10. 「足りない分は積立で埋めるしかない」と考えてしまう50歳代。すでに持っているお金の置き場所から見直す順序を、IFA・神田 翔平が解説
50歳代は、老後までの時間がまだ残っている一方で、受け取れる年金の見込みが具体的に見えてくる年代です。前半でみたように、厚生年金の受給額には人によって幅があり、自分の見込額が思っていた水準に届かないと分かることもあります。そうしたとき、まず「毎月の積立額を増やさなければ」と考える方は少なくないのですが、銀行の個人リテールで投資信託や保険のご相談に応じてきた立場から申し上げると、その前に確かめておきたいことがあります。相談の場では次のような声を耳にします。
10.1 積立を増やすべきか、預金に置いたままのお金を動かすべきか決めきれない

相談の場でも、積立額を増やすことばかりを考えて、すでに持っている運用や預金に置いたままのお金の見直しが後回しになっている方に数多くお会いします。
10.2 【IFA・神田 翔平が回答】積立を増やす前に、すでにあるお金の置き場所を確かめる
また、同じ債券運用であっても保険会社経由と証券会社で運用するかによってお金の増え方や、税制上の仕組みにも違いが出てきます。
すぐに、運用に回す金額を増額していく方法に選択肢を狭めるのではなく、まずは今あるご資産を最大限活用する手段を見つけていくことが。先にできる整理になります。
10.3 ポイント1:いま持っている運用の「金利が見直される時期」と為替の動きを確かめる
専門的な話になるんですが、外貨建ての保険には、契約したときの利率がそのまま満期まで続くのではなく、一定の期間ごとに適用される金利が見直される仕組みのものがあります。最初に確かめたいのは、自分の契約がいつ見直しを迎えるのか、そのときにどういう条件で金利が設定されるのかという点です。加えて、外貨で運用している商品は、円に戻す時点の為替によって受け取れる金額が変わります。円安の局面では有利に見え、円高に振れれば目減りしますが、どちらに動くかを言い当てることはできません。だからこそ、為替そのものを予想するのではなく、見直しの時期と今の為替の水準をそろえて確認し、続けるのか組み替えるのかを判断する。この順序を踏まないまま新しい積立を上に重ねると、全体で何を持っているのかが分からなくなってしまいます。
10.4 ポイント2:金利を固定するなら、保険での運用と証券会社での債券運用の違いから比べる
要点を先に申し上げると、今の高い金利を長い期間そのまま固定できるかどうかが分かれ目です。債券は、満期まで持てば決まった利息を受け取り、満期に額面が戻ってくることを前提にした資産で、値上がりを狙う株式や投資信託とは性格が違います。同じように債券で運用するとしても、保険という形で持つ場合と、証券会社を通じて債券そのものを持つ場合では、途中でやめたときの扱いや手数料のかかり方、受け取ったお金にかかる税金の考え方が変わってきます。保険は早期に解約すると受け取れる額が抑えられることがあり、債券も満期を待たずに売れば、その時点の価格で売ることになります。また、発行体の信用力によって利息の高さは変わり、格付けが低いほど利息は高くなる代わりに、元本が戻らないリスクも大きくなります。外貨建てであれば為替の影響も残ります。有利な点だけを見比べるのではなく、こうした注意点も同じ表に並べたうえで選ぶことが前提になります。
10.5 ポイント3:具体的な銘柄の例と、購入後に相談できる相手まで見て決める
比べる軸が決まったら、国債や社債といった区分ごとに、満期までの期間、利息の水準、格付けが実際にどうなっているのかを、具体的な銘柄の例で確認します。制度や商品の説明を一般論で聞いているうちは判断がつかず、目の前に選択肢が並んで初めて「これなら続けられそうだ」という感覚が持てるからです。もう一つ確かめておきたいのが、買った後に誰に相談できるのかという点です。購入時の説明だけでなく、金利や為替が動いたときに状況を確認してもらえる担当者がいるかどうかで、長く持ち続けられるかは変わります。具体的な銘柄とサポートの内容まで確かめたうえで、家族と話し合って決めたいと考える方は少なくありません。NISAやiDeCoを使った積立も選択肢のひとつですが、それは順序として、すでにあるお金の置き場所を整えた後に考えても遅くありません。
年金の見込額が思っていたより少ないと分かったときこそ、積立額を増やす前に、すでに持っているお金がどこに置かれているのかを確かめてみてください。これは一つの考え方であり、どの置き場所が合うかは、保有している商品の内容や運用にかけられる期間、家族の状況によって異なります。判断に迷うときは、契約している商品の条件を手元にそろえて、専門家に相談してみるのも選択肢の1つです。
11. まとめにかえて
月15万円という線に届くかどうかは、令和6年度の実績で見ればおよそ半々に分かれます。届いていないと分かったときにまず手が伸びるのは毎月の積立額ですが、先に確かめたいのは、埋めるべき差がいくらで、それを何年かけて用意できるのかという2点でした。差と期間が決まれば、毎月の額はあとから出てきます。
まずは、ねんきんネットや年金事務所でご自身の見込額を1人分の数字として確かめ、目指す水準との差を月あたりで書き出すところから始めてみてください。制度の適用や税・社会保険料の扱いで判断に迷うときは、年金事務所や市区町村の窓口、税務の専門家に確かめながら進めていただければと思います。
