3. iDeCoを選ぶ前に知っておきたい3つの注意点

iDeCoのメリットは大きい一方で、NISAや定期預金にはない制約もあります。加入を検討する前に、次の3点は必ず押さえておきましょう。

3.1 注意点1:原則60歳まで引き出せない

iDeCoは老後資金づくりに特化した制度であるため、途中で急にお金が必要になっても、原則として60歳まで引き出すことができません。教育費や住宅資金など、途中で使う可能性がある資金は、NISAや預貯金など、いつでも引き出せる形で確保しておくことが大切です。

3.2 注意点2:加入期間が短いと、受給開始年齢が繰り下がる

60歳から年金資産を受け取るには、60歳になるまでの「通算加入者等期間」が10年以上必要です。10年に満たない場合は、受給開始年齢が段階的に繰り下がります。

通算加入者等期間に応じた受給開始年齢3/3

通算加入者等期間に応じた受給開始年齢

出所:iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)の公表情報をもとにLIMO編集部作成

例えば55歳でiDeCoに加入した場合、60歳時点での加入期間は5年にとどまるため、60歳からすぐに受け取ることはできません。加入を始める年齢が遅いほど、この点には注意が必要です。

3.3 注意点3:退職金の受け取り方によって、税負担が変わることがある

iDeCoを一時金として受け取る場合、退職所得控除が適用されますが、会社からの退職金と受け取り時期が近いと、退職所得控除の重複を避けるための調整が入り、控除額が目減りすることがあります。

2026年1月1日以後に支払われるiDeCoの一時金からは、先にiDeCoを受け取り、後から退職金を受け取る場合の調整対象期間が、従来の「前年以前4年内(5年ルール)」から「前年以前9年内(10年ルール)」に拡大されました。つまり、iDeCoを先に受け取ったあと、両方の控除を重複なく満額で受けるためには、以前よりも長い間隔(10年超)を空ける必要があります。

なお、退職金を先に受け取り、その後にiDeCoを受け取る場合の調整期間(19年ルール)は、これまでと変わりません。

和田 直子

「iDeCoは60歳まで引き出せないから、その分の資金は他で確保しておく必要がある」という点を意外と見落としている方が多い印象です。また、退職金とiDeCoの受け取り方によって税負担が変わる仕組みは複雑で、ご自身の勤務先の退職金制度や受け取り時期次第で有利・不利が変わります。iDeCoに加入する際は、掛金の所得控除という目先のメリットだけでなく、受け取る段階まで見据えて、必要に応じて税理士やお勤め先の担当部署にも確認しておくと安心です。

4. 2026年12月、iDeCoの拠出限度額が拡大される

最後に、今後の制度変更についても触れておきます。

厚生労働省によると、2026年12月から、企業年金のない会社員のiDeCo拠出限度額は、現在の月2.3万円から月6.2万円に引き上げられる予定です。あわせて、iDeCoに加入できる年齢の上限も拡大される見込みです。

今回のシミュレーションでは月2万円という控えめな金額で試算しましたが、上限が引き上げられれば、より多くの金額を掛金として所得控除の対象にできるようになります。ご自身の家計に無理のない範囲で、掛金額を見直すきっかけにしてもよいでしょう。

5. まとめ

毎月2万円を30年間積み立てた場合、定期預金では約765万円にとどまるのに対し、NISA・iDeCoでは想定利回り5%で約1665万円まで増える試算になりました。iDeCoはこれに加えて、掛金の所得控除による節税効果も見込めます。

一方で、iDeCoは原則60歳まで引き出せないこと、加入期間が短いと受給開始年齢が繰り下がること、退職金との受け取り方によって税負担が変わることなど、NISAにはない注意点もあります。それぞれの制度の特徴を理解したうえで、ご自身の資金計画に合わせて使い分けることが大切です。

※本記事のシミュレーションは一定の利回りを仮定した試算であり、将来の運用成果や税額を保証するものではありません。実際の税負担や制度の適用については、税理士や金融機関、お勤め先の担当部署にご確認ください。

参考資料

和田 直子