3. 知っておきたい保険料の「納付要件」と救済措置

受給要件を満たしていても、保険料の納付状況が見られます。

3.1 原則は加入期間の3分の2以上の納付が必要

受給要件の1と2については、死亡日の前日において、これまでの国民年金加入期間のうち、保険料納付済期間(免除手続きをしていた期間も含みます)が3分の2以上あることが原則として求められます。過去に未納の期間が多いと、遺族年金が支給されない恐れがあります。

3.2 直近1年間に未納がなければ受給できる特例(令和18年3月末日まで)

納付期間が3分の2に満たない場合でも、あきらめる必要はありません。死亡日が令和18年3月末日までであれば、亡くなった方が65歳未満の場合に限り、「死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと」という特例が適用されます。直近1年間しっかり納めていれば、過去に未納があっても要件をクリアできる温かい仕組みです。

4. 加入期間が300月未満なら300月とみなして計算される

遺族厚生年金の受給額の計算方法にも、残されたご家族の生活を守るための大切なルールがあります。

4.1 年金額は本来の老齢厚生年金の4分の3

遺族厚生年金の額は、亡くなった方が将来受け取るはずだった老齢厚生年金の「報酬比例部分(現役時代のお給料をもとに計算される部分)」の4分の3の額となります。

4.2 加入期間が短くても300か月(25年)分として計算される

受給要件の1・2・3に当てはまる場合、厚生年金の加入期間が300か月(25年)に満たないときは、加入期間を「300か月」とみなして年金額を計算するという特例があります。

たとえば、働き始めて10年ほどで若くして亡くなられた場合、本来なら加入期間が短いため年金額が非常に少なくなってしまいます。しかし、この特例によって300か月分として計算されるため、残されたご家族の生活基盤が極端に崩れることを防いでくれます。冒頭で紹介した「平均月額8万5688円」というデータの中にも、この温かい配慮による300月みなしが適用された方が多く含まれています。

5. 請求のときに必要になる手続き

請求の際に押さえておきたい点を挙げておきます。

5.1 ご自身の老齢年金などの手続きもあわせて必要になる場合がある

日本年金機構の規定により、遺族厚生年金を受け取る権利を持ったご遺族(たとえば65歳以上の配偶者など)が、ご自身の老齢厚生年金や退職共済年金を受け取る権利もある場合、それらの年金の裁定請求(受け取るための手続き)もあわせて必要になります。

ご自身の年金額と遺族年金の額を調整して支給額を決定するため、遺族年金の書類だけを出しても手続きが完了しないことがあります。

5.2 第1号被保険者期間があれば別の給付も確認する

国民年金の第1号被保険者期間がある方が死亡した場合は、別途、寡婦年金や死亡一時金を受給できる場合があります。

自営業の期間があった場合などは、遺族厚生年金だけでなくこの2つも確認の対象になります。どの給付の対象になるかは加入記録で決まりますので、年金事務所や街角の年金相談センターで相談してみましょう。

6. 新規裁定の平均は8万5688円。受給要件は4つある

2026年8月31日に公表された厚生年金保険・国民年金事業月報の令和8年4月分では、令和8年4月新規裁定の厚生年金保険(第1号)の遺族年金の平均月額は8万5688円でした。受給者全体の平均8万6780円を1092円下回っています。

遺族厚生年金の受給要件は4つあり、亡くなった方がいずれかを満たしていることが必要です。要件1と2については納付済期間が加入期間の3分の2以上あることが原則ですが、死亡日が令和18年3月末日までなら直近1年間に未納がなければよい特例があります。

要件1・2・3による遺族厚生年金では、被保険者期間が300月未満のときは300月とみなして計算されます。どの要件に当てはまるかで扱いが変わりますので、窓口で確認しておきましょう。

参考資料

村岸 理美