5. 「不足額を知っても動けない」なら、あと一歩の具体化を。ファイナンシャルアドバイザー・中島卓哉に聞く、行動につなげる考え方

日頃のご相談では、老後資金の不足額を試算する場面が数多くあります。同じように金額を知っても、その後すぐ動き出す方と、そのままになってしまう方に分かれます。

5.1 40代・50代でよく聞かれる、「分かっていても動けない」という声

不足額が大きいほど、目の前の一歩が小さく見えてしまいます。何をどれだけやれば届くのかが結びつかないと、必要性は理解していても手続きまでは進みません。次のような声を耳にします。

40代のお客様
足りないということは分かりました。ただ、自分ひとりで進められる気がしません。何をどれだけやれば追いつくのかが見えず、結局そのままになってしまいそうです。

動き出せるかどうかを分けるのは、意欲よりも「今日できることまで具体化されているか」です。このご相談でも、無理のない積立額で目標に届く見込みを示したところで、その場で設定まで進みました。

5.2 【ファイナンシャルアドバイザー・中島卓哉が回答】具体化して、その場で一歩を進める

中島 卓哉
「不足額が大きいから自分には無理だ」と立ち止まる必要はありません。行動を先延ばしにしない一番の近道は、目標までの道のりを徹底的に具体化することです。

まずは大きな不足額を「毎月いくら積立するか」という身近な数字に割り戻してみましょう。最初から完璧を目指す必要はなく、月々無理のない範囲の金額からスタートすれば十分です。

そして最も大切なのは、その場の勢いで設定手続きまで完了させてしまうことです。仕組みさえ作ってしまえば、あとは時間の経過とともに自動で未来への資産が育っていきます。今日踏み出す小さな一歩が、将来の大きな安心へと繋がります。

金額を知って終わりにしないためには、次の一手まで具体的に落とし込む必要があります。順を追って三つのステップに分けると進めやすくなります。

5.3 ポイント1:不足額を毎月の金額に割り戻す

総額のままでは大きすぎて実感が持てません。残された年数で割り、毎月いくら積み立てれば届くのかに変換すると、現実的な金額として見えてきます。

5.4 ポイント2:無理のない金額で始める

目標に完全に届く金額でなくても構いません。続けられる水準から始めて、収入が増えたときに積み増していく。始めないことが最も大きな機会損失になります。

5.5 ポイント3:その場で手続きまで終える

銘柄を選び、金額を決め、設定を済ませる。持ち帰って検討すると、そのままになってしまうことが少なくありません。設定は後から変更も停止もできるため、まず動かしてしまうほうが前に進みます。

なお、シミュレーションは一定の前提に基づく試算であり、投資信託には元本割れの可能性があります。年金の受給見込額は加入状況によって異なりますので、ねんきん定期便やねんきんネット、年金事務所でご確認ください。積立額はご家庭の収支に応じてご判断ください。

6. まとめにかえて

厚生年金の全国平均は月15万289円ですが、男性16万9967円・女性11万1413円という男女差に加え、都道府県別でも神奈川県の17万457円から青森県の12万8129円まで、月4万円以上の開きがあります。国民年金は納付月数で決まるため地域差は小さく、全国平均は5万9431円です。

こうした平均額と比べるのではなく、まずはご自身の見込額を確認して不足額を出すこと。そのうえで、その総額を「毎月いくら積み立てるか」に割り戻し、無理のない金額でその場で設定まで終える。金額を知って終わりにせず、次の一手まで具体化することが、行動につながる分かれ目になります。

参考資料

中島 卓哉