4. 額面が増えても手取りが同じだけ増えるとは限らない
改定で年金額が増えたというニュースを見ると、その分だけ手元のお金が増えるように思えます。ただ、実際に振り込まれる金額は少し違います。
4.1 年金からは税金と社会保険料が引かれる
年金の振込額は、額面から所得税・住民税・介護保険料・国民健康保険料または後期高齢者医療保険料を差し引いた金額です。これらは前年の所得や自治体の料率で決まるため、年金額が増えた分がそのまま手取りに反映されるわけではありません。
年金額が上がると、これらの負担も連動して上がることがあります。振込通知書で額面と控除額を分けて見る習慣をつけておくと、増減の理由がつかみやすくなります。
4.2 実際に増えるのは6月支給分から
年金額の改定は4月分からですが、年金は2カ月分をまとめて後払いする仕組みです。4月分と5月分は6月に振り込まれますので、改定後の金額を実感するのは6月支給分からということになります。
4月に何も変わらないと感じても、それは正常です。6月の振込通知書が届いたら金額を確かめてみてください。
5. 通帳の金額から逆算する方が多かった
筆者は銀行の窓口で、延べ1万名以上のお客様の相談を受けてきました。年金の話になると、多くの方が通帳に印字された振込額を手がかりにされていました。
5.1 通帳の金額は2カ月分の手取り
通帳に記載されるのは2カ月分をまとめた手取り額です。これを2で割った金額を「自分の年金月額」だと考えている方が多くいらっしゃいました。実際にはそこから控除が引かれた後の金額ですので、額面はもう少し多いことになります。
額面と手取りのどちらで話しているのかを最初に決めておくと、ご家族との会話でも数字が食い違いにくくなります。
5.2 記録の抜けが見つかることもある
窓口で「思っていたより少ない」というご相談を受けたとき、加入記録に抜けが見つかったことがありました。転職の多い方や、会社名が変わった時期のある方は、ねんきん定期便の加入記録を一度通してご覧になることをおすすめします。
記録の訂正は年金事務所で受け付けています。確認して何もなければそれで安心できますので、気になったら早めに動いておくほうがよいと思います。
6. 満額と平均、そして改定の時期を取り違えない
今回の金額を自分に当てはめるときの注意点を挙げておきます。
6.1 満額と平均は別のもの
7万608円は満額、5万9310円は平均です。満額は保険料を480カ月すべて納めた場合の上限で、平均は実際に受け取っている方全体をならした金額です。この2つを同じ土俵で比べると、話がずれます。
6.2 改定は毎年4月分から。8月改定という制度はない
年金額の改定は毎年4月分からで、8月に年金額そのものが変わることはありません。8月に変わるのは医療費の窓口負担割合や高額療養費の区分で、こちらは前年の所得に応じて毎年判定し直されます。別々の話として分けて考えてください。
6.3 在職老齢年金の基準額も変わっている
働きながら厚生年金を受け取る方については、令和8年度の支給停止調整額が65万円になりました。令和7年度の51万円から引き上げられています。前年度の金額で試算すると結果がずれますので、年度を確かめてから計算してください。
7. 確認したい3つのこと
まずは自分の数字を手元に並べるところから始めましょう。
7.1 生年月日から自分の満額を確かめる
昭和31年4月2日以後生まれなら7万608円、それ以前なら7万408円です。記事や報道で見た金額をそのまま使わず、自分がどちらなのかを先に確かめておいてください。
7.2 納付月数を確認する
ねんきん定期便やねんきんネットで、保険料を納めた月数を確認します。480カ月に足りない場合は、その割合に応じて金額が下がります。60歳以降の任意加入で満額に近づける方法もあり、令和8年度の国民年金保険料は月1万7920円です。
7.3 額面と手取りを分けて記録する
年金振込通知書には、額面と控除額と振込額がそれぞれ書かれています。家計の計画に使うのは振込額のほうです。年に一度届く通知書を保管しておくと、翌年の増減の理由も追いやすくなります。
加入記録や見込額でわからないことがあれば、年金事務所やお住まいの市区町村の窓口で確認できます。制度の詳細や個別の判定については、必ず窓口にお問い合わせください。
8. まとめにかえて
令和8年度の老齢基礎年金の満額は月7万608円で、前年度から1300円増えました。昭和31年4月1日以前生まれの方は7万408円で、こちらも同じく1300円の引き上げです。
一方、国民年金の実際の平均月額は5万9310円で、満額との差は1万1298円あります。満額はあくまで上限であり、自分の金額は納付月数で決まります。
改定のニュースは全体の話です。自分の数字はねんきん定期便のなかにありますので、この機会に一度開いてみてください。
参考資料
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額は前年度からどのように改定されたのですか。」
- 日本年金機構「ねんきんネット」
中本 智恵