4. 1Qの営業損失から上期の黒字へ、何が変わったのか

足元の四半期に目を移す。2026年3月期1Qは売上収益6,380億円に対し、264億円の営業損失を計上した。当期損失は93億円、1株当たり四半期損失は8円19銭である。

その1Qを含む上期は、売上収益1兆3,023億円に対して営業利益211億円、当期利益311億円となった。1株当たり中間利益は27円21銭だ。四半期単位で見れば、赤字から黒字へ振れたことになる。

1Qの営業損失264億円から上期の営業利益211億円へ。差を取れば、2Q単体では475億円の営業利益が出たことになる。四半期の累計値から素直に引き算すればそう出る。

興味深いのは、上期の当期利益311億円が営業利益211億円を上回っている点だ。営業段階の外側にある損益が、最終利益を押し上げている。IFRSでは金融収益や持分法による投資利益がここに入る。

本業の外で稼いだ利益は、本業の利益と同じ重みで評価するわけにはいかない。継続性が違うからだ。この上期の姿は、最終利益の見え方が実態より良く出ている局面だと読み取れる。

前の期の通期実績も並べておく。2025年3月期は売上収益2兆6,078億円、営業利益2,381億円、当期利益1,643億円、1株当たり当期利益143円06銭。なおこの通期の数字は、訂正短信として開示されたものである。

通期で2,381億円の営業利益を出した会社が、次の期の1Qで264億円の営業損失を出した。この落差の大きさが、株価の振れの背景にある可能性は高いだろう。

5. 稼いだ現金はどこへ向かったのか

収益性の話を、現金の動きで裏から確かめる。5期のキャッシュフローの並びが分かりやすい。

営業キャッシュフローは2,191億円、949億円、1,434億円、3,207億円、2,844億円。投資キャッシュフローは▲1,005億円、▲1,125億円、▲1,649億円、▲1,535億円、▲1,472億円だ。

2024年3月期以降は、営業キャッシュフローが投資キャッシュフローを大きく上回っている。稼ぎのなかから投資をまかない、それでも余りが出る状態だ。

余った現金は財務キャッシュフローのマイナスに回っている。▲1,361億円、▲643億円、▲192億円、▲1,815億円、▲801億円という並びで、返済と株主への還元に向かった形である。投資の山を越えた会社の姿がここに出ている。

設備投資と減価償却費の関係も、その見方を支える。2025年3月期の設備投資は1,207億円で、減価償却費1,139億円とほぼ釣り合った。既存設備の更新に近い水準まで投資が落ち着いてきたということだ。

財務の側を見ると、2025年3月期末の有利子負債は流動と非流動を合わせて4,721億円、現金は2,462億円。自己資本比率は51.8%である。

負債を残しながら自己資本も厚くしてきた5期だった。負債の活用そのものは資本効率の観点で理にかなうが、この会社の場合、のれんという形で自己資本の側も同時に膨らんだ。分子と分母の両方が増えれば、ROEの上がり方は鈍くなる。

6. セグメントの利益率と、そこに紐づく資産の重さ

買った事業がどれだけ稼いでいるかは、セグメント別の姿に出る。2025年3月期の内訳を見ておきたい。

利益率が最も高いのはグループ会社事業で、売上6,182億円、構成比23.7%に対して営業利益875億円、利益率14.17%。次がモーション・エネルギー事業で、売上5,739億円、構成比22.0%、営業利益703億円、利益率12.25%。売上の伸びは+24.8%と最も大きかった。

精密小型モータ・ソリューション事業は売上3,912億円、営業利益411億円で利益率10.51%。営業利益は前期比+58.5%と伸びた。家電・商業・産業用モータ事業は売上4,622億円、営業利益406億円で利益率8.79%だが、営業利益は前期比▲4.7%と後退している。

問題は車載モータ・電子制御事業だ。売上3,486億円で構成比13.4%を占めながら、30億円の営業損失を計上している。前期比では赤字幅が縮小したものの、営業段階での黒字にはまだ届いていない。

機械事業本部も売上2,133億円、営業利益178億円で利益率8.35%と水準は保っているが、営業利益は前期比▲37.1%と大きく落ちた。

売上の1割超を占める事業が営業段階で赤字のまま、全体の営業利益率は9.1%まで戻ってきた。ほかの事業がその穴を埋めているという構図だ。

ここで先ほどのれんの話に戻る。買収で積み上げた資産は、それに対応する事業が稼げるかどうかで意味が変わる。営業段階の赤字が続く事業に大きな資産が紐づいていれば、減損の可能性は消えない。株価が帳簿上の純資産の1.7倍という水準で止まっているのは、市場がそこを見ているからだとも読める。

7. 筆者コメント

過去5期の営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを並べると、この会社が投資の山を越えたことがはっきり見えてくる。

現金を吐き出す局面から、稼いで返す局面へ。財務の姿としては健全な方向への移動だ。

ただ、山を越えた会社に次に問われるのは、買ってきた事業を稼がせられるかどうかである。投資フェーズには「まだ育っていない」という言い訳が効くが、回収フェーズにはそれがない。

ここで思うのは、この会社の評価が「規模」ではなく「選別」の局面に入ったのではないかということだ。伸ばす事業と畳む事業を決める作業は、買い足す作業よりずっと難しい。買収の巧拙は数字に出るまで時間がかかるが、選別の巧拙は次の1年で見える。

決算を追うときは、セグメントの利益率だけでなく、その事業にどれだけの資産が張り付いているかにも目を向けることをおすすめしたい。同じ赤字でも、軽い事業の赤字と重い事業の赤字は、まったく別の話である。

参考資料

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石津 大希