1カ月で2割超戻した株価と、PBR3.3倍という評価
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出所:各種資料をもとに筆者作成
直近1カ月の終値をたどると、8月の頭が底になっている。
2026年8月5日の2,105円が起点で、8月6日の2,018円がこの1カ月で最も低い終値だ。そこから水準はじりじりと切り上がり、8月28日には2,781円まで乗せた。これが直近1カ月で最も高い終値である。
その後は8月31日が2,665円、9月1日が2,609円、9月2日が2,499円と押し戻され、9月3日に2,609円へ反発した。起点からは+23.9%で、1カ月では2割超の上昇になる。
バリュエーションを見ると、9月3日時点のPER(株価収益率)は24.8倍、PBR(株価純資産倍率)は3.28倍だ。会社が示す2027年3月期の予想1株当たり当期純利益は102.39円なので、いまの株価は予想利益の25倍前後という位置になる。
気になるのはPBRの高さである。建設業の自己資本比率の中央値が58.3%であるのに対し、同社の直近は16.7%。倍率の分母となる自己資本がそれだけ薄い。3.28倍という数字は、市場が事業を強く評価しているという説明だけでは足りず、分母側の事情も効いていると考えられる。
値動きの背景を一つに絞ることはできない。ただ、赤字で終わった期の直後に株価が2割超戻したという事実は、市場の関心が過去の損失より足元の四半期に移っていることを示していると読める。
2026年3月期通期は営業損失190億円。1件の海外案件が持ち去ったもの
まず直近の通期を確認しておきたい。数字の落ち込み方が、かなり特異な形をしている。
2026年3月期の完成工事高は1,829億円で前期比▲34.2%。完成工事総利益は64億円で▲75.3%まで落ち、営業損失190億円を計上した。前期は営業利益25億円だったので、1年で215億円分の振れである。
経常損失は113億円にとどまった。持分法による投資利益83億円が下支えしたためだ。そこから税金費用35億円を計上した結果、当期純損失は149億円となった。自己資本比率は20.9%から16.7%へ下がっている。
何が起きたのか。会社によると、完成工事総利益の落ち込みは主にブラジル向けガス火力発電案件における収支の悪化によるものだ。
この案件では契約対価の改訂や工期の見直しについて顧客と協議が続いたが、最終的に合意に至らず、同社グループは2025年7月に仲裁を申し立てている。顧客側は工期遅延に関わる予定損害賠償金の適用を主張し、すでに履行された役務への対価の支払を止めたため、支払留保額が積み上がった。
これを受けて同社は、仲裁手続きの長期化や顧客の信用状況を勘案して契約対価の回収可能性を保守的に評価し、完成までに要する費用を再精査したうえで工事損失を追加計上した。
期初に置いた見込みとの差が、この案件の重さを物語る。営業利益15億円の計画に対して実績は190億円の損失、当期純利益50億円の計画に対して149億円の損失だった。一方で受注高は1,700億円の見込みに対し1,758億円で計画を上回り、期末の受注残高も連結で2,693億円を保っている。受注は取れていたのに、採算だけが崩れた期だったわけだ。
2027年3月期1Qは営業利益19億円。通期計画の6割超を1四半期で稼いだ
ここまでの流れが、足元では反転している。
2027年3月期1Qの売上高は481億円で、前年同期の493億円から▲2.5%。ほぼ横ばいだ。ところが営業利益は19億円で前年同期の6億円から+186.5%、経常利益は33億円、当期純利益は28億円で+414.8%と、利益だけが跳ねた。
売上が伸びずに利益が増えたのだから、動いたのは採算である。前期に全社の損益を押し下げた要因が、少なくともこの四半期には効いていない。
通期計画と並べると、この1Qの重みがわかる。2027年3月期の予想は売上高1,900億円で+3.9%、営業利益30億円、経常利益75億円、当期純利益60億円。1Q実績を当てると、営業利益の進捗は63.9%、当期純利益の進捗は48.0%に達する。1四半期の標準的なペースは25%だから、利益は大きく先行している。
予想1株当たり配当は25円で、無配だった前期からの復配を計画している。会社としても、前期を一過性の落ち込みとして扱っている姿勢がうかがえる。
ただし仲裁は続いており、争点が金額で決着するまで損益にぶれが残る構造は変わらない。1Qの利益の大きさをそのまま4倍して通期を見積もるのは、この会社では危うい。数字の向きが変わったことと、変わり方が定着したことは別に扱いたいところだ。
筆者コメント
損失の局面から、位置づけの変わり目に入ったと読み取れる四半期だった。
2026年3月期は営業損失190億円。それが2027年3月期1Qには営業利益19億円となり、通期計画の6割超をすでに積んでいる。数字の向きが1四半期で反転した。
もっとも、これを回復と言い切るには早い。前期の損失は1件の案件に強く寄っていた。裏を返せば、その1件を除いた本体の稼ぐ力は、赤字の期でもそこまで崩れていなかった可能性がある。
完成工事総利益は大きく減ったとはいえ64億円を残した。損益と資金の動きが逆を向いた期だったとも言える。
そう考えると、いまの株価が織り込んでいるのは業績の回復そのものではなく、1件の異常値が終わったのかどうかという判定に近いのだろう。
仲裁の行方は外からは分からない。分かるのは、それが決着するまで損益にぶれが残るという構造だけである。株価がどちらへ動いても、この一点は変わらない。