2. 2026年4月に改正【在職老齢年金】基準額「月51万円→月65万円」へ引き上げ。

働き続けるシニアが増える中、知っておきたいのが「在職老齢年金」という制度です。これは、厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金(会社員や公務員が受け取る年金)を受け取る人のうち、給与と年金の合計が「一定額」を超えた場合に、年金の一部または全部が支給停止(減額)になる仕組みです。この「一定額」の目安となる基準額が、2026年4月の改正によって大きく引き上げられました。

2.1 改正の3つのポイント

  • 支給停止の基準額:月51万円 → 月65万円へ引き上げ
  • 対象者:厚生年金に加入しながら働く60歳以上の人
  • 調整の対象:老齢厚生年金のみ

※老齢基礎年金はこれまでどおり全額支給

つまり、「働いて収入が増えると年金が減るから」と仕事をセーブしていた人でも、これまでより多く稼ぎながら年金を満額受け取れる可能性が広がっているのです。

2.2 在職老齢年金、年金10万円なら「賃金55万円まで」年金満額に!早見表でチェック

では、基準額が引き上げられたことで、実際の手取り額にどのような違いが出るのでしょうか。たとえば、賃金(月額)46万円、老齢厚生年金の受給額が月10万円の場合で比べてみます。在職老齢年金の計算に使われるのは「標準報酬月額+直近1年間の標準賞与額の1/12」です。

※この章でいう賃金とは、月給(標準報酬月額)にボーナス(標準賞与額)を加えた総報酬制の月額相当分を指します。

賃金月46万円、老齢厚生年金の受給額が月10万円の場合のイメージ4/5

賃金月46万円、老齢厚生年金の受給額が月10万円の場合のイメージ

出所:日本年金機構チラシ「働きながら年金を受給する皆さま 在職老齢年金制度が改正されます」

■2026年3月まで(基準額51万円)

  • 賃金46万円+年金10万円=合計56万円
  • 基準額を5万円上回るため、その超えた分の半額(2万5000円)が支給停止
    → 年金の受取額は 7万5000円

■ 2026年4月から(基準額65万円)

  • 合計56万円は新しい基準額65万円を下回る
    → 年金は 10万円全額支給

このように、同じ収入でも手取り年金額が変わるケースがあります。

2.3 在職老齢年金早見表

日本年金機構の《在職老齢年金早見表》を見ると、働きながら年金を受け取る場合に「給与(月額)」と「老齢厚生年金の月額」の合計が基準額を超えたとき「いくら年金が支給停止になるのか」ひと目で確認することができます。

在職老齢年金早見表5/5

在職老齢年金早見表

出所:日本年金機構「在職老齢年金早見表」

例えば、年金(月額)が10万円の人の場合「全額支給される賃金の目安」は、

  • 改正前:41万円まで
  • 改正後:55万円まで

と、大きく広がりました。ご自身の働き方を考えるうえで、ぜひ一度早見表をチェックしてみてくださいね。

3. まとめにかえて

今回は、高齢者世帯の家計事情と、2026年4月に改正された在職老齢年金制度について解説しました。高齢者世帯の所得中央値は253万円にとどまっており、経済的なゆとりや健康維持を目的に働き続けるシニアが多い実態があります。在職老齢年金の基準額が月額65万円に引き上げられたことで、就業調整を気にせず働きやすくなる環境が整いつつあります。

人生100年時代と言われる現代において、長く健やかに働き続けることは、自分らしい豊かな老後をつくる強力な味方になります。制度の変更点を正しく理解し、ご自身にとって最適なライフスタイルや働き方を見つけるきっかけにしていただければ幸いです。

村岸 理美
今回の在職老齢年金の基準額引き上げは、シニア世代の就労意欲を後押しする非常に前向きな改正です。ただし、給与が増えれば社会保険料や税金の負担も変わってくるため、額面の収入だけでなく「手取り額」で家計全体を見渡す視点が大切になります。ご自身のねんきん定期便や給与明細を確認しながら、無理のない範囲でやりがいを持って働けるペースを見つけてみてください。

参考資料

村岸 理美