5. 2027年3月期1Qは大幅増益。3期続いた減益からの折り返しになるか
2027年3月期1Qの売上収益は4兆3,476億円だった。前年同期の3兆2,999億円から3割を超える増収である。
当期利益(親会社の所有者に帰属)は2,941億円。前年同期の1,916億円から5割を超えて伸びた。通期予想は9,200億円で前期比10.3%の増益、1Q時点の進捗率は32.0%となる。
この増益予想には意味がある。当期利益は2023年3月期の1兆1,306億円を頂点に、1兆637億円、9,003億円、8,340億円と3期続けて減ってきた。予想どおりなら、4期目に折り返すことになる。
1Qのセグメントを見ると、出資からの利益の乗り方がはっきり出る。金属資源は売上収益6,335億円に対して売上総利益611億円、セグメント利益612億円。粗利とほぼ同額の利益が残っている。
次世代・機能推進はさらに極端で、売上収益988億円、売上総利益536億円に対してセグメント利益は652億円だ。粗利を上回る利益が立つのは、持分法や投資評価からの取り込みが乗っているためと考えられる。
売上規模で最大のエネルギーは売上収益1兆1,021億円・セグメント利益344億円、化学品は9,559億円・266億円。取扱高が大きい事業ほど利益率が薄い、という商社の基本形がここに出ている。
6. ROE18.9%から10.2%へ。膨らむ株主資本と資本配分の重さ
資本効率の減速を、資金の流れの側から見ておきたい。
会社は2026年3月期の基礎営業キャッシュ・フローを約9,790億円としている。ここに資産リサイクルで得た約3,430億円を足すと、手元に入ったのは約1兆3,220億円。
これに対し投融資は約1兆3,800億円で、金属資源のRhodes Ridge鉄鉱石事業や石油・ガス生産事業が中心だという。株主還元の約5,300億円を加味すると、株主還元後のキャッシュ・フローは約5,880億円の赤字となった。
足りない分は負債で埋めている。有利子負債合計は5兆1,229億円で前期末から8,130億円増え、現預金を差し引いたネット有利子負債は4兆1,390億円。会社が示すネットDER(現預金差引後の有利子負債比率)は0.44倍から0.47倍へ上がった。
還元自体は手厚い。2026年3月期の配当は年115円で5期連続の増配となり、配当性向は39.5%。自己株式の取得に2,000億円、配当の支払いに3,018億円を投じている。2027年3月期は年140円の配当を予想しており、前期から25円の引き上げだ。
ここに面白い緊張関係がある。ROEの絶対水準は18.89%から10.22%へ落ちたが、卸売業の中央値7.87%と比べれば依然として上位側にいる。自社の過去と比べるか、業種の分布と比べるかで、評価がきれいに反転する局面だ。
資源の権益に1兆円規模を投じ、還元を5,300億円積み、その差をレバレッジで埋める。ネットDER0.47倍という水準は、財務の余力から見ればまだ抑制的だろう。問題は、いま積んでいる出資と権益が、何年後にどれだけの持分法投資損益として戻ってくるかである。そこを見極めるまで、ROEの数字だけでこの会社の巧拙を採点するのは早い。
7. 筆者コメント
この会社の姿が変わろうとしている局面だと感じている。
売上構成の首位は生活産業、利益構成の首位は金属資源。そして報告セグメントにはウェルネスを冠した区分が新しく立った。区分の組み替えは、経営が自分たちの事業をどう束ねて見せたいかの表明でもある。
資源で稼いだキャッシュを、資源にも、非資源にも配り直す。その配り直しの結果が持分法の残高として積み上がり、数年遅れで利益として戻ってくる。だから商社の決算は、その期の数字だけを見ても位置がわからない。
投資家がふだん目にするのは、鉄鉱石やLNGの価格と株価の連動だ。それは事実として正しい。ただ、この会社の貸借対照表の4分の1が出資の束であることを知っていると、価格連動の話がやや相対化される。
決算資料を開くとき、セグメント別の売上ではなく、セグメント別の持分法適用会社への投資残高を先に見てほしい。この会社が次にどこで稼ごうとしているかは、そちらのほうに先に現れる。
参考資料
8.1 免責事項
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石津 大希