年金生活者支援給付金の請求書は、9月ごろから順次届き始めます。ハガキや封筒を開けて、はじめてこの給付の存在を知ったという方も少なくありません。

さらに、この給付金の対象を分ける所得の基準額は、令和8年10月分から引き上げられます。これまで基準額をわずかに超えて対象外だった方が、新たに該当するようになるケースも出てきます。

一方、現役の世代からは毎月の積立額をめぐる相談が寄せられます。よく聞くのは、金額を決めた根拠がはっきりしないという声です。手取りのうちどれくらいを積立に充てているのかを確かめないまま金額を先に決めてしまうと、家計が苦しくなったときに続けるかどうかの判断がしにくくなります。

老後の収入の土台になる公的な給付を知っておくことは、その金額を考える材料になります。この記事では、2026年度の年金生活者支援給付金がどのような給付なのか、10月分からの基準額改定を含めて、老齢・障害・遺族それぞれで対象になる人の要件、受け取るまでの流れ、そして受け取る年金額に幅が生じる理由を順に整理します。

長井 祐人
毎月いくら積み立てるかというご相談では、金額そのものより先に確かめていただくことがあります。それは、老後に受け取れる公的なお金がどこまであるのかという範囲です。上乗せの給付まで含めて土台の形が見えると、自分で用意する部分の大きさも見当がつきます。この記事も、制度の輪郭を確かめるところから順に見ていきます。

なお、年金生活者支援給付金の制度内容や年金の平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

年金生活者支援給付金とは?2026年最新の対象者・いくらもらえるか・ハガキが届かない理由を徹底解説
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1. 「年金生活者支援給付金」とは|公的年金に2カ月に一度上乗せされる給付

年金生活者支援給付金は、公的年金等の収入金額とその他の所得の合計が一定の基準を下回る方を対象に、公的年金へ上乗せする形で支払われる給付です。制度の全体像は年金生活者支援給付金とは?2026年最新の対象者・いくらもらえるか・ハガキが届かない理由を徹底解説でくわしく解説されています。

この給付には「老齢」「障害」「遺族」の3種類があり、それぞれ対象となる年金の受給者に向けて用意されています。振り込みは公的年金と同じく2カ月に一度で、年金額に上乗せされる形です。金額は公的年金と同じように、年度ごとに見直される仕組みになっています。

1.1 2026年度に示された給付の月額|引き上げ分の反映は6月支給分から

年金生活者支援給付金の支給金額1/4

年金生活者支援給付金の支給金額を示した表

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

2026年度の給付額は前年度より+3.2%の引き上げが決定しており、6月支給分にあたる「4・5月分給付金」から増額率が適用されています。3種類それぞれの2026年度の月額は、次のとおりです。

  • 老齢年金生活者支援給付金(月額):5620円(※基準額)
  • 障害年金生活者支援給付金(月額):1級7025円・2級5620円
  • 遺族年金生活者支援給付金(月額):5620円

このうち老齢年金生活者支援給付金の金額は、あくまで基準額という位置づけです。実際に振り込まれる額は、保険料を納めた期間などをもとに一人ひとり計算されます。同じ制度の対象になっても金額がそろうわけではない、という点は押さえておきたいところです。

長井 祐人
この給付は年金と一緒に振り込まれるため、受け取っていること自体に気づいていない方もいらっしゃいます。相談の場で振込通知書を一緒に見ていると、「この行は何ですか」とたずねられることがよくあります。金額としては大きくありませんが、年金の土台に何が乗るのかを知っておくと、老後の家計を組み立てるときの前提がはっきりします。

2. 給付の対象になる人|老齢・障害・遺族それぞれに別の要件が置かれている

3種類の給付には、それぞれ別の支給要件が定められています。共通しているのは、前年の所得が基準額を下回っているかどうかが判定の軸になっている点です。順に確かめていきます。

2.1 老齢年金生活者支援給付金|世帯全員が市町村民税非課税であることも要件に入る

老齢年金生活者支援給付金の対象となるのは、次の要件をすべて満たす方です。

  • 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税
  • 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が、昭和31年4月2日以後に生まれた方は82万6500円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は82万4100円以下(※2、令和8年10月分からの基準額)

※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は除く。
※2 基準額を超えた場合でも、一定の範囲にあたる方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

この所得基準額は、令和8年10月分から引き上げられたばかりです。

老齢年金生活者支援給付金の所得基準額

  • 令和8年10月分から:82万6500円以下(昭和31年4月1日以前に生まれた方は82万4100円以下)
  • 令和8年9月分まで:80万9000円以下(昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下)

補足的老齢年金生活者支援給付金の対象となる所得の範囲

  • 令和8年10月分から:82万6500円を超え92万6500円以下(昭和31年4月1日以前に生まれた方は82万4100円を超え92万4100円以下)
  • 令和8年9月分まで:80万9000円を超え90万9000円以下(昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円を超え90万6700円以下)

老齢年金生活者支援給付金と補足的老齢年金生活者支援給付金の支給要件2/4

老齢年金生活者支援給付金と補足的老齢年金生活者支援給付金の概要

出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

老齢の場合、所得の金額だけで判定が終わるわけではありません。年齢と、世帯全員が市町村民税非課税であることが同時に問われます。所得の基準額を下回っていても、世帯のなかに課税されている方がいれば対象から外れる仕組みです。また、基準額を上回った場合でも一定の範囲までは「補足的老齢年金生活者支援給付金」が用意されています。

判定に使う所得の範囲や年度ごとの金額は改定されることがあります。ご自身が対象になるかどうかは、公的機関が公表している情報や年金の窓口で確認していただく形になります。

2.2 障害年金生活者支援給付金|前年の所得491万8000円以下が判定の軸

  • 障害基礎年金の受給者である
  • 前年の所得(※)が491万8000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)

※ 障害年金等の非課税収入は除く。令和8年10月分から491万8000円以下(令和8年9月分までは479万4000円以下)

障害年金生活者支援給付金の支給要件3/4

障害年金生活者支援給付金の概要

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」

2.3 遺族年金生活者支援給付金|こちらも前年の所得491万8000円以下

  • 遺族基礎年金の受給者である
  • 前年の所得(※)が491万8000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)

※ 遺族年金等の非課税収入は除く。令和8年10月分から491万8000円以下(令和8年9月分までは479万4000円以下)

遺族年金生活者支援給付金の支給要件4/4

遺族年金生活者支援給付金の概要

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」

障害・遺族の2つは、老齢と比べると所得の基準の置き方が異なります。どちらも前年の所得が491万8000円以下(令和8年10月分からの基準額)であることが軸となり、扶養親族等の人数に応じて基準額が増額される仕組みです。3種類に共通しているのは、判定の材料が前年の所得額だという点にあります。

長井 祐人
基準額の数字が並ぶと、その場でご自身が対象かどうかを判定したくなるものです。ただ、判定に使う所得の範囲は給付の種類ごとに違いますし、老齢では世帯の課税状況も関わってきます。相談の場では、記事や資料の数字は目安として見ていただき、ご自身の判定は年金の窓口で確かめていただく、という順番でお願いしています。

3. 自動では振り込まれない|書類が届いてから受け取りまでの道すじ

要件を満たしていても、この給付は自動では支払われません。受け取るには請求の手続きが欠かせない仕組みになっています。どのような流れをたどるのかを確かめておきます。

支給対象と判断された方には、日本年金機構から請求に関する書類が送付されます。基本的には、その書類に必要事項を記入して返送するだけで手続きは完了します。

これから老齢年金の受給を開始する方には、受給が始まる3カ月前に届く「年金請求書(事前送付用)」に「年金生活者支援給付金請求書」が同封され(緑色の封筒)、すでに年金を受給中の方にはハガキ形式の請求書が届きます(薄緑色の封筒)。

届いた封筒の色によって、どちらの案内なのかをおおよそ見分けられる形になっています。新たに書類をご自身でそろえる必要は原則としてなく、届いたものに記入して返送するという流れです。書類を見落としたまま時間が過ぎると請求が遅れますので、心当たりのある郵便は開封しておきたいところです。

長井 祐人
公的な制度には、要件を満たしただけでは動き出さず、こちらから手を挙げてはじめて受け取れるものが少なくありません。ご相談のなかでも「対象だったのに気づかないままだった」というお話をうかがうことがあります。ご自身の郵便だけでなく、離れて暮らすご家族に届いているものについても、折にふれてたずねてみるという方法があります。手続きの内容や条件は改定されることがありますので、具体的な進め方は年金の窓口で確認していただく形になります。

4. 老後の収入に生まれる差|加入してきた記録が受け取る金額を左右する

給付の対象になるかどうかは前年の所得で分かれ、その所得の中心を占めるのは、多くの場合は公的年金です。つまり年金額にどれだけの幅があるのかを知ることが、対象になりうる人の輪郭を知ることにつながります。平均的な水準を【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説から確かめておきます。

厚生年金の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円(いずれも国民年金の金額を含む)。国民年金は〈全体〉5万9310円、〈男性〉6万1595円、〈女性〉5万7582円です。

年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差が生じる点には注意が必要です。

厚生年金の全体平均は月15万円台で、年額に置き換えるとおよそ180万円です。国民年金の全体平均は月5万9310円で、年額ではおよそ71万円にとどまります。同じ「年金を受け取る人」でも、1階部分だけの方と2階部分が積み上がっている方とでは、収入の高さが大きく違ってきます。

もっとも、これは平均という1つの数字にすぎません。現役時代の働き方や加入していた期間によって、実際の金額は上下に散らばります。同じ年代でも給付の対象になる方とならない方が分かれるのは、この幅の広さによるものです。

そして公的年金の額が人によって違うということは、現役のうちに自分で用意しておく部分の大きさも人によって違うということでもあります。毎月いくら積み立てるかという判断が、ここで効いてきます。

長井 祐人
平均額をお伝えすると、ご自身の見込み額と重ねて考えたくなるものですが、平均は多くの方の金額をならした数字ですので、一致しないほうがふつうです。相談の場では、平均は物差しの目盛りとして使い、ご自身の金額はねんきん定期便やねんきんネットで確かめていただく、という順番でお願いしています。土台の高さが見えてくると、自分で用意する部分の大きさも見当をつけやすくなります。

世帯全員が市町村民税非課税である場合に受けられる優遇措置についてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【2026年最新】「住民税非課税世帯」を対象とした「優遇措置」8選 《年金・給与》年収いくらで該当するのか境界線も見ておこう「収入ゼロでも給付金が届かない?」5つの盲点を徹底解説

5. 【独自試算】手取りに対する割合を確かめずに決めた積立額と、確かめてから決めた積立額で20年後はどう変わるか

毎月の積立額は、家計のどこから出ているのかを確かめないままでも決められてしまいます。手取りに対する割合を先に確かめた場合とそうでない場合とで、20年という時間を置いたときの結果がどう変わりうるのかを試算してみます。

5.1 2つのケースに置いた前提

前提は次のとおりです。

  • 手取りの月額:30万円
  • ケースA:手取りに対する割合を確かめずに月6万円(手取りの20%)で開始し、5年後に月2万円(手取りの約7%)へ変更して、そのまま15年続ける
  • ケースB:先に割合を確かめ、月3万円(手取りの10%)で20年続ける
  • 積み立てた元本はどちらも720万円で同じ
  • 想定利回り:年3%/期間20年(240カ月)/毎月末に積み立てるものとして月利で複利計算
  • 税金・手数料・インフレの影響は考慮しない

月利は年利を12で割るのではなく、年利から12乗根を用いて求めています(月利=(1+年利)の12分の1乗-1)。年3%の場合、月利は約0.2466%です。

5.2 20年後の到達額を並べてみる

それぞれの20年後の金額は、次のような計算になります。

  • ケースA:5年時点で約387万円、20年後は約1056万円
  • ケースB:20年後は約981万円

同じ720万円を積み立てても、20年後の到達額には約76万円の差が出る計算です。差がついたのは、ケースAが早い時期に多く入れていたためで、途中で金額を下げたこと自体が結果を目減りさせたわけではありません。積立額を減らすという見直しは、続けるための調整として働いています。

5.3 それでも割合を先に確かめておきたい理由

では、手取りに対する割合を先に確かめる意味はどこにあるのでしょうか。ケースAには、手取りの2割を積立に充てていた5年間があります。その間は他の支出を削るか、別の預金を取り崩すかという場面が出やすく、家計に負荷がかかりやすい状態でした。20年続いたのは、負担が重いと気づいた時点で金額を下げる調整ができたからだ、という見方もできます。

仮に、調整をせずに5年で積立をやめ、その後は追加しないまま置いた場合はどうなるか。同じ前提で計算すると、20年後はおよそ604万円(元本360万円)です。ケースBとの差は約377万円まで広がります。手取りに対する割合を先に確かめておく価値は、20年後の金額を大きくすることよりも、続けられる範囲に金額を収めておける点にあると考えられます。

また、ここで示した約76万円という差は、想定利回りを年3%と置いた場合の結果にすぎません。その利回りが実現するかどうかは前もってわかりません。年3%という数字は期間中ずっと同じ利回りが続いたと仮定した目安であり、実際には想定を下回る年も、投じた元本を割り込む局面もありえます。上の数字は、積立額を決めるための材料の1つとして見ていただくものです。

※上記は利回りが期間中一定であると仮定した目安の試算です。実際の運用成果は市場環境によって変動し、想定を下回ることも、投じた元本を割り込むこと(元本割れ)もあります。将来の運用成果を保証するものではありません。税制や制度の取り扱いは改定されることがありますので、実行にあたっては公的機関の情報を確かめたうえで、関連する窓口や専門家にご確認ください。

6. 監修者コメント:積立額の根拠は、家計のなかにある数字から取り出す

和田 直子

毎月いくら積み立てるかという問いに、どの家計にも当てはまる答えはありません。記事の試算が示しているのも金額そのものではなく、決め方の違いによって20年後の景色がどう動くか、という関係のほうです。手取りの2割という水準を負担なく続けられる家計もあれば、1割でも重く感じる家計もあります。どちらの感覚も、その家計にとっては正しいのだろうと思います。

材料としてまず挙がるのは、いま何にいくら出しているかという数字です。毎月の収入から、住まいや通信、保障のための支出といった決まって出ていくものを差し引いたとき、動かせる部分がどれくらい残るのか。ここが見えていないまま金額を先に決めると、記事のケースAのように、あとから調整が必要になることがあります。もっとも、調整そのものは問題ではなく、調整できる状態にしておけるかどうかが分かれ目になります。

もう1つの材料が、公的な給付でまかなえる部分の大きさです。記事で取り上げた年金生活者支援給付金のように、老後の収入に上乗せされる仕組みがどこまであるかによって、自分で用意する範囲は変わります。土台の高さを測ってから、自分で積み上げる高さを決めるという順番です。

なお、非課税の制度や年金に関わる制度は、対象となる範囲や税制上の取り扱いが改正されることがあります。ご自身のケースでどうなるかは、公的機関が公表している最新の情報を確かめたうえで、関連する窓口や専門家に確認していただく形になります。記事の数字は、金額を決める順番を組み立てるための見取り図として使っていただければと思います。