3. 額面と手取りはどれだけ違うのか

ここからは「額面」と「手取り」の話です。分布表に載っている金額も、モデルケースの金額も、すべて天引き前の額面です。

実際に口座に入るのは、そこから差し引かれた後の金額になります。

3.1 年金から天引きされる4つのもの

年金から差し引かれる可能性がある主な税金・社会保険料は、次の4つです。

  • 介護保険料
  • 後期高齢者医療保険料(75歳未満は国民健康保険料など)
  • 所得税および復興特別所得税
  • 住民税および森林環境税

これらは特別徴収といって、年金からあらかじめ差し引かれる形で納めます。

3.2 【試算】額面15万円なら社会保険料は月1万3187円

では、額面で月15万円を受け取っている場合、どれだけ引かれるのでしょうか。75歳以上の単身世帯を想定し、全国平均の保険料率で試算しました。

介護保険料は市区町村や所得段階によって異なります。参考として、第9期(2024〜2026年度)の基準額の全国加重平均は月6225円です。

後期高齢者医療保険料は、2026・2027年度の全国平均で均等割が年額5万6083円、所得割率が10.17%と公表されています。

年金収入180万円から公的年金等控除110万円を引くと雑所得は70万円になり、ここから基礎控除43万円を引いた27万円に所得割率をかけると2万7459円です。

均等割と合わせると年額8万3542円、月あたり約6962円となります。

2つを合計すると月1万3187円、年間で約15万8242円です。額面に対して8.8%にあたります。

※あくまでも全国平均値を単純に当てはめた参考試算です
※子ども・子育て支援金分は加味しておりません
※実際の保険料率は都道府県ごとの広域連合で異なります

3.3 所得税はかからないが、住民税はかかる

所得税は、雑所得70万円から社会保険料控除15万8242円と基礎控除を差し引いて計算します。2025年度の税制改正により、合計所得金額が132万円以下の場合の基礎控除は95万円です。

差し引くと計算上はマイナスになるため、この収入水準では所得税はかかりません。

一方、住民税の基礎控除は43万円です。雑所得70万円から社会保険料控除と基礎控除を引くと課税所得が11万円ほど残るため、所得割と均等割を合わせて年間1万6000円程度がかかる計算になります。

自治体によって均等割の額や減免の扱いが異なるほか、住民税には調整控除という仕組みもあります。ここでは調整控除と森林環境税を織り込んでいませんので、あくまで標準的な場合の目安としてご覧ください。

これらをまとめると、額面15万円に対する手取りは次のようになります。

  • 額面:15万円
  • 介護保険料:6225円
  • 後期高齢者医療保険料:約6962円
  • 住民税(標準的な場合):約1348円
  • 手取り:約13万5465円

差は月約1万4535円、率にして9.7%です。年間にすると約17万4420円が額面と手取りの差になります。

分布表で「15万円以上」の側にいる方でも、実際に使えるのは13万円台半ばということです。

※全国平均値等を単純適用した参考試算であり、実際の手取り額を示すものではありません。実際の税額・保険料額は、お住まいの自治体や広域連合、税務署にご確認ください。

4. FPからのアドバイス|支給日に確認しておきたいポイント

年金は2カ月に一度しか動きがないため、確認の機会そのものが限られます。FPとしての立場から、支給日に確認しておきたいポイントをお伝えします。

4.1 6月と10月の入金額の変化に注意する

年金から特別徴収される介護保険料や後期高齢者医療保険料などは、年度途中に天引き額が変わる場合があります。

特に10月以降は、本算定後の保険料額が反映されるケースがあるため、振込額の変化を確認しておきましょう。

金額が急に減ったときは、天引きの内訳を確認してみてください。理由が分かるだけでも、家計の見通しは立てやすくなります。

4.2 額面ではなく手取りで生活設計を組む

先ほど試算したとおり、額面15万円でも手元に残るのは13万円台半ばです。老後の生活費を考えるときに額面で計算していると、1割近くずれることになります。

住宅ローンが残っているか、持ち家か賃貸か、医療費がどの程度かかっているかによって、必要な額は人それぞれです。

ただ、どのような前提で計算するにしても、出発点は手取りにしておくべきだと考えています。1割の差は、20年、30年と続けば大きな金額になります。

加藤 聖人

今回の試算で使ったのは全国平均の保険料率です。介護保険料の段階も後期高齢者医療の保険料率も自治体・広域連合ごとに違いますので、ご自身の金額は年金振込通知書で確かめるのがいちばん確実です。通知書には天引きされる項目と金額が並んでいますので、この記事の内訳と見比べてみてください。

もうひとつ、この試算は税制や保険料率が今の水準で続く前提で組んでいます。基礎控除の見直しや後期高齢者医療の保険料率改定のように、数年単位で前提が変わることは珍しくありません。一度計算したら終わりにせず、改定のたびに置き直すつもりでいるほうが実態に近づきます。

なお、税額や保険料の具体的な取り扱いはご自身の状況によって変わります。判断に迷う部分は、お住まいの自治体の窓口や税務署、税理士など専門の窓口でご確認ください。

5. まとめ

厚生年金と国民年金を合わせて月15万円以上を受け取っている人は、受給権者全体の49.8%でした。

ただし男女別に見ると男性68.8%、女性12.3%と大きな差があり、最も人数の多い階級は月10万円台前半です。平均の15万289円は、高い層に引き上げられた数字だということになります。

そして、この金額はいずれも額面です。全国平均の保険料率で試算すると、額面15万円の方の手取りは月13万5000円台、年間で約17万4420円が差し引かれる計算になりました。

10月15日の支給日は、この差を確認する良い機会です。額面と比べてみて、自分の年金の実像をはっきりさせておきましょう。

参考資料

加藤 聖人