判断がより重くなります。

家計に余裕が出てきた段階で掛金の増額も検討できるので、まずは無理なく続けられる額で始めましょう。

5. まとめ

厚生年金で月15万円以上を受け取っている人は、受給権者全体の49.8%でした。ただし男性68.8%、女性12.3%と開きがあり、最も人数の多い階級は月10万円台前半です。

平均や全体の割合だけでは、実態は見えてきません。

また、2026年12月からは、iDeCoの掛金の拠出限度額も引き上げられ、一定の要件を満たす人は70歳になるまで拠出できるようになります。

企業年金のない会社員は月2万3000円から6万2000円となり、所得控除の効果も大きくなる可能性があります。

加藤 聖人
制度が変わると「上限まで使わないと損」という気持ちになりますが、iDeCoに関してはそう単純ではありません。60歳まで引き出せないお金を増やすということは、それだけ手元の自由度を手放すということでもあります。まずはねんきん定期便で自分の見込額を確認し、足りない分を月いくらと出してみてください。その数字が出れば、掛金をいくらにすべきかは自然と決まります。12月まではまだ時間がありますので、慌てず順番に整理していきましょう。

参考資料

加藤 聖人