3. 65歳以上の夫婦のみ無職世帯は月4万2434円の赤字
年金が月22万円台と聞くと、生活はまかなえそうに思えます。ところが実際の家計を見ると、そう単純ではありません。
総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、毎月の実収入が25万4395円、支出が29万6829円でした。差し引き4万2434円の赤字です。
支出の内訳は、食費や住居費、光熱費などの消費支出が26万3979円、税金や社会保険料などの非消費支出が3万2850円です。エンゲル係数は29.9%、平均消費性向は119.2%となっています。
この家計収支については、LIMOの記事「【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説」でも同じ数字が扱われています。
収入の内訳を見ると、合計25万4395円のうち、公的年金などの社会保障給付が22万8614円と約9割を占めています。一方、支出は消費支出と非消費支出を合わせて29万6829円です。
単純計算すると、毎月約4万2000円が不足する計算になります。
出所:【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説
月4万2434円の赤字は、年間にするとおよそ51万円の取り崩しにあたります。中央値1178万円の貯蓄であれば、この水準の赤字が続いた場合に23年ほどもつ計算になりますが、医療費や住宅の修繕など、まとまった支出が加わればもっと早く減っていきます。
4. 収入のすべてが公的年金という高齢者世帯は41.3%
なぜ赤字になりやすいのかを考えるには、収入をどれだけ年金に頼っているかを見ておく必要があります。
厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、公的年金・恩給が総所得に占める割合が100%、つまり収入のすべてが年金という世帯は41.3%でした。
4.1 80%以上を年金に頼る世帯は58.4%
割合別に見ると、20%未満が4.2%、20%以上40%未満が9.7%、40%以上60%未満が13.6%、60%以上80%未満が14.1%、80%以上100%未満が17.1%、100%が41.3%です。
80%以上を年金に頼る世帯は合わせて58.4%、60%以上では72.5%にのぼります。高齢者世帯の多くにとって、年金額の変動がそのまま家計の変動になるということです。
4.2 高齢者世帯の平均所得は336万1000円
同じ調査では、高齢者世帯の1世帯当たり平均所得金額は336万1000円でした。所得の構成割合は、公的年金・恩給が61.3%、稼働所得が25.9%、財産所得が5.8%、年金以外の社会保障給付金が0.5%、仕送りや企業年金・個人年金などその他の所得が6.5%となっています。
稼働所得が25.9%あることからは、働いて収入を補っている世帯が一定数あることも読み取れます。
5. 70歳代でできることを考える
では、いまの状況を踏まえて何ができるのでしょうか。3つ挙げます。
5.1 取り崩しのペースを把握する
まず、毎月いくら不足しているかを実額で確認します。平均の4万2434円ではなく、ご自身の家計での数字です。年間の取り崩し額が分かれば、いまの貯蓄が何年分にあたるかが見えてきます。
5.2 支出のうち固定費から見直す
支出の内訳では、非消費支出(税金と社会保険料)が3万2850円を占めています。
通信費や保険料などの固定費も、一度契約内容を見直しておくと効果が続きます。
5.3 短時間の就労も選択肢に入れる
高齢者世帯の所得のうち稼働所得は25.9%です。健康状態に応じた短時間の就労は、赤字幅を縮める現実的な手段のひとつになります。
ただし、収入額によっては在職老齢年金のしくみで年金額が調整される場合や、税・社会保険料の負担が変わる場合があります。働き方を決める前に、年金事務所に確認しておくと安心です。
この点については、LIMOの記事「【70代の貯蓄・年金・家計のリアル】老後赤字を加速させないためには?投資に頼らない防衛策を徹底解説!」でも次のように指摘されています。
こうした背景を考えると、現役世代のうちから計画的に貯蓄や資産形成に取り組むことが、70歳以降の生活の安心につながるといえるでしょう。
出所:【70代の貯蓄・年金・家計のリアル】老後赤字を加速させないためには?投資に頼らない防衛策を徹底解説!
6. まとめにかえて
70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額は平均2416万円、中央値1178万円でした。非保有が10.9%、3000万円以上が25.2%と、分布の幅は広くなっています。
年金は厚生年金が月15万289円、国民年金が月5万9310円で、夫婦のモデルケースでは月22万7549円です。それでも65歳以上の夫婦のみ無職世帯では月4万2434円の赤字となっており、収入のすべてが公的年金という高齢者世帯が41.3%を占めます。
平均値に一喜一憂するよりも、ご自身の家計で毎月いくら不足しているかを把握するところから始めてみてはいかがでしょうか。そのうえで、支出の見直しや働き方を検討する際は、年金事務所や市区町村の窓口に相談してみてください。
参考資料
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)『家計の金融行動に関する世論調査 2025年』
- 厚生労働省年金局『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』
- 厚生労働省『2025年 国民生活基礎調査の概況』
- 総務省統計局『家計調査報告 家計収支編』
宮野 茉莉子