10月は、公的年金の定期支払日がある月です。

会社員や公務員として働いてきた人が老後に受け取る年金は、国民年金に厚生年金が上乗せされる2階建ての形になります。ただし、その合計が毎月いくらになるかは、働き方や加入期間、現役時代の報酬によって開きがあり、思っていた水準に届かないと分かることもあります。

そのときに「足りない分は積立で埋めるしかない」と考えるのは自然な流れです。けれども積立額を先に決めてしまうと、埋めるべき差がいくらなのかを確かめないまま走り出すことになります。ここでは制度の仕組みと受給額の分布をたどったうえで、差を月あたりの積立額に置き換える順序で整理していきます。

神田 翔平
要点を先に申し上げると、毎月の積立額を決めるのは最後の工程です。自分の年金の見込額を確かめ、目指す水準との差を月あたりの金額で出す。その差が見えてはじめて、何年かけて用意するかという話に進めます。順番が逆になると、金額の根拠がないまま積立を続けることになりがちです。

なお、厚生年金と国民年金を合わせた受給額の分布に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント
【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント

1. 公的年金の「2階建て」はどのような組み立てになっているのか

受給額の分布と、私的年金の見直しで押さえたい点は、【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイントにまとめています。

公的年金は、階層のある建物にたとえて説明されることが多い制度です。どの階に入るかは働き方で決まり、その組み合わせが将来の受給額の幅をつくります。

公的年金制度の種類と加入する制度(2階建ての構造)1/1

公的年金制度の種類と加入する制度を2階建てで示した図

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

1.1 1階部分の「国民年金」には誰が入ることになるのか

国内に住む20歳以上60歳未満の人は、全員が国民年金に入る決まりになっています。自営業やフリーランス、学生、勤めに出ていない人は第1号被保険者にあたり、収入の多少にかかわらず同じ額の保険料を納めます。会社員に扶養されている配偶者(年収130万円未満など)は第3号被保険者で、自分で保険料を納める必要はありません。

1.2 2階部分の「厚生年金」に入るのはどんな働き方の人か

厚生年金保険の適用事業所で働く会社員や公務員は、第2号被保険者として厚生年金に入ります。国民年金の上に積み重なる形なので、老後は基礎年金と厚生年金(報酬比例部分)の2段階で受け取ることになります。保険料は給与の額で変わり、会社と本人が半分ずつ出し合う労使折半である点が国民年金と大きく違うところです。

1.3 国民年金と厚生年金は保険料と保障でどこが分かれるのか

両者の違いは、保険料の決まり方と負担の分け方、そして保障が届く範囲の3点に整理できます。

  • 保険料の金額:国民年金は定額(毎年度改定)で第3号は負担なし、厚生年金は給与や賞与の額(標準報酬月額)に応じて変動
  • 保険料の負担:国民年金は全額自己負担、厚生年金は労使折半(会社と半分ずつ負担)
  • 保障の範囲:国民年金は老齢・障害(1,2級)・遺族(子のいる配偶者等)、厚生年金は老齢・障害(1〜3級,手当金)・遺族(範囲が広い)
神田 翔平
専門的な話になるんですが、この2階建てのどこにどれだけ入っていたかを書き出すだけで、積立で埋める必要のある幅はだいぶ絞れます。会社員の期間が長い人は2階部分が積み上がっている一方、自営業や扶養に入っていた期間が長い人は1階中心になります。まずはご自身の加入歴を年単位で並べてみてください。

2. 年金額の改定後、基礎年金と厚生年金の「モデルケース」は月額いくらか

公的年金の額は、物価や賃金の動きに合わせて毎年度見直されます。マクロ経済スライドなどの調整のしくみが働くため、改定は据え置きや小幅な伸びにとどまることもあります。

厚生労働省が示した最新の改定後の金額で、これから受け取り始める新規裁定者のモデルケースは次のとおりです。

  • 国民年金(老齢基礎年金)の満額:月額7万608円(1人分)
  • 厚生年金の夫婦モデルケース:月額23万7279円

この23万7279円は、賞与を含む月額換算で平均標準報酬が約43.9万円の収入を40年間得た夫と、専業主婦の妻という組み合わせで置かれた数字です。2人分の老齢基礎年金が含まれているため、1人あたりの厚生年金の額と読み替えることはできません。

さらに、年金は雑所得として課税の対象になります。振り込まれる前に税金や社会保険料が引かれるため、手元に入る額は表に出ている数字より少なくなります。

神田 翔平
モデルケースの23万7279円を「わが家もこのくらい」と受け取ってしまうと、埋めるべき差を小さく見積もることになります。この数字は夫婦2人分で、しかも40年就業を前提にした置き方です。共働きでも単身でも当てはまり方が変わるので、積立の話に入る前に、自分の見込額を1人分の数字として押さえておきたいところです。

3. 国民年金と厚生年金で「月15万円以上」を受け取る人はどれくらいいるのか

ここからは実際の受給額を見ていきます。厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、国民年金と厚生年金を合わせて月額15万円以上を受け取っている人の割合を確かめます。

3.1 厚生年金の平均月額と受給額ごとの受給権者数はどう散らばっているのか

まず平均です。次の数字は国民年金の部分を含んだ金額で、厚生年金の上乗せ分だけを示したものではありません。

【平均年金月額】

  • 全体 15万289円
  • 男性 16万9967円
  • 女性 11万1413円

※国民年金部分を含む

続いて、受給額ごとに何人いるのかという分布です。

【受給額ごとの受給権者数】

  • ~1万円:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

同じ資料から集計すると、月額15万円以上を受け取っている人は全体の約49.8%にあたります。受給者のおよそ半数がこの水準に届いている一方で、残りの半数は届いていないという読み方になります。

注意したいのは、ここまでの金額がいずれも支給額(額面)だという点です。年金からは所得税・住民税・介護保険料・後期高齢者医療保険料などが引かれるため、実際に振り込まれる額は数千円から1万円以上少なくなるのが一般的です。自分の振込額は、毎年届く「年金振込通知書」か、オンラインの「ねんきんネット」で確かめられます。

そして積立の話につながるのが、平均のなかの開きです。女性の平均11万1413円は、月15万円との差が3万8587円あります。この3万8587円という具体的な幅が出てはじめて、毎月いくら積み立てるかという問いに答えられるようになります。

神田 翔平
平均と分布は、いつもセットで見るようにしています。全体15万289円という平均だけを見ると自分もその近くにいる気がしてきますが、分布を並べると10万円台前半から20万円超まで人数が広く散っていることが分かります。ご相談の場では、この一覧のどの帯に自分が入りそうかを指でたどっていただくと、話が一気に具体的になります。

4. 厚生年金保険料は「標準報酬月額」からどのように決まるのか

2階部分の厚生年金は、納めた保険料の積み上がりが将来の受給額に反映されます。その保険料の土台になるのが標準報酬月額です。

毎月の給与から引かれる厚生年金保険料は、基本給だけで決まるわけではありません。残業代や通勤手当、住宅手当などを合わせた総支給額を、1等級(8万8千円)から32等級(65万円)までの等級表にあてはめて算出します。保険料率は18.3%で固定されており、これを労使で折半します。

4.1 4〜6月の給与で決まる「定時決定」は1年間の何を左右するのか

毎年4月・5月・6月に支払われた給与の平均から、その年9月から翌年8月までの標準報酬月額が決まります。これが定時決定と呼ばれる手続きです。春に残業が集中すると、秋以降に残業が減っても高い保険料が引かれ続けることになります。負担だけを見れば重くなりますが、その分だけ将来の年金や各種手当の計算に使われる報酬も上がるため、片側だけを見て損得を決められる話ではありません。

神田 翔平
積立額を考えるときは、給与から引かれている厚生年金保険料も「老後に向けた積み立て」の一部として並べてみると見通しが立ちます。天引きの分は自分では動かせませんが、いくら入っているかは給与明細で分かります。動かせない部分と自分で決められる部分を分けておくと、無理のない積立額に落ち着きやすくなります。

5. 自分が受け取る年金額は、どの式でおおまかに見積もれるのか

公的年金は1階と2階で計算のしかたがまったく違います。埋めるべき差を出すには、それぞれの式で自分の見込額をつかんでおく必要があります。

5.1 「国民年金」の受給額はどの式で求めるのか

1階部分の計算はごく単純で、満額の年金額 × 納付した月数 ÷ 480ヶ月(40年)という形です。満額は毎年度改定されますが、おおよそ年間84万7300円(月額約7万608円)という水準です。20歳から60歳までの480ヶ月を未納も免除もなく納めきれば、この満額に届きます。

見落としやすいのが、学生納付特例や納付猶予を使ったまま追納していない期間です。受給資格の期間には数えられますが、年金額の計算では納付月数に加わらないため、その分だけ65歳以降の国民年金が薄くなります。一方、正規の保険料免除を受けた期間なら、追納していなくても国庫負担分(全額免除なら2分の1など)が反映されます。

5.2 「厚生年金」の受給額はどの式で求めるのか

2階部分は、現役時代の報酬の高さと加入期間の長さに比例して増える報酬比例のしくみです。基本の式は次のとおりです。

平均標準報酬額 × 5.481 / 1000 × 加入月数

平成15年(2003年)3月以前の加入期間は、賞与を含めない平均標準報酬月額に別の乗率(7.125 / 1000)を掛けて計算し、合算します。ここでいう平均標準報酬額とは、加入していた全期間の月給と賞与の総額を加入月数で割った平均額のことで、上限はありますが、生涯でどれだけ稼いだかがそのまま反映される形になっています。

神田 翔平
実務でご相談を受けていて感じるのは、ねんきん定期便の数字をそのまま将来の受給額だと思っている方が多いことです。50歳未満に届くものは、これまでの加入実績で計算した現時点の額にすぎません。式の形を知っていれば、あと何年働くとどのくらい伸びるかを自分で置き直せます。そこまで出してから、残りを積立でどう埋めるかを考える順序になります。

6. 65歳以降も働くと年金はどうなるのか「在職老齢年金・繰下げ」で確認

老齢厚生年金は原則65歳から受け取れますが、その後も働き続ける人が増えています。働き方と受け取り方の組み合わせで、受給額は動きます。

6.1 働きながら受け取ると年金が減るのはどういう場合か

厚生年金に加入したまま受け取る場合、老齢厚生年金の基本月額と、給与や賞与から算出した総報酬月額相当額の合計が基準額(月額65万円)を超えると、超えた部分の半額が支給停止になります。老齢基礎年金は減額されず、全額が支給されます。

6.2 「繰り下げ受給」で最大84%増えるとき、何を手放すことになるのか

受け取り始めを66歳から75歳まで遅らせると、1ヶ月あたり0.7%ずつ増え、75歳まで待てば最大84%増になります。ただし待っている期間は年金が入らず、配偶者の加給年金も受け取れなくなります。増える率だけでなく、待つ期間の生活費をどう用意するかまで含めて考える必要があります。

神田 翔平
要点を先に申し上げると、月15万円に届かない分を埋める手立ては積立だけではありません。働く期間を延ばして2階部分を積み増す、受け取りを遅らせて率を上げる、この2つも同じ差を埋める選択肢です。3つを並べて比べたうえで、それでも残る分を積立に割り当てる。この順序だと毎月の負担が現実的な額に収まりやすくなります。

7. 転職・退職・住所変更・死亡のとき、年金の手続きは何をどの期限で行うのか

年金にかかわる手続きは自己申告が基本です。届け出を出さないままにすると、未納の期間が生まれたり、受け取れるはずの給付が受け取れなくなったりします。節目ごとに何が求められるかを押さえておきましょう。

  • 転職・退職時:会社員から無職や自営業になる場合は、退職日の翌日から14日以内に国民年金への切り替えを届け出る
  • 住所変更・氏名変更:日本年金機構にマイナンバーが登録されていれば原則として届け出は不要(住民票の情報から反映される)。未登録の場合、海外へ転出する場合、住民票と違う住所を送付先にする場合は別に届け出が必要
  • 死亡時:受給権者が亡くなったときは「年金受給権者死亡届」を提出し、未支給年金や遺族年金の請求を行う
神田 翔平
転職や退職の前後は、積立をいったん止める判断をされる方が多い時期でもあります。切り替えの届け出で手が止まっているうちに、引き落としの口座だけが変わっていないというご相談も受けます。手続きの一覧と積立の引き落とし先を同じ紙に書いておくと、抜けに気づきやすくなります。

8. 「私的年金」の見直しで何が変わるのか、改正のポイントを順にたどる

公的年金だけでは足りない部分をどう補うか。国は自助努力を支える私的年金や3階部分の制度を広げる方向で見直しを進めており、次のような内容が実施・検討されています。

8.1 iDeCoの加入できる年齢の上限はいつから広がるのか

個人型確定拠出年金(iDeCo)は掛金が全額所得控除になる点が大きな特徴です。加入できる年齢の上限が原則65歳未満から70歳未満へ引き上げられ、2026年12月に施行されます。積立にあてられる期間が延びる方向の見直しです。

8.2 企業型DCの拠出限度額はどのように広がるのか

企業型確定拠出年金(企業型DC)についても、掛金の拠出限度額を引き上げる方向で制度の拡充が図られており、2026年4月より実施されます。勤め先が導入している場合、自分で決められる積立の枠が変わる可能性があります。

8.3 企業年金の運用は加入者にどこまで見えるようになるのか

厚生年金基金などに代わって広がってきた企業年金では、加入者が自分の運用状況やリターンをつかめるよう、運用成績の見える化を義務づける方針が示されています。自分の3階部分が今どうなっているかを確かめる手がかりが増えることになります。

8.4 公的年金と私的年金を、どの順番で組み合わせて準備するのか

公的年金の制度そのものは続く見通しですが、マクロ経済スライドによる調整で実質的な給付水準は目減りしていく可能性があります。だからこそNISAやiDeCo、企業年金を組み合わせて備える意味がありますが、順序としては公的年金の見込額をつかみ、差を数字にしたうえで私的年金の枠を割り当てる形が組みやすくなります。

神田 翔平
枠が広がると聞くと、まず「いくらまで入れられるのか」に目が向きます。ただ、枠の大きさは埋めるべき差の大きさとは別の話です。差が月3万円台なら、枠を使い切る必要はありません。使える枠のうち、どこまで自分の差を埋めるのに割り当てるかという順で考えると、無理な金額になりにくくなります。

9. 厚生年金について寄せられる質問には、どう答えられるのか

9.1 厚生年金とは、ひとことで言うとどういう制度なのか

会社員や公務員が加入する公的年金です。基礎年金の上に乗せて給付され、保険料は会社と本人が半分ずつ負担します。

9.2 厚生年金保険料は、どのような手順で計算されるのか

残業代や手当を含めた毎月の給与を等級表にあてはめて標準報酬月額を出し、そこに18.3%の保険料率を掛けて、会社と本人で半分ずつ負担します。賞与からも同じ考え方で引かれます。

9.3 パートで扶養を外れて厚生年金に入ると、何がどう変わるのか

将来受け取る年金額は増え、傷病手当金などの保障も広がります。一方で毎月の給与から社会保険料が引かれるため、一時的に手取りが減る「年収の壁(106万円・130万円など)」の問題が出てきます。目先の手取りと、将来の年金や保障の両方を並べて判断することになります。

神田 翔平
扶養を外れるかどうかで迷っている方には、手取りの減り方と、2階部分がどれだけ積み上がるかを同じ表に並べていただいています。積立を増やすより、加入期間を延ばすほうが差を埋める効率がよい場合もあります。どちらが合うかはご家庭の事情で変わるので、両方の数字を出してから決めていただくのが確実です。

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