平日は都市部、週末は地方。そうした二拠点の暮らしを考えるとき、必ず出てくるのが住民票をどちらに置くかという問題です。

これは好みで選べるものではなく、法律に決め方が書かれています。しかも住民票の場所は、住民税をどこに納めるかや、選挙人名簿にいつ載るかにもつながっています。どちらの市町村の行政サービスを受けるかにも関わってきます。

条文をたどりながら、どこで何が決まるのかを整理します。

この記事の3つのポイント
  • 住所は民法22条で「生活の本拠」と定められており、住民票はそこに置きます。
  • 転入した日から14日以内に、市町村長へ届け出る必要があります。
  • 住民票のない市町村でも、家屋敷があれば住民税の均等割がかかる場合があります。

1. 住民票は「生活の本拠」に置きます

【図表1】住所がどう決まるかを定めた法令のつながり1/2

【図表1】住所がどう決まるかを定めた法令のつながり

各種資料をもとにLIMO編集部作成

出発点は民法22条です。「各人の生活の本拠をその者の住所とする」と定められています。住所は届け出た場所ではなく、生活の本拠がどこかによって決まるという考え方です。

次に地方自治法10条1項が「市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする」としています。住所のある市町村の住民になる、ということです。

そして住民基本台帳法4条は「住民の住所に関する法令の規定は、地方自治法第10条第1項に規定する住民の住所と異なる意義の住所を定めるものと解釈してはならない」と定めています。住民票の住所だけを別の意味で決めることはできない、という趣旨です。

つまり、二拠点のどちらに住民票を置くかは、生活の本拠がどちらかという判断に帰着します。滞在日数だけで機械的に決まるものではなく、生活の実態から個別に判断されます。

2. 転入した日から14日以内に届け出ます

住民基本台帳法22条1項は、転入をした人は「転入をした日から十四日以内に」氏名や住所などを市町村長に届け出なければならないと定めています。転入とは、新たに市町村の区域内に住所を定めることをいいます。

届け出る内容は、氏名、住所、転入をした年月日、従前の住所、世帯主との続柄などです。

期間の数え方には注意が必要です。民法140条は「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない」と定めています。住民基本台帳法に特別の定めはないため、14日は転入した日ではなく、その翌日から数えます。

二拠点で暮らす場合でも、生活の本拠を移したのであれば、この届出の対象になります。どちらを本拠とみるか迷う場合は、自分で決めてしまう前に市区町村の窓口に相談してください。窓口では、滞在の状況や生活の実態を踏まえて判断されます。

3. 住民税は、その年の1月1日に住民票がある市町村へ

個人の市町村民税は、地方税法294条1項1号により、市町村内に住所を有する個人に対して均等割額と所得割額の合算額で課されます。

そして地方税法318条は「個人の市町村民税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする」と定めています。年度の初日は4月1日ですから、その年の1月1日時点でどこに住所があったかで、その年度の納め先が決まります。

そのため、1月2日に引っ越した場合、その年度の住民税は前の市町村に納めることになります。生活の場所は変わっていても、納める先はしばらく前のままです。あくまで制度上の一般的な扱いで、個別のケースは市区町村へ確認してください。

4. 住民票のない市町村でも、家屋敷があれば均等割がかかります

【図表2】住民税は二拠点のどちらにかかるか2/2

【図表2】住民税は二拠点のどちらにかかるか

各種資料をもとにLIMO編集部作成

見落とされやすいのが、地方税法294条1項2号です。ここには「市町村内に事務所、事業所又は家屋敷を有する個人で当該市町村内に住所を有しない者」と書かれており、この人には均等割額が課されると定められています。

つまり、住民票を置いていない側の市町村でも、そこに家屋敷があれば均等割がかかる場合があるということです。住民票は1か所でも、住民税の負担は2か所に生じうる形になります。

均等割の税率や、どこまでを家屋敷とみるかの運用は市町村の条例によります。実際に課税されるかどうかは個別の判断になりますので、二拠点それぞれの市区町村の窓口で確認してください。

住民票にまつわる話は、日付で決まる部分が多いのだと、条文を並べて改めて思いました。

転入の届出は14日以内、住民税の賦課期日はその年の1月1日。どちらも、暮らしている実感とは関係なく、決まった日で線が引かれます。1月2日に移れば、その年度の納め先は前の市町村のままです。

二拠点で暮らす人にとっては、この線の引かれ方が生活の感覚と噛み合いにくいところだと思います。両方に暮らしの実体があっても、制度の側は、どこか1日のどこか1か所を選んで記録します。

もうひとつ、14日以内という期限にも起点があります。数え始めるのは転入した日の翌日で、荷物が片づいて生活が落ち着いてから、ではありません。二拠点の場合、どちらの暮らしがいつ始まったのかを自分で決めにくいぶん、その起点そのものが曖昧になりがちです。

そこを不便だと感じるかどうかは人によりますが、少なくとも、後から知って驚く種類のものではあります。

中沢 新

5. 選挙人名簿に載るのは、届出から3か月後です

公職選挙法21条1項は、選挙人名簿の登録について定めています。当該市町村の区域内に住所を有する満18歳以上の日本国民で、住民基本台帳法22条の届出をした日から「引き続き三箇月以上」その市町村の住民基本台帳に記録されている人が対象です。

住民票を移した直後は、移った先の選挙人名簿にはまだ登録されません。3か月という期間が必要になります。

二拠点の拠点を入れ替えるときは、この期間があることも頭に置いておくと、選挙の時期と重なったときに慌てずにすみます。

6. 国も「住民票の扱い」を検討課題に挙げています

二拠点生活は、国の資料では「二地域居住」と呼ばれます。二地域居住を後押しする法律の目標は、5年で市町村の計画600件・支援法人600法人とされており、自治体側の受け入れ環境を整える仕組みが動き始めています。

「二拠点生活」を後押しする法律が2024年11月に施行。5年で計画600件・支援法人600法人が目標、国が使う正式名称は
「二拠点生活」を後押しする法律が2024年11月に施行。5年で計画600件・支援法人600法人が目標、国が使う正式名称は

ただし、この法律は自治体の取り組みを支援するもので、住民票の置き方を変えるものではありません。

国土交通省が2026年2月に公表した資料でも、国土審議会の中間とりまとめとして「二地域居住者等による納税等の負担や住民票等の地域との関わり方については、育児やゴミ収集などの行政サービスを受け、地域に広く受け入れられるようにする観点から、地域の意志決定への参画のあり方等も含めて更なる議論が必要」と記されています。制度の側でも、まだ結論が出ていない論点だということです。

7. まとめにかえて

二拠点生活と住民票の関係を、条文からたどってきました。

  • 住所は民法22条の「生活の本拠」で決まり、住民票はそこに置きます
  • 転入した日から14日以内に、市町村長へ届け出る必要があります
  • 住民税の納め先は、その年の1月1日時点の住所で決まります
  • 住民票のない市町村でも、家屋敷があれば均等割がかかる場合があります

住民票をどちらに置くかは、暮らし方の希望というより、生活の本拠がどちらかという事実の問題として扱われます。そのうえで、税や選挙といった手続きが、その1か所を基準に組み立てられています。

ここで挙げたのは制度の一般的な仕組みで、実際の判断は個別の事情によります。住民票をどちらに置くか、二重に課税されるのかといった点は、二拠点それぞれの市区町村の窓口に確認するのが確実です。

8. 【執筆者コメント】制度が追いついていない部分のこと

二地域居住を後押しする法律ができて、市町村の計画づくりが始まっています。一方で国の側は、住民票の扱いや納税の負担については、さらに議論が必要だとしています。

私は勤務先を変えないまま地方に住んで働いていますが、拠点を2つ持っているわけではありません。それでも、住んでいる場所と働く場所の関係が以前とは違うと、制度が想定してきた形から少しずつずれていく感覚はあります。

暮らし方のほうが先に動いて、制度があとから追いかける。そういう順番になるのは、たぶん自然なことなのだと思います。ただ、追いかけている間に生じる不便は、その時期に暮らしている人が引き受けることになります。

もっとも、そう言いながら自分は、いま住んでいる市町村の広報を最後にいつ読んだかを思い出せません。議論の行方を気にする前に、まずそこからかもしれません。

参考資料

中沢 新