「住宅型有料老人ホーム」は、介護付き有料老人ホームより費用が安いというイメージを持たれがちです。しかし、実際にどう費用が違うのか、正確に説明できる人は多くありません。「安いはずなのに、思ったより費用がかさんだ」という声が出やすいのも、この費用構造の違いが理解されていないことが原因の1つです。
この記事では、介護費用は総額いくらかかるかを試算した記事より一部を引用・参照しつつ、住宅型有料老人ホームの費用の仕組みと、介護付きとの違いを、公的資料にもとづき編集部が整理します。
1. 住宅型は「外部の介護サービスと個別契約」する仕組み
まず、住宅型有料老人ホームがどのような施設なのかを確認します。
1.1 介護付きとの最大の違いは「誰が介護サービスを提供するか」
有料老人ホームは、提供するサービスの種類や方法によって「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3類型に分かれます。介護付きは、施設が提供する「特定施設入居者生活介護」を利用しながら生活する仕組みで、介護サービスは施設のスタッフが直接提供します。
一方、住宅型は生活支援等のサービスが付いた居住施設で、介護が必要になった場合は、入居者自身の選択により、地域の訪問介護等の外部の介護サービスと個別に契約して利用します。
つまり、住宅型では、施設の運営者と、実際に介護サービスを提供する事業者が別々になるのが基本的な仕組みです。
1.2 【有料老人ホームの3類型】
- 介護付有料老人ホーム:施設が提供する特定施設入居者生活介護を利用
- 住宅型有料老人ホーム:入居者が地域の訪問介護等と個別に契約
- 健康型有料老人ホーム:介護が必要になったら契約解除・退去
2. 【編集者の視点】
住宅型は、必ずしも要介護状態でなくても入居できる施設が多く、自立している人や要支援程度の人が「将来に備えて」入居するケースもあります。介護度が低いうちは介護サービスの利用が少ないため費用も抑えられますが、要介護度が上がるにつれて外部サービスの利用が増え、費用も比例して上がっていく点は事前に理解しておく必要があります。
3. 編集部試算:要介護度が上がると、住宅型の費用はどう変わるか
次に、要介護度によって住宅型の費用がどう変化するのかを試算します。
3.1 介護サービス費は「区分支給限度基準額」の範囲内で変動する
住宅型で利用する訪問介護等の介護サービス費は、要介護度ごとに定められた「区分支給限度基準額」の範囲内であれば、自己負担は1〜3割に抑えられます。この限度額は、要支援1で5032単位、要介護1で16765単位、要介護3で27048単位、要介護5で36217単位です(1単位はサービスの種類ごとに10〜10.7円程度)。
要介護度が上がるほど、利用できる(そして実際に必要になりやすい)サービス量の上限も大きくなるため、1割負担でも自己負担額の目安は要介護1の月額1万6765円台から要介護5の月額3万6217円台まで、幅広く変動します。
これに、住宅型の居住費・食費・管理費といった固定費部分が上乗せされます。固定費部分は要介護度による変動が小さいため、総額としては「固定費+要介護度に応じて変動する介護サービス費」という2階建ての構造になります。
3.2 【要介護度別・介護サービス自己負担額の目安(1割)】
- 要介護1:16765単位 → 自己負担約1万6765円台/月
- 要介護3:27048単位 → 自己負担約2万7048円台/月
- 要介護5:36217単位 → 自己負担約3万6217円台/月
4. 【編集者の視点】
実務上のポイントは、住宅型の「安さ」は、あくまで介護サービスをあまり使わない段階での話だという点です。要介護度が上がり、介護サービスの利用が増えていくと、限度額の範囲内であっても自己負担は着実に増えていきます。入居時の費用だけでなく、将来要介護度が上がった場合の費用シミュレーションまで確認しておくことをおすすめします。
※本記事は、編集部が奈良市・堺市が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。
5. 要介護度が上がったとき、住み替えなしで対応できるかを確認する
住宅型を検討する際は、将来の要介護度の変化にどこまで対応できるかも重要な確認ポイントです。
5.1 施設によって「対応できる要介護度の上限」が異なる
住宅型有料老人ホームは、施設によって「対応できる要介護度の範囲」が異なります。軽度の要介護状態までしか対応していない施設もあれば、重度になっても住み続けられるよう、24時間対応の訪問介護・訪問看護事業者と提携している施設もあります。この対応範囲を確認せずに入居すると、要介護度が上がった際に住み替えを迫られることになりかねません。
入居を検討する段階で、「要介護度がどこまで上がっても住み続けられるのか」「重度になった場合、提携事業者はどこまで対応してくれるのか」を、施設の担当者に具体的に確認しておくことをおすすめします。
6. 複数の訪問介護事業者を組み合わせて使うこともできる
最後に、住宅型ならではのメリットについて確認します。
6.1 施設に縛られず、事業者を選べる自由度がある
住宅型では、訪問介護・訪問看護・デイサービスなど、複数の外部事業者を自由に組み合わせて利用できます。施設が指定する1つの事業者にサービスを限定される介護付きとは異なり、住宅型では「この事業所のリハビリが評判が良いから」といった理由で、サービスごとに事業者を選べる自由度があります。
一方で、複数の事業者とのやり取りが発生するため、ケアマネジャーとの連携がより重要になります。ケアプランの調整を丁寧に行ってくれる、信頼できるケアマネジャーを見つけることが、住宅型を選ぶ場合の実務上のポイントです。
事業者ごとに得意分野やスタッフの相性も異なるため、入居後に「思っていたサービスと違った」と感じた場合は、ケアマネジャーに相談したうえで、事業者の変更を検討できる点も住宅型ならではの柔軟性です。契約は施設単位ではなく事業者ごとに結ぶため、他のサービスへの影響を心配せずに見直しやすいというメリットもあります。
7. サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)との違いにも注意する
住宅型有料老人ホームとよく混同される施設に、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)があります。
7.1 根拠法・提供サービスの範囲が異なる
住宅型有料老人ホームは老人福祉法に基づき都道府県等への届出で設置される施設であるのに対し、サ高住は「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づき都道府県等への登録が必要なバリアフリー対応の賃貸住宅です。サ高住は状況把握(安否確認)サービスと生活相談サービスを、日中常駐で365日提供することが基準として定められています。
食事の提供や清掃・洗濯といった生活支援サービスは、サ高住・住宅型有料老人ホームのどちらでも、施設によって任意で追加されるオプションという位置づけです。
名称が似ているため混同されがちですが、根拠法と登録・届出の枠組みが異なる別の制度だという点をまず押さえたうえで、契約時に「どこまでのサービスが月額費用に含まれているか」を個別に確認することをおすすめします。
8. 自己負担が高額になったら「高額介護サービス費」で払い戻される
要介護度が上がって介護サービス費の自己負担が増えても、際限なく負担が膨らみ続けるわけではありません。最後に、負担を抑える仕組みを確認します。
8.1 1か月の自己負担には、所得に応じた上限額が設定されている
公的な制度として、1か月に支払った介護サービスの自己負担額(1〜3割負担分)が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合、その超えた分が「高額介護サービス費」として払い戻される仕組みがあります。名古屋市の公表資料によると、世帯全員が市町村民税非課税の場合は月額2万4600円、課税所得380万円未満の一般区分では月額4万4400円が上限とされています。
この記事で試算した要介護5の自己負担額(月3万6217円台)であれば、一般区分(4万4400円)の範囲内に収まりますが、課税所得380万円以上の世帯や、複数の要介護者がいる世帯で自己負担を合算する場合は、上限額に近づく、あるいは超えるケースも考えられます。超過分は申請すれば払い戻される制度である点は、あらかじめ知っておく価値があります。
特に、夫婦や親子など複数の要介護者が同じ世帯にいる場合は、それぞれの自己負担を合算できるため、上限額に到達しやすくなる点も覚えておくとよいでしょう。
8.2 【高額介護サービス費・自己負担の上限額(月額)】
- 市町村民税非課税世帯:2万4600円
- 課税世帯(課税所得380万円未満):4万4400円
なお、高額介護サービス費の対象になるのは、区分支給限度基準額の範囲内で利用した介護サービスの自己負担分(1〜3割)です。限度額を超えて全額自己負担で利用した部分や、住宅型の居住費・食費・管理費といった介護保険の対象外費用は、この払い戻しの対象には含まれません。
9. 【編集者の視点】
実務上、高額介護サービス費は原則として申請しないと払い戻されません。一度申請すれば、その後は上限を超えた月に自動的に振り込まれる自治体が多いですが、初回の申請を忘れると、さかのぼって受け取れる期間にも限りがあります。要介護度が上がったタイミングで、一度自己負担の見込み額を確認し、上限額に近づきそうであれば早めに市区町村の窓口で手続き方法を確認しておくことをおすすめします。
10. まとめ
- 住宅型有料老人ホームは、介護サービスを外部の訪問介護事業者等と個別に契約して利用する仕組みです。
- 介護付きは介護サービス費が定額制なのに対し、住宅型は利用した分だけ費用が積み上がります。
- 住宅型でも、介護サービスの自己負担は区分支給限度基準額の範囲内であれば1〜3割に抑えられます。
- 要介護度が上がるほど、住宅型の介護サービス費部分は増えていく点に注意が必要です。
住宅型有料老人ホームは、入居時点の費用だけでなく、将来要介護度が上がった場合にどこまで費用が増えるのかまで見据えて検討することが重要です。介護付きとどちらが向いているかは、現在の心身の状態と、将来の見通しの両方から判断する必要があります。
要介護度別の費用試算、住み替えなしで対応できる範囲、サ高住との違い、そして高額介護サービス費による負担軽減策まで、あわせて把握しておくことで、入居後に「思っていたより費用が増えた」という事態を避けやすくなります。
具体的な費用やサービス内容については、各施設への直接の問い合わせや、地域包括支援センターへの相談をおすすめします。
11. よくある質問
11.1 Q. 住宅型有料老人ホームと介護付きの最大の違いは何ですか。
A. 介護サービスを誰が提供するかです。介護付きは施設スタッフが直接提供し、住宅型は入居者が外部の訪問介護事業者等と個別に契約します。
11.2 Q. 住宅型は介護付きより安いですか。
A. 一概には言えません。介護サービスの利用が少ない段階では安く済むことが多いですが、要介護度が上がり利用が増えると、自己負担も比例して増えていきます。
11.3 Q. 住宅型で介護サービスを使うと、自己負担はいくらになりますか。
A. 要介護度ごとの区分支給限度基準額の範囲内であれば、自己負担は1〜3割です。限度額を超えた分は全額自己負担になります。
11.4 Q. 住宅型では自立している人でも入居できますか。
A. 施設によりますが、自立している人や要支援程度の人が入居できる住宅型有料老人ホームも多くあります。
11.5 Q. 住宅型で複数の事業者を組み合わせて利用できますか。
A. できます。訪問介護・訪問看護・デイサービスなど、サービスごとに異なる事業者を自由に選んで契約できるのが住宅型の特徴です。
11.6 Q. 要介護度が上がったら、介護付きへの住み替えも検討すべきですか。
A. 検討の余地があります。要介護度が上がるほど住宅型の介護サービス費部分の負担が増えるため、施設によっては介護付きへの住み替えの方が総額を抑えられる場合もあります。
11.7 Q. 介護サービス費の自己負担が高額になった場合、何か軽減策はありますか。
A. 「高額介護サービス費」制度により、1か月の自己負担額が所得区分ごとの上限額(非課税世帯で2万4600円、一般区分で4万4400円など)を超えた場合、超えた分が申請により払い戻されます。ただし居住費・食費などの介護保険対象外費用は対象になりません。
11.8 Q. 高額介護サービス費はどこに申請すればよいですか。
A. お住まいの市区町村の介護保険担当窓口に申請します。多くの自治体では、初回申請後は上限額を超えた月に自動的に払い戻される仕組みになっています。申請手続きの詳細は、担当のケアマネジャーや窓口に確認しておくと安心です。
参考資料
齊藤 慧
