「老老介護」という言葉には、「年々増え続けている問題」というイメージを持つ人が多いはずです。実際、その印象はおおむね正しいのですが、直近の調査では少し意外な動きが出ています。
2026年7月に公表された厚生労働省の最新調査によると、老老介護の代表的な指標である「65歳以上同士」の割合は、実は前回調査より下がっています。ところが、「75歳以上同士」の割合は逆に上がっているのです。
この記事では、この一次資料の数字をもとに、老老介護の「今」と、負担を減らすための具体的な相談先を整理します。
1. 老老介護とは?「65歳以上同士」の介護を指す言葉
老老介護とは、在宅で介護をしている人(主な介護者)と、介護を受けている人(要介護者等)が、ともに65歳以上である状態を指す言葉です。夫婦間だけでなく、高齢の子が高齢の親を介護しているケースも含まれます。
1.1 似た言葉「認認介護」との違い
老老介護としばしば並べて語られる言葉に「認認介護」があります。これは、介護する人・される人の双方、またはどちらかが認知症を抱えている状態を指し、年齢だけで区分される老老介護とは定義が異なります。両者は重なり合うこともありますが、別の概念として整理しておくことが必要です。
老老介護の状態にある世帯が、時間の経過とともに認認介護の状態へ移行していくケースもあります。年齢による負担に加えて、認知機能の変化にも対応しなければならなくなる分、支援を求める必要性はより高まります。
1.2 厚生労働省の調査でどう定義・集計されているか
老老介護の実態は、厚生労働省が実施する「国民生活基礎調査」の中で、「要介護者等」と「同居の主な介護者」の年齢の組み合わせとして集計されています。この調査は3年に一度、大規模な形で行われ、直近では2025(令和7)年6月に実施されました。
2. 【令和7年最新】65歳以上同士は低下、75歳以上同士は上昇という逆転
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」によると、「要介護者等」と「同居の主な介護者」の年齢の組み合わせのうち、65歳以上同士の割合は61.9%でした。前回の2022(令和4)年調査の63.5%と比べると、1.6ポイントの低下です。
2.1 65歳以上同士は低下、75歳以上同士は上昇
一方で、75歳以上同士の割合を見ると、2022年の35.7%から2025年は37.1%へと、1.4ポイント上昇しています。60歳以上同士の割合も77.1%から79.0%へと上昇しました。65歳以上同士だけが下がり、60歳以上同士・75歳以上同士は上がるという、一見すると矛盾した動きになっているのです。
この動きは、老老介護そのものが減っているのではなく、その中身がより高齢化していることを示していると考えられます。介護する側・される側の年齢がともに底上げされ、「65歳以上」という比較的広いくくりでは横ばい・微減に見えても、「75歳以上」という、より高齢な層での組み合わせが増えているというわけです。
2.2 「要介護者等」と「同居の主な介護者」の年齢組み合わせの推移
- 60歳以上同士:2022年77.1%→2025年79.0%(1.9ポイント上昇)
- 65歳以上同士:2022年63.5%→2025年61.9%(1.6ポイント低下)
- 75歳以上同士:2022年35.7%→2025年37.1%(1.4ポイント上昇)
2.3 長期で見れば上昇基調に変わりはない
ただし、2001(平成13)年時点の65歳以上同士の割合は40.6%だったことを踏まえると、20年以上の長い期間で見れば、老老介護は一貫して増加してきたと言えます。直近3年間の1.6ポイントの低下だけを見て「老老介護は解消に向かっている」と判断するのは早計です。
3. 【編集者の視点】
数字の上下だけを見ると「老老介護は改善した」と受け取ってしまいそうになりますが、75歳以上同士の割合が上昇している事実を合わせて見ると、印象はだいぶ変わります。
介護をする側もされる側も、より高齢な組み合わせへとシフトしている、という捉え方のほうが実態に近いと言えます。
4. 主な介護者は「配偶者」、終日介護の負担も配偶者に偏る
老老介護を考えるうえで見落とせないのが、「実際に誰が介護をしているのか」という視点です。厚生労働省の同じ調査から、同居の主な介護者の続柄別の内訳を見てみます。
4.1 同居の主な介護者は配偶者が最多
「要介護者等」から見た同居の主な介護者の続柄は、配偶者が22.5%で最も多く、次いで子が18.2%、子の配偶者が4.2%、その他の親族が1.1%、父母が0.1%となっています。同居・別居を合わせた「主な介護者」全体で見ると、女性が63.5%(同居)・66.9%(別居)を占め、いずれも女性の方が多くなっています。
4.2 同居の主な介護者の続柄別構成割合
- 配偶者:22.5%で最多
- 子:18.2%
- 子の配偶者:4.2%
- その他の親族:1.1%
- 父母:0.1%
4.3 「ほとんど終日」介護の6割超が配偶者
介護時間が「ほとんど終日」にのぼる主な介護者の続柄を見ると、配偶者が64.6%と突出しています。次いで子が28.9%、子の配偶者が4.9%、その他の親族が1.6%です。同居の主な介護者全体で見た配偶者の割合(22.5%)と比べても、終日介護になるほど配偶者に負担が集中していく傾向がうかがえます。
老老介護の当事者である配偶者自身も高齢者であることを踏まえると、この「配偶者への集中」は、老老介護という言葉が示す以上に切実な負担構造だと言えるでしょう。
5. 【編集者の視点】
介護される側も高齢者、介護する側も高齢者、そしてその介護者は多くの場合、要介護者ともっとも近い距離にいる配偶者です。
この構造そのものが、老老介護が「共倒れ」のリスクと結び付けて語られる理由になっています。
6. 老老介護が招くリスク:認知症の見落としと「共倒れ」
配偶者への負担の偏りを踏まえたうえで、老老介護という状況そのものが抱えるリスクを整理しておきます。介護する側もされる側も高齢者であることが、他の世代の介護とは異なる特有の危うさを生んでいます。
6.1 介護が必要になる主な原因は「認知症」
厚生労働省の同じ調査によると、要介護者において介護が必要になった主な原因の第1位は認知症で23.6%、次いで骨折・転倒が14.8%となっています。要支援者では「高齢による衰弱」が17.7%で最多です。
老老介護の場合、介護する側も高齢者であるため、要介護者の認知機能の変化や体調の異変に気づきにくくなることがあります。介護者自身の判断力・体力にも限界があるため、異変への対応が遅れがちになる点は、若い世代が介護する場合との大きな違いです。
6.2 介護者自身の心身が限界を迎える「共倒れ」
介護者自身も高齢であることから、介護を続けるうちに介護者自身の心身の健康が損なわれ、共倒れの状態に陥るリスクが指摘されています。特に「ほとんど終日」介護にあたっている配偶者は、自分の通院や休養の時間を確保しづらくなる傾向があります。
7. 背景にある世帯構造の変化:「単独世帯」の急増と「三世代世帯」の消失
老老介護がここまで一般化した背景には、要介護者のいる世帯そのものの構造変化があります。厚生労働省の同じ調査は、この点も長期のデータで示しています。
7.1 単独世帯は15.7%→33.2%、三世代世帯は32.5%→9.0%
要介護者等のいる世帯を世帯構造別に見ると、2001(平成13)年時点では「単独世帯」が15.7%、「三世代世帯」が32.5%でした。それが2025(令和7)年には、単独世帯が33.2%まで一貫して上昇し、三世代世帯は9.0%まで一貫して低下しています。
かつては同居する家族の中に介護の担い手が複数いるケースが主流でしたが、現在では要介護者本人が一人で暮らしている、あるいは高齢の配偶者と2人だけで暮らしているケースが大きく増えています。老老介護が「配偶者に集中しやすい」背景には、そもそも頼れる同居家族の数自体が減っているという、世帯構造の変化があります。
- 単独世帯:2001年15.7%→2025年33.2%(一貫して上昇)
- 核家族世帯:2001年29.3%→2025年40.2%
- 三世代世帯:2001年32.5%→2025年9.0%(一貫して低下)
7.2 頼れる同居家族が減るほど、公的サービスの役割が大きくなる
三世代世帯が主流だった時代であれば、老親の介護を子世帯・孫世代を含む複数人で分担できる余地がありました。ところが現在は、要介護者等のいる世帯の3世帯に1世帯が単独世帯です。老老介護の当事者となる夫婦のみの世帯を含めれば、家族内で介護を分担できる人数自体が、構造的に少なくなっていると言えます。
この変化を踏まえると、家族内の分担だけに頼るのではなく、地域包括支援センターや介護保険サービスといった外部の支援を、早い段階から前提として組み込んでおく必要性が高まっていることが分かります。
特に夫婦のみの世帯で老老介護が始まった場合、もう一方の配偶者以外に日常的な助けを求められる同居家族がいないケースが少なくありません。子世帯が近くに住んでいない、あるいは疎遠であるといった事情が重なると、介護の負担がそのまま配偶者一人に集中しやすくなります。
8. 負担を減らす防衛策:地域包括支援センターと介護サービスの使い分け
ここまで見てきた「配偶者への負担集中」「共倒れのリスク」「頼れる同居家族の減少」を踏まえ、具体的にどこへ相談し、どのサービスを組み合わせればよいかを整理します。
8.1 まず地域包括支援センターに相談する
老老介護の負担を一人・一世帯だけで抱え込まないためには、公的な相談窓口を早い段階で使うことが基本になります。市区町村が設置する地域包括支援センターは、介護・医療・福祉に関する相談をワンストップで受け付ける窓口で、要介護認定を受けていない段階でも相談可能です。
8.2 レスパイトケアで介護者を休ませる
介護保険サービスの中には、デイサービス(通所介護)やショートステイ(短期入所生活介護)のように、介護者が一時的に介護から離れて休養する「レスパイトケア」の役割を果たすものがあります。「ほとんど終日」介護をしている配偶者ほど、こうしたサービスを定期的に組み込むことで、共倒れのリスクを下げることができます。
どのサービスをどのくらいの頻度で使うべきかは、要介護度や家庭の状況によって異なります。まずはケアマネジャーに相談し、ケアプランの中に休養の時間を組み込んでもらうところから始めるとよいでしょう。
※本記事は、編集部が厚生労働省が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。
9. まとめ
- 老老介護とは、介護する人・される人がともに65歳以上である状態を指します
- 2025年調査では「65歳以上同士」は61.9%に低下した一方、「75歳以上同士」は37.1%に上昇しました
- 同居の主な介護者は配偶者が22.5%で最多、終日介護に限ると64.6%を配偶者が占めています
老老介護は「増え続けている」という単純な話ではなく、より高齢な組み合わせへとその中身が変化しているのが実態です。介護保険料の仕組みについては、介護保険料は40歳から天引き開始。自己負担割合の基本もあわせてご確認ください。
まずは地域包括支援センターやケアマネジャーといった相談先を早めに確保し、介護する側の負担が一人に集中しないよう、公的サービスを計画的に組み込んでいくことが、老老介護と向き合ううえでの現実的な出発点になります。
10. よくある質問
10.1 Q. 老老介護とはどんな状態を指しますか。
A. 在宅で介護をしている人(主な介護者)と、介護を受けている人(要介護者等)が、ともに65歳以上である状態を指します。
10.2 Q. 老老介護の割合はどのくらいですか。
A. 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」によると、65歳以上同士の割合は61.9%、75歳以上同士の割合は37.1%です。
10.3 Q. 老老介護は増えているのですか、減っているのですか。
A. 65歳以上同士の割合は2022年の63.5%から2025年は61.9%へとやや低下しましたが、75歳以上同士の割合は35.7%から37.1%へと上昇しています。長期(2001年以降)で見れば増加基調です。
10.4 Q. 認認介護とは何が違いますか。
A. 老老介護は介護者・要介護者の年齢による区分ですが、認認介護は介護者・要介護者のいずれか、または双方が認知症を抱えている状態を指す、別の概念です。
10.5 Q. 老老介護では誰が主な介護者になっていますか。
A. 同居の主な介護者は配偶者が22.5%で最も多く、次いで子が18.2%です。介護時間が「ほとんど終日」になる主な介護者に限ると、配偶者が64.6%を占めています。
10.6 Q. 老老介護で介護が必要になった主な原因は何ですか。
A. 要介護者では「認知症」が23.6%で最多、要支援者では「高齢による衰弱」が17.7%で最多です。
10.7 Q. 老老介護の負担を減らすにはどこに相談すればよいですか。
A. 市区町村が設置する地域包括支援センターが、介護・医療・福祉に関する相談をワンストップで受け付けています。要介護認定前でも相談できます。
10.8 Q. 介護者が休むための具体的なサービスはありますか。
A. デイサービス(通所介護)やショートステイ(短期入所生活介護)など、介護者が一時的に介護から離れて休養する「レスパイトケア」の役割を果たすサービスがあります。ケアマネジャーに相談し、ケアプランに組み込んでもらうことができます。
参考資料
- 厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況』(厚生労働省)(2026年7月公表)
齊藤 慧
