2026年10月から、パートタイムや有期雇用で働く方の待遇改善を目的とした新しいルールが施行されます。厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査(2026年6月分結果速報)」によると、フルタイム労働者とパートタイム労働者の現金給与総額には約5.5倍もの開きがあることがわかりました。
社会保険労務士として企業の労務管理や従業員の方からのご相談をお受けしていると、「同じような仕事をしているのに、正社員と比べてお給料やボーナスが少なすぎる気がする」という切実な声によく耳を傾けます。働く時間や責任の重さが違うとはいえ、モヤモヤを抱えたまま働くのは心苦しいものです。
本記事では、月給差「5.5倍」の背景にある数字のカラクリを紐解きながら、2026年10月にスタートする3つの改正内容をわかりやすく解説します。パートタイムで働く方が知っておきたいポイントもまとめましたので、ご自身の働き方を見つめ直すヒントにしてください。
1. 正社員とパート社員の月給差「3.3倍」が実態に近い。賞与など特別給与の差は約24倍
厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年6月分結果速報」によると、事業所規模5人以上の企業の一般労働者(以下、正社員)の現金給与総額は71万5604円、パートタイム労働者(以下、パート)は12万9042円でした。その差は約5.5倍です。
統計表「第1表 月間現金給与額」

出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年6月分結果速報」
しかし、この数字を見て「待遇に5.5倍の差がある」と単純に判断するのは早計です。なぜなら6月は、多くの企業で夏の賞与(ボーナス)が支給されるタイミングだからです。
賞与などの「特別に支払われた給与」を除いた金額を見ると、正社員が38万3221円であるのに対し、パートは11万5371円です。その差は約3.3倍まで縮まります。
また、6月の労働時間は、一般労働者が166.3時間であるのに対し、パートは79.8時間です。労働時間で割り戻すと、正社員の時間当たりの給与は約2304円、パートは約1446円となります。時給ベースでみるとその差は約1.6倍です。
今回の調査結果で検討すべきポイントは、「同一労働同一賃金」を原則として、次の待遇差が合理的といえるのか否かです。
- 時給差が約1.6倍
- 賞与など特別給与の差が約24倍(正社員の平均は33万2383円、パートは1万3671円)
2. 2026年10月から「同一労働同一賃金」3つのルール改正
2026年10月の改正は、正社員とパートの待遇差が合理的といえるのか否かを企業に問うものと言えます。主な改正点は3つあります。
パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります

出所:厚生労働省「リーフレット パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります」
2.1 改正点①:「待遇差の説明を求められる」ことを明確化(労働条件明示事項の追加)
パートの雇い入れ時に、労働条件通知書などで「待遇の相違等について説明を求めることができる」旨を明示することが義務付けられます。雇い入れ時だけでなく、労働契約を更新するときにも同様の対応が必要です。
待遇差について質問しやすくなり、安心・納得して働き始められる環境整備が進みます。
2.2 改正点②:待遇差を設ける基準の明確化(同一労働同一賃金ガイドラインの見直し)
待遇差が合理的といえるのか否かを判断するための考え方を示した「同一労働同一賃金ガイドライン」が見直されます。
賞与や退職手当、各種手当などについて、どのような待遇差が不合理にあたるのかが、より具体的に示されました。不合理な待遇差をなくし、働きに応じた公正な評価・処遇の実現を目指したものです。
2.3 改正点③:待遇差に関する説明方法の明確化(企業の雇用管理上の措置の見直し)
パートから「正社員との待遇差」について説明を求められた際、企業は以下のどちらかの方法で回答することが明確化されます。
- 資料を活用し口頭により説明する方法
- 説明すべき事項を全て記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法
企業には合理的な理由の開示が求められ、従業員は納得できる根拠があるかどうかを確認しやすくなります。