公的年金は偶数月の15日に支給されます。次の支給日は10月ですが、15日が土日祝日にあたる場合は直前の平日に前倒しで振り込まれる点も覚えておきたいところです。
受け取る年金額は、実は人によって大きな差があります。厚生年金の受給者のうち「月10万円未満」の人の割合は、生活費の目安とされる「月20万円以上」の人の割合を上回っているのが実情です。
この記事では、公的年金の2階建てのしくみと平均受給額を確認したうえで、受給額の分布と、年収・加入期間によって受給額がどう変わるのかを試算します。
なお、厚生年金・国民年金の平均額や受給額分布については、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 厚生年金の平均は月15万289円、国民年金は月5万9310円
- 受給者の19.0%が月10万円未満。20万円以上の18.8%を上回る
- 月20万円に届くには、年収750万円で40年間の加入が目安になる試算に
1. 年金は「2階建て」。まず加入している制度を確認する
年金制度のしくみについては受給額を一覧でまとめた記事でも解説されていますが、金額を見る前に、まず制度の土台を押さえておきましょう。
日本の年金制度は、「国民年金(基礎年金)」を土台に「厚生年金」が上乗せされる2層構造です。国民年金は働き方や立場を問わず加入する年金であるため「基礎年金」とも呼ばれます。厚生年金は、会社員や公務員など企業・官公庁に雇用される人が、国民年金に上乗せする形で加入する年金です。
それぞれの制度の要点を整理します。
1.1 国民年金(1階部分)
親記事では、国民年金の加入対象がこう説明されています。
日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入義務付けられているのが国民年金です。
- 加入対象:原則として、日本に住む20歳以上から60歳未満の全員
- 年金保険料:全員一律(※1)
- 老後の受給額:40年間(480カ月)欠かさず納めれば満額受給(※2)
- 被保険者:第1号~第3号(※3)
※1 国民年金保険料の月額:2026年度 1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の月額:2026年度 7万608円
※3 第1号被保険者は農業者・自営業者・学生・無職の人など、第2号被保険者は厚生年金の加入者、第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者
1.2 厚生年金(2階部分)
厚生年金の保険料について、親記事はこう述べています。
現在の保険料率は「18.3%」で固定されており、これを労使折半で負担します。
- 加入対象:会社員や公務員、またパート・アルバイトで特定適用事業所(※4)に働き一定要件を満たした人が、国民年金に上乗せで加入
- 年金保険料:収入に応じて決まる報酬比例制(※5)
- 老後の受給額:年金加入期間や納付済保険料によって、個人差が出る
- 被保険者:第1号~第4号(※6)
※4 1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※5 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
※6 第1号は、第2号~第4号以外の、民間の事業所に使用される人、第2号は国家公務員共済組合の組合員、第3号は地方公務員共済組合の組合員、第4号は私立学校教職員共済制度の加入者
厚生年金は収入に応じて保険料が決まるため、加入期間と現役時代の年収によって、将来の受給額に大きな差が生まれます。次章で、実際の平均額を確認していきましょう。
2. 厚生年金は月15万円、国民年金は月5万9000円が平均
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金と国民年金の平均年金月額を見ていきましょう。
※この記事で紹介するのは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の、国民年金の月額部分を含む年金額です。
2.1 【全体・男女別】厚生年金の平均月額はいくら?
- 男女全体:15万289円
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
※ここでは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の年金月額を紹介しています。
2.2 【全体・男女別】国民年金の平均月額はいくら?
- 男女全体:5万9310円
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
国民年金の保険料は一律なので、将来もらえる年金額にも大きな差は出にくく、平均して男性は月6万円台、女性は月5万円台となっています。
国民年金だけで月10万円以上を受け取るのは現実的には難しいといえるでしょう。
一方で、厚生年金は国民年金に上乗せして支給される仕組みです。保険料が収入に応じて決まるため、もらえる年金額には大きな差が出やすいのが特徴です。
公的年金の平均額を踏まえると、公的年金収入だけで老後の生活を維持できるのかが気になるところです。
公的年金の平均年金月額は、厚生年金で15万289円、国民年金で5万9310円。世帯に一人でも年金月額が20万円以上の人がいれば、年金収入だけで生活費の大部分をカバーできる可能性は高まるでしょう。
一方、国民年金のみで生活費をすべて賄うのは現実的に厳しいケースが少なくありません。その中で、1人あたり「月10万円」程度の年金収入があれば、公的年金を中心に生活を組み立てるための一つの目安になると考えられます。
では、実際に厚生年金(国民年金を含む)の受給者のうち、「月10万円未満の人」と「月20万円以上の人」のどちらが多いのでしょうか。
3. 「月10万円未満」の人は「月20万円以上」の人より多い
厚生年金の受給額は、加入期間の長さ、およびその間の収入により大きな個人差が出ます。ここからは厚生年金(国民年金部分も含む)の年金月額分布を見ていきましょう。
3.1 【厚生年金】「受給額ごとの人数」を確認
- 1万円未満:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金(国民年金を含む)の受給権者(男女全体)における年金額の分布は、以下の通りです。
- 月額10万円未満:19.0%
- 月額20万円以上:18.8%
つまり、高額受給者である「20万円以上」の人よりも、「10万円未満」の受給権者の方が多いのです。
公的年金のみで老後を暮らす場合、現役時代と比べて収入は大幅に少なくなるのが一般的です。年金生活が始まってから慌てることがないよう、具体的な資金計画を、ゆとりを持って立てておくことが大切になるでしょう。
【参考データ】厚生年金(男女全体)の受給額分布
- 10万円未満の割合:19.0%
- 10万円以上の割合:81.0%
- 15万円以上の割合:49.8%
- 20万円以上の割合:18.8%
- 20万円未満の割合:81.2%
- 30万円以上の割合:0.12%
ここで紹介した割合は、厚生年金(国民年金を含む)を受給している人に限ったデータです。
これに国民年金のみを受け取っている人々を含めて全体の受給権者で考えると、「月10万円未満」の割合はさらに増え、逆に「月20万円以上」を受け取っている人の割合はさらに減ることが推測されます。
4. 【試算】月20万円に届くには、年収と加入期間がどれくらい必要か
受給者の2割弱しか届いていない「月20万円以上」。実際にそこへ到達するには、現役時代にどのくらいの年収・加入期間が必要なのでしょうか。厚生年金の報酬比例部分の計算式を使って試算してみましょう。
まず、40年間フルで加入した場合に、年収によって受給額がどう変わるかです。
【年収400万円×40年】報酬比例分 月約7万3080円+基礎年金 月7万608円=月額約14万3688円
【年収600万円×40年】報酬比例分 月約10万9620円+基礎年金 月7万608円=月額約18万228円
【年収750万円×40年】報酬比例分 月約13万7025円+基礎年金 月7万608円=月額約20万7633円
40年間フルで加入したとしても、年収600万円ではまだ20万円に届かず、750万円でようやく超える計算になります。本文で確認した「20万円以上は18.8%」という数字が、決して低いハードルではないことが分かります。
次に、年収を400万円に固定し、加入期間を変えるとどうなるかも見てみましょう。
【年収400万円×20年】報酬比例分 月約3万6540円+基礎年金 月3万5304円=月額約7万1844円
【年収400万円×30年】報酬比例分 月約5万4810円+基礎年金 月5万2956円=月額約10万7766円
【年収400万円×40年】報酬比例分 月約7万3080円+基礎年金 月7万608円=月額約14万3688円
同じ年収400万円でも、加入期間が20年から40年に倍増すると、受給額はおよそ2倍の約7万円増になります。年収を上げることと、加入期間を延ばすことは、どちらも受給額に効きますが、加入期間は「働き続ける年数」そのものなので、転職や独立で厚生年金の空白期間ができると、その分だけ将来の受給額が下がる点に注意が必要です。
なお、この試算は報酬比例部分の乗率を一律5.481/1000として計算した簡易的なものです。実際の受給額は生年月日や加入時期によって計算方法が異なり、賞与の扱いなども影響します。正確な見込額はねんきん定期便やねんきんネットでご確認ください。
試算のとおり、月20万円というラインは、年収600万円台の方でも40年間フルで働き続けて、ようやく届くかどうかという水準です。「平均が15万円台だから自分もそのくらい」と考えるより、ご自身の年収と加入見込み期間から逆算して考えるほうが実態に近づきます。
また、加入期間の試算で見たとおり、転職や独立による厚生年金の空白期間は、そのまま将来の受給額の目減りにつながります。会社員を離れる予定がある方は、その期間の国民年金保険料をどう扱うかも含めて、早めに確認しておくことをおすすめします。
受給額が思ったより少ないと分かったときこそ、iDeCoやNISAなど私的年金・資産形成の出番です。公的年金の見込額を早めに把握し、不足分を補う準備期間を長く取ることが、老後の安心につながります。


