普段よりお金がかかりがちな夏休みも終わりが見え、家計を改めて見直す方もいるのではないでしょうか。旅行代、飲食費、光熱費、塾費用…など夏休みは出費も増えますが、その分支出を引き締めようとこの時期は考える方もいるでしょう。
家計の見直しを考えるこの機会に確認したいのが、一般的な貯蓄額。ひとくちに現役世代といっても、30歳代と60歳代では家計の状況も貯蓄の目安も大きく異なります。まずは同じ世代の平均や中央値をものさしに、わが家の位置を確かめてみましょう。
そこで今回は、30〜60歳代の二人以上世帯について、年代ごとの平均貯蓄額と中央値を確認し、これからの資産形成の進め方を、元証券会社員の視点で年代別に考えていきます。
- 30歳代から60歳代まで、二人以上世帯の貯蓄は年代でどれだけ変わるか
- ライフステージごとに移り変わる、資産形成の重点
- 「始めるのに遅すぎない」—いまの年代からの一歩
1. 【みんなの平均貯蓄額】30~50歳代は1000万円台だが、中央値は1000万円未満に
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が2025年に公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、二人以上世帯の金融資産保有額(平均・中央値)は、年代ごとに次のとおりです。
※金融資産保有額とは、預貯金だけでなく株式、投資信託、生命保険などを含んだ金額です。ただし、日常的に使う普通預金の残高は含まれていません。
1.1 30歳代二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)
- 30歳代二人以上世帯:平均1096万円/中央値311万円
平均1096万円、中央値311万円です。貯蓄がない世帯が17.6%ある一方、2000万円以上の世帯も12.5%あり、この年代からすでに差が生まれ始めています。
1.2 40歳代二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)
- 40歳代二人以上世帯:平均1486万円/中央値500万円
平均1486万円、中央値500万円。教育費や住宅ローンで出費が重なりやすい時期ですが、2000万円以上の世帯は21.3%と少しずつ増えます。貯蓄のない世帯は18.8%です。
1.3 50歳代二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)
- 50歳代二人以上世帯:平均1908万円/中央値700万円
平均1908万円、中央値700万円。2000万円以上の世帯が26.9%まで増える一方、貯蓄のない世帯も18.2%残り、老後を前に世帯ごとの差が広がります。
1.4 60歳代二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)
- 60歳代二人以上世帯:平均2683万円/中央値1400万円
平均2683万円、中央値1400万円。2000万円以上の世帯が39.6%と4割近くにのぼります。退職金なども加わる一方、貯蓄のない世帯も12.8%みられます。
どの年代でも共通するのは、平均が中央値を上回り、蓄えの多い世帯と少ない世帯の幅が大きいことです。平均だけで安心・落胆せず、中央値もあわせてわが家の位置を確かめておきたいところです。
平均や中央値だけでなく、金額帯ごとの分布をみると、単身世帯のお金の実像がより立体的に見えてきます。
1.5 金額帯でみる、二人以上世帯の蓄え
平均や中央値だけでなく、金額帯ごとの割合をみると、二人以上世帯の蓄えの伸び方がよりはっきりと見えてきます。
まとまった蓄えの目安となる「2000万円以上」を持つ世帯の割合は、30歳代12.5%、40歳代21.3%、50歳代26.9%、60歳代39.6%と、年代が上がるほど大きく増えていきます。60歳代では、およそ5世帯に2世帯が2000万円以上に達します。
一方で、どの年代にも貯蓄のない世帯は一定数あり、30〜50歳代では2割前後が「貯蓄なし」です。同じ年代でも、蓄えの厚い世帯と少ない世帯の差は小さくありません。
年代とともに2000万円以上の層は着実に厚くなりますが、その差は一朝一夕には縮まりません。早い時期からの積み重ねが効いてくるだけに、まずはわが家がどの金額帯にいるかを確かめ、次の目標を決めることが大切です。
年代が上がるほど平均は大きくなりますが、平均と中央値の差も広がります。まずは中央値を目安に、わが家の位置を確かめておきましょう。次のページでは、年代ごとに変わる資産形成の進め方をみていきます。
2. 年代別にみる、これからの資産形成の進め方
貯蓄額は年代とともに変わり、家計の課題も移り変わります。元証券会社員の視点で、年代ごとの資産形成の考え方を整理します。金額はあくまで目安で、大切なのは自分の家計に合わせて調整することです。
2.1 30〜40歳代は「見える化」と積立の習慣づくり
30歳代は、家計の「見える化」と積み立ての習慣づくりの時期です。収入・支出・貯蓄残高を把握し、少額でも先取りで自動的に積み立てる仕組みをつくると、その後の伸び方が変わります。
40歳代は、教育費や住宅ローンで支出が増えやすい一方、収入も伸びる時期。固定費を点検しつつ、税制優遇のある制度も活用して、無理のない範囲で積み立てを続けたいところです。
2.2 50〜60歳代は「守り」と取り崩し—新NISAも無理なく
50歳代は、老後が近づき「増やす」から「守りも意識する」へ移る時期。退職金の使い道やリスクの取り方を見直し、老後に必要な額を具体的に試算しておくと安心です。
60歳代は、貯蓄を「使う」段階への入り口です。年金と貯蓄でどう暮らすか、取り崩しの順番やペースを考え始めましょう。投資を取り入れる場合は、生活防衛資金を預貯金で確保したうえで、無理のない範囲で検討するのが基本です。
3. 元証券会社員からのアドバイス
30〜60歳代二人以上世帯の貯蓄は、平均で30歳代1096万円・40歳代1486万円・50歳代1908万円・60歳代2683万円、中央値で311万円・500万円・700万円・1400万円でした。年代が上がるほど平均は大きくなりますが、どの年代も平均と中央値には差があります。
一つ目は、「ねんきんネット」で世帯の年金見込み額を確認すること。夫婦二人分でいくらかがわかると、貯蓄でどれだけ補えばよいかの土台が見えてきます。
二つ目は、わが家の貯蓄を「同じ年代の中央値」と見比べること。平均は一部の高額世帯に引き上げられるので、比べるなら中央値のほうが実感に近い目安です。
三つ目は、これから10年間の大きな出費を書き出すこと。進学、住宅、退職など、いつ・いくら必要になりそうかを時系列で並べると、準備の優先順位がはっきりします。
証券会社でご相談を受けていたお客様は、その多くが60歳以上で、退職金の運用を控えた方々でした。「もっと早く、自分の年代に合った準備をしておけばよかった」という方もなかにはいらっしゃいました。
年代が上がるほど選べる時間は短くなりますが、始めるのに遅すぎることはありません。
大切なのは、平均の大きさに一喜一憂せず、わが家の中央値との距離をつかむこと。そのうえで、年金の見込み額と、これから10年の大きな出費を書き出しておくことです。
この3つを押さえるだけで、老後のお金の全体像はぐっと見えやすくなります。今日いちばん取りかかりやすいものを、1つ選んで動き出してみてください。
年代が上がるほど、これまでの積み重ねが結果に表れます。いまの一歩が、10年後の安心につながっていきます。
4. まとめにかえて
今回は、30〜60歳代二人以上世帯の平均貯蓄額(30歳代1096万円・40歳代1486万円・50歳代1908万円・60歳代2683万円)と中央値(311万円・500万円・700万円・1400万円)を確認しました。年代が上がるほど平均は大きくなりますが、実感に近いのは中央値のほうです。
物価高で消費支出も増える中、家計の課題は年代とともに移り変わります。30歳代は見える化と積立、40歳代は固定費点検と制度活用、50歳代は守りも意識した見直し、60歳代は取り崩しの計画へと、重点を移していくのが基本です。
今日からできることは3つです。まず、世帯の年金見込み額を「ねんきんネット」で確認すること。次に、わが家の貯蓄を同じ年代の中央値と見比べること。
そして、これから10年間の大きな出費を時系列で書き出すこと。年代が上がるほど時間は短くなりますが、始めるのに遅すぎることはありません。いちばん取りかかりやすい一歩から、今日動き出してみましょう。
参考資料
宮野 茉莉子
