9月21日の敬老の日を前に、実家の親や祖父母が「今もこんなに元気に働いているのか」と驚いた経験はないでしょうか。

厚生労働省が公表した「令和7年簡易生命表の概況」によると、日本人の平均寿命は男性81.35歳、女性87.33歳。内閣府の「令和7年版高齢社会白書」でも、65歳~69歳の就業率は男性で6割以上、女性も4割以上に達しており、70歳代前半でも男性の約4割、女性の2割超が働き続けています。

その一方で、厚生労働省の「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」では、高齢者世帯の4割以上が収入のすべてを公的年金に頼っている実態も明らかになりました。

「働き続けなければ年金だけでは心もとない」という現実がある一方で、働くシニアを支える雇用保険の給付金は、自分から申請しなければ一円も受け取れません。知っているかどうかで、老後の家計の実感は大きく変わってきます。

この記事では、見落としがちな「3種類の給付金」と、2026年4月に基準額が引き上げられたばかりの在職老齢年金の最新情報に注目し、その内容をわかりやすく解説していきます。ご自身やご家族が対象になるか、敬老の日を機にぜひ確認してみてください。

1. 60歳代・70歳代の生活資金源をデータで比較!「年金だけ」の生活は可能か

老後の生活費を年金だけでまかなうのは、多くの方にとって難しいのが現状です。

「少しでも長く働きたい」と考える方が増えるなかで、このような手厚い支援制度を知っているかどうかで、家計のゆとりは大きく変わってくるでしょう。

それでは、実際のシニア世代はどのような資金で老後の生活を成り立たせているのでしょうか。統計データからその実態を見ていきましょう。

J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」を見ると、世帯の構成に関係なく、60歳代では公的年金に次いで「就業による収入(二人以上世帯:42.5%、単身世帯:29.2%)」が家計を支える重要な柱になっていることがわかります。

しかし70歳代になると、就労収入を生活の支えとする人の割合は大幅に減少し(二人以上世帯:18.7%、単身世帯:12.1%)、公的年金への依存度がさらに高まる傾向にあります。

同時に、年金だけでは足りない生活費を「金融資産(貯蓄)の取り崩し(二人以上世帯:27.6%、単身世帯:26.6%)」で補っている実態も明らかになっています。

2. 【60歳以上】知らないと損!働くシニアが活用できる雇用保険の給付金3選

働く意欲のあるシニア世代を経済的にサポートするため、雇用保険から支給される3つの給付金について、それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

2.1 早期の再就職を支援する「再就職手当」とは【65歳未満対象】

再就職手当は、失業中の人が一日でも早く安定した職業に就けるよう支援するための制度です。

そのため、再就職までの期間が短いほど、給付内容が手厚くなるように設計されています。

再就職手当の受給要件

  • 対象者:雇用保険の基本手当の受給資格がある方
  • 支給条件:基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある状態で、雇用保険の被保険者として再就職するなど、定められた要件を満たす必要があります。

再就職のタイミングで変わる給付率

  • 給付額:就職日の前日時点における基本手当の支給残日数に応じて、給付率が変動します(計算結果の1円未満は切り捨て)。
    • 支給日数が所定給付日数の3分の1以上残っている場合:「支給残日数の60%」
    • 支給日数が所定給付日数の3分の2以上残っている場合:「支給残日数の70%」

再就職手当の計算式

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再就職手当の額

再就職手当の額

出所:厚生労働省「再就職手当のご案内」

再就職手当を受け取った後、新しい職場で6カ月以上働き、その間の給与が離職前の水準より低くなった場合は、「就業促進定着手当」の対象になる可能性もあります。

2.2 給与が減った場合に受け取れる「高年齢雇用継続給付」【60歳~65歳未満】

高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満で就労を続ける方を対象とした給付金です。

60歳時点の賃金と比較して、現在の賃金が75%未満に低下した場合、その低下した分の一部が支給される仕組みになっています。

高年齢雇用継続給付の支給対象条件

  • 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある、60歳以上65歳未満の方
  • 支給条件:60歳時点の賃金と比べて75%未満の賃金で働き続けていること

高年齢雇用継続給付の支給額と支給率

  • 支給額:各月に支払われる賃金の最高10%(※)に相当する額が支給されます。
    ※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たした方は15%

高年齢雇用継続給付の支給率早見表(2025年4月1日以降)

注意点として、老齢年金(厚生年金)を受け取りながらこの給付金を受給した場合、在職老齢年金制度による支給停止とは別に、年金の一部が支給停止となることがあります。その額は最大で標準報酬月額の4%(※)に相当します。
※2025年3月31日以前に支給要件を満たした方は6%

2.3 65歳以上で失業したときの一時金「高年齢求職者給付金」

高年齢求職者給付金は、65歳以上の雇用保険被保険者が離職し、失業状態になった際に一時金として支給される給付金です。

高年齢求職者給付金の受給に必要な2つの条件

  • 対象者:65歳以上の雇用保険加入者(高年齢被保険者)で、現在失業状態にある方
  • 支給条件:以下の2つの条件を両方満たす必要があります。
    1. 離職日以前の1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6カ月以上あること
    2. 働く意思と能力があり、積極的に求職活動をしているにもかかわらず、就職できていない「失業の状態」にあること

高年齢求職者給付金の支給額

  • 支給される金額
    • 雇用保険の加入期間が1年未満の場合:基本手当の30日分
    • 雇用保険の加入期間が1年以上の場合:基本手当の50日分

この給付金の大きな特徴は、一時金として一括で支給される点です。

これは、65歳未満の方が受け取る基本手当(いわゆる失業手当)が、原則として4週間に1度、失業認定を受けてから支給される仕組みとは異なっています。

3. 監修者からのコメント

熊谷 良子

60歳代では「就労」が年金に次ぐ主要な収入源ですが、70歳代になるとその割合は低下し、年金と貯蓄の取り崩しに依存する生活へ移行する傾向がデータからもうかがえます。

元気なうちに可能な限り長く働き、貯蓄に手を付け始める時期を先延ばしにすることが、セカンドライフを安定させるための重要な鍵となります。

今回解説した雇用保険の給付金は、すべて非課税所得として扱われる点も大きな利点です。

このような制度は、待っているだけでは誰も教えてくれません。事前に知識を得て、自らハローワークで申請手続きを行うことで、将来の家計のゆとりに大きな違いが生まれるでしょう。