10月は、偶数月に支払われる公的年金の支給月です。年金の話題を目にする機会が増えるこの時期は、「いつから受け取るか」という受給開始のタイミングを考える良いきっかけになります。

50歳代は、老後がぐっと現実味を帯びてくる時期です。まずは同じ世代がどれくらい蓄えているのかを、平均と中央値の両方で確かめておきましょう。

そこで今回は、50歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額と中央値を確認します。あわせて、受け取る時期を遅らせると年金が増える「繰下げ受給」のしくみを、データと制度の両面から整理していきましょう。

LIMO編集部貯蓄解説班

年金は「いくら受け取れるか」と同じくらい、「いつから受け取るか」で老後の家計が変わります。50歳代のうちに選択肢を知っておくと、退職が近づいたときに落ち着いて判断できます。

まずは同世代の平均と中央値を、わが家のものさしにしてみましょう。

なお、年代別の貯蓄額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認
【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認
ココがポイント
  • 50歳代・二人以上世帯の貯蓄額は平均1908万円・中央値700万円。2000万円以上が26.9%ある一方、貯蓄のない世帯も18.2%
  • 繰下げ受給は1カ月遅らせるごとに0.7%、最大75歳まで(120カ月)で84%増え、その額が生涯続く
  • 老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げられる。夫婦で受け取る時期をずらすという選択肢もある

1. 【50歳代二人以上世帯の平均貯蓄額】中央値はいくらか?

金融経済教育推進機構(J-FLEC)が2025年に公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、50歳代・二人以上世帯の金融資産保有額は次のとおりです。

※金融資産保有額とは、預貯金だけでなく株式、投資信託、生命保険などを含んだ金額です。ただし、日常的に使う普通預金の残高は含まれていません。

1.1 50歳代二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)

50歳代(二人以上世帯)の貯蓄額の円グラフ1/1

50歳代の貯蓄額

出所:金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)〔二人以上世帯〕」をもとにLIMO編集部作成

円グラフの内訳にあたる金額帯ごとの数字は、「【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認」に掲載されているため、そちらから引用します。

  • 金融資産非保有:18.2%
  • 100万円未満:6.5%
  • 100~200万円未満:6.4%
  • 200~300万円未満:4.1%
  • 300~400万円未満:3.5%
  • 400~500万円未満:2.2%
  • 500~700万円未満:6.7%
  • 700~1000万円未満:7.7%
  • 1000~1500万円未満:9.3%
  • 1500~2000万円未満:6.1%
  • 2000~3000万円未満:8.1%
  • 3000万円以上:18.8%
  • 無回答:2.2%
  • 平均が1908万円、中央値が700万円です。

出所:【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認

平均は1908万円、中央値は700万円です。2000万円以上の世帯が26.9%まで増える一方、貯蓄のない世帯も18.2%残り、老後を前に世帯ごとの差が広がっていきます。

平均が中央値を大きく上回るのは、蓄えの厚い一部の世帯が全体を引き上げているためです。平均額だけをみて安心したり落ち込んだりせず、実感に近い中央値もあわせて、わが家の位置を確かめておきたいところです。

LIMO編集部貯蓄解説班
50歳代は、「増やす」から「受け取り方を考える」へと視点が移る時期です。貯蓄額を確かめたら、次は年金をいつから受け取るかを考えてみましょう。次のページで、受け取りを遅らせると増える「繰下げ受給」のしくみをみていきます。

2. 受け取りを遅らせると増える「繰下げ受給」

公的年金は原則65歳から受け取りますが、受け取りを66歳以降に遅らせることもできます。これを「繰下げ受給」といい、遅らせるほど毎月の年金額が増えるしくみです。50歳代のうちに知っておくと、老後の受け取り方の選択肢が広がります。

2.1 1カ月遅らせるごとに0.7%、最大84%増える

繰下げによる増額率は、受け取りを遅らせた月数1カ月あたり0.7%です。最大で75歳まで、120カ月遅らせることができ、その場合は年金額が84%増える計算になります。

しかも、いったん増えた年金は一生涯その額が続きます。長生きするほど受け取り総額で有利になりやすい一方、遅らせている間の生活費を貯蓄や就労でまかなえることが前提です。手元の蓄えと相談しながら考えたい選択です。

2.2 老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々にも繰下げできる

年金には、全員が受け取る「老齢基礎年金」と、会社員などが上乗せで受け取る「老齢厚生年金」があります。この2つは、同時に繰り下げても、どちらか一方だけを繰り下げても構いません。

二人以上世帯なら、夫婦それぞれの年金について、受け取る時期をずらすという選択もできます。たとえば一方は65歳から受け取り、もう一方は繰り下げて増やす、という組み合わせも可能です。夫婦の働き方や健康に合わせて設計できるのが強みです。

60歳・65歳以降に受け取れるお金や、加給年金をはじめとする各種の給付についてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!「知っておきたい」お金の仕組みを徹底解説

3. 編集部からのアドバイス

50歳代・二人以上世帯の貯蓄は、平均1908万円・中央値700万円でした。この蓄えと、これから受け取る年金をどう組み合わせるかで、老後の家計は大きく変わります。繰下げを上手に活かすために、今日からできることを3つお伝えします。

一つ目は、夫婦二人分の年金の見込み額を、ねんきんネットで確認することです。65歳から受け取った場合の額がわかると、繰り下げてどれだけ増えるかも具体的にイメージできます。

二つ目は、繰り下げている間の生活費を、どうまかなうかを考えておくことです。就労収入や貯蓄で埋められる範囲を見ておくと、無理のない繰下げの年数が見えてきます。

三つ目は、夫婦で受け取り方を役割分担することです。一方は早めに受け取って生活費にあて、もう一方は繰り下げて将来の増額を狙う、という組み合わせも検討してみましょう。

LIMO編集部貯蓄解説班

繰下げは魅力的に見えますが、「遅らせている間の生活費をどうするか」を決めないまま選ぶと、かえって家計が苦しくなることもあります。増額率の大きさだけで決めないことが大切です。

夫婦の年金見込み額と、繰り下げている間をまかなう手立てをセットで考えると、無理のない受け取り方が見えてきます。たとえば、収入の多かった方の厚生年金を繰り下げて増やし、もう一方は65歳から受け取って生活費にあてる、という組み合わせもよく検討されます。

どちらが得かは寿命や働き方によって変わるため、正解を一つに決める必要はありません。50歳代のいまは、結論を出す時期ではなく、選択肢を知っておく時期です。

まずは夫婦二人分の見込み額を確かめることから始めてみてください。そのうえで、繰り下げる年数を少しずつ具体化していけば十分です。個別の要件や請求の手続きについては、年金事務所やお住まいの自治体の窓口にご確認ください。

4. まとめにかえて

今回は、50歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額(1908万円)と中央値(700万円)を確認しました。2000万円以上の世帯が増える一方、貯蓄のない世帯も残り、老後を前に差が広がる年代です。

あわせて、繰下げ受給のしくみもみてきました。1カ月遅らせるごとに0.7%、最大75歳まで遅らせれば84%増え、その額は生涯続きます。基礎年金と厚生年金は別々にも繰り下げられます。

今日からできることは3つです。まず、夫婦二人分の年金見込み額をねんきんネットで確認すること。次に、繰り下げている間の生活費をどうまかなうかを考えること。

そして、夫婦で受け取り方の役割を分担すること。蓄えと年金を上手に組み合わせて、老後の受け取り方を、この秋から考え始めてみましょう。

参考資料

LIMO編集部貯蓄解説班