12. 50歳代に多い「値下がりしたときに、持ち続けられるか自信がない」というご相談。IFA・神田 翔平が伝えたいこと

50歳代になると、定年後の収入の見通しが少しずつ具体的になってきます。前半でみたように、会社員として働いてきた方が受け取る厚生年金の額は現役時代の収入や加入していた期間によって差があり、退職金の扱いも勤務先によって大きく異なります。手元の資産をどこに置くかという話は、老後の生活費をどう組み立てるかという話と重なってきます。値動きのあるものを持つかどうかで迷う背景には、下がった局面で持ち続けられるかという心配が置かれていることが多く、相談の場では次のような声を耳にします。

12.1 50歳代に多いお悩み相談は「相場が下がった局面で、売らずに待てるか分からない」

50歳代のお客様

「会社員として働いてきましたが、退職金はあまり多くを見込めそうにありません。年金の見込み額を見ても、これで暮らしていけるのかどうか、正直なところつかめていません。

以前から投資信託を持っていて、いまはそれを解約して、まとまったお金が戻ってくるところです。預貯金のまま置いておくのはもったいない気もするのですが、元本を割ることがあると聞くと、下がった局面で持ち続けられる自信がありません。60歳以降の暮らしの見通しが立たないまま、次の置き場所だけ決めてしまっていいものか、迷っています」

まとまった資金の行き先を考えるところまでは進みながら、値下がりしたときに自分が耐えられるか分からず決めきれない、という方に数多くお会いします。

12.2 【IFA・神田 翔平が回答】下げに耐えられるかは、金額ではなく土台の高さで決まる

神田 翔平
「値下がりが怖いから運用はやめておこう」と決めつける前に、実際に取り崩すまでの期間をどのぐらい取れるのかという点と、「元本割れ」がどのような状態で起きるのかを整理しましょう。
例えば、相場状況によって生じるものなのか、商品性で発生してしまうのかという点です。
そのうえで、資産を置く場所と、取り崩し時期を分けておくことで相場が下落するタイミングになったとしても慌てて売却したりすることなく運用を続けていくことができる備えとなります。

12.3 ポイント1:下げに耐えられるかどうかは、資産の額ではなく、取り崩さずに待てる期間で決まる

相場が下がった局面で売らずにいられるかどうかを分けるのは、持っている金額の大きさではありません。毎月の生活費のうち、終身で入ってくる年金でどこまでを賄えるかです。年金で日々の暮らしがおおむね回っていれば、値下がりしている資産には手を付けずに置いておけます。逆に生活費の多くを取り崩しで埋めている状態だと、価格が下がっているときほど多くの口数を売ることになり、戻るのを待つ余地そのものが小さくなります。ご相談をお受けするときにまず伺うのは、商品の話ではなく60歳以降の収入と支出をどう見込んでいるかです。退職金の有無や受け取り方は勤務先の制度によって異なりますので、見込みがはっきりしない場合はお勤め先の担当窓口で確かめておいてください。

12.4 ポイント2:「元本割れ」をひとくくりにせず、一時的な値下がりと、途中でやめたときに引かれる分に分ける

「元本を割る」という言葉は、性質の違うものをまとめて指しています。ひとつは、市場が下がって評価額が買ったときを下回っている状態です。これは売らなければ確定しませんし、時間をかけて戻ることもあります。もうひとつは、途中でやめると決められた分が差し引かれる仕組みです。保険のかたちで持つ資産には、契約から一定の期間内に解約すると費用が控除されるものや、解約する時点の市場金利の状況に応じて受け取る額が調整されるものがあります。外貨で運用するものであれば、円に換える時点のレートによって手取りが変わります。待てば戻る可能性があるものと、やめた時点で結果が確定してしまうものと、どちらの意味で怖いのかが分かると、身構えるところと待てるところが分かれてきます。

12.5 ポイント3:置き場所と動かす時期を分けておくと、下げの局面で全部を売らずに済む

戻ってくる資金をひとつにまとめず、複数の金融機関に分けて置きたいと考えている方もいるでしょう。分けておく利点は、値動きの異なるものを組み合わせられることだけではありません。お金が必要になったときに、下がっているものを避けて戻っているものから取り崩せるようになります。全部を同じ時期に動かす前提でいると、そのときの相場がそのまま結果になってしまいます。手続きに進む前には、契約前に交付される書面で、途中でやめる場合の扱いと受け取り方の選択肢を確かめておいてください。

これは一つの考え方であり、値動きのあるものをどれだけ持てるかは、年金や退職金の見込み、これから予定している支出によって状況ごとに異なります。

13. まとめにかえて

値下がりが怖いという感覚は、資産の額の大きさから来ているように見えて、実際には「取り崩さずに待てる期間がどれだけ残っているか」から来ています。令和6年度の実績では、月15万円という線を境に受給者はほぼ半分に分かれていました。線のどちら側にいるかで、同じ下落局面でも残る余裕の長さが何倍か変わってきます。

まずは、ねんきんネットや年金事務所でご自身の見込額を確かめ、毎月の支出のうち何割を年金で賄えるのかを書き出すところから始めてみてください。天引きされる保険料や税の扱い、在職老齢年金の適用で判断に迷うときは、年金事務所や市区町村の窓口、税務の専門家に確かめながら進めていただければと思います。

参考資料