「つみたてNISAの対象商品って、結局どれを選べばいいの?」——新NISAを始めた方から、いちばんよく受ける質問です。金融庁が2026年8月18日に対象商品の届出一覧を更新しましたが、その本数を見ると、迷うのも無理はありません。ですが、元機関投資家として申し上げたいのは、数の多さは、実は問題の本質ではないということです。何が更新され、私たちは何を軸に選べばいいのか、みていきましょう。

ココがポイント
  • 金融庁が2026年8月18日、つみたて投資枠の対象商品届出一覧を更新した。
  • 内訳は指定インデックス投信286本、アクティブ運用等68本、ETF9本の計363本
  • 数の多さに圧倒される必要はない。選ぶ軸は「指数の中身」と「コスト」。信託報酬は平均0.27〜0.34%(税抜)と低い。

1. 何が更新されたのか——対象商品の全体像

金融庁が公表したのは、つみたて投資枠(新NISA)で積み立てられる対象商品のリストです。区分ごとの本数は、次のように示されています。

【指定インデックス投資信託:286本】 【指定インデックス投資信託以外の投資信託(アクティブ運用投資信託等):68本】 【上場株式投資信託(ETF):9本】

——金融庁「つみたて投資枠対象商品届出一覧(対象資産別)」(2026年8月18日)

合計すると363本。一覧は随時更新されており、今回も一部のファンドが追加されています。数だけ見れば「多すぎて選べない」と感じるかもしれません。しかし、内訳を読むと、選び方の輪郭がはっきりしてきます。

金融庁は、同じ363本を資産タイプ別にも整理しています。それによると、株式に投資する「株式型」が197本、複数の資産に分散する「資産複合型」が157本、そしてETFが9本です。半分強が株式型、残りがバランス型とETF、という構図です。

2. 数の多さの正体——中心は「指数連動」

363本のうち、実に286本を占めるのが「指定インデックス投資信託」、つまり特定の株価指数に連動することを目指すインデックスファンドです。全体の約8割が、この指数連動型なのです。

そして、その顔ぶれは驚くほど共通しています。国内ならTOPIXや日経平均株価、海外なら全世界株式(オール・カントリー)やS&P500といった、おなじみの指数に連動する商品が、運用会社を替えて何本も並んでいます。

言い換えれば、286本といっても、その中身(連動する指数)は、実際にはそれほど多くの種類があるわけではありません。同じS&P500連動でも、運用会社ごとに別々の一本として数えられるため、本数は膨らんで見えるのです。数の多さの正体は、ここにあります。

3. どう選ぶか——"指数の中身"とコストで見る

では、何を軸に選べばいいのか。私の答えはシンプルで、「その指数が何に投資しているか(中身)」と「コスト」の二つです。

指数連動型を選ぶということは、その指数に含まれる企業群にまとめて投資する、ということです。たとえばS&P500なら米国の主要企業、TOPIXなら日本の上場企業の広い集合です。つまり、指数を選ぶ行為は、突き詰めれば「どの国の、どんな企業の集まりに、いくらで投資するか」を選ぶことにほかなりません。

その企業群の"稼ぐ力"や"割高・割安"を測るものさしが、PERやPBR、ROEです。個別株ほど神経質になる必要はありませんが、自分が積み立てる指数が、いまどんな水準にあるのかを知っておくと、値動きに一喜一憂しにくくなります。指標の基本は「PERとは?株価収益率の意味・計算式・目安から予想PER・実績PER、PBR・ROEとの関係まで」や「ROEとは?自己資本利益率の意味・計算式・目安からROA・ROICとの違い・デュポン分解まで」で解説しています。

コストの目安も、金融庁の分類資料に示されています。指定インデックス投信の信託報酬率(税抜)は、「投資先を国内とする」商品で平均0.27%(法令上の上限0.5%)、「投資先を内外・海外とする」商品で平均0.34%(法令上の上限0.75%)でした。いずれも上限を大きく下回り、低コストのインデックス投信が中心であることがわかります。わずかな差に見えても、同じ指数に連動する商品どうしなら、このコスト差が長い積み立てのあいだにじわりと成果を左右します。

残る68本のアクティブ運用等は、指数を上回る成果を目指すタイプです。うまくいけば指数超えも狙えますが、その分コストは高めで、成果は運用者の実力次第。だからこそ、指数連動型を土台に置き、アクティブは中身を吟味して選ぶ、という順序が現実的だと私は考えています。

4. 「363本」に身構えなくていい理由

つみたて投資枠の商品が363本あると聞くと、身構えてしまうかもしれません。ですが、ここまで見てきたように、本当に理解すべきは「本数」ではなく「指数の種類とコスト」です。同じ指数に連動する商品なら、中身はほぼ同じ。あとは信託報酬などのコストと、運用会社の信頼性で絞り込めます。

もっとも、どの指数・どの商品が自分に合うかは、投資できる期間やリスク許容度によって変わります。特定の商品をおすすめするものではありませんが、「数の多さに惑わされず、中身とコストで選ぶ」という視点さえ持てば、リストは怖くなくなるはずです。

5. 元機関投資家イズミダの視点:商品を選ぶ前に、"ものさし"を持つ

私が機関投資家として学んだのは、選択肢が多いときほど、自分の「ものさし」を先に持て、ということでした。363本を一本ずつ比べていたら、日が暮れてしまいます。しかし、「どの指数か(中身)」と「コスト」という二つのものさしを持てば、リストは一気に見通せるようになります。

株式投資は「なんでも鑑定団」と同じで、勝負は値決めです。指数連動型であっても、自分が何に、どんな水準で投資しているのかを知っているかどうかで、長い積み立ての心持ちは変わります。商品の本数に振り回されるのではなく、中身を理解する。その一手間が、続けられる投資への近道だと、私は考えています。もっとも、制度や商品ラインナップは今後も更新されますので、最新の一覧はご自身でご確認ください。

参考資料

泉田 良輔