世界中に熱狂的なファンを持つApple。多くの人は同社を「iPhoneの会社」と認識しており、実際に売上の半分をiPhoneが占めています。しかし、利益の源泉である「粗利」に目を向けると、全く異なる景色が広がっているのをご存知でしょうか。一体なぜ、ハードウェア企業であるはずのAppleが、これほどまでに強固な収益基盤を築くことができたのでしょうか。この秘密について、元機関投資家の泉田良輔氏がAppleの事業構造と財務体質を分析し、業績好調の本当の理由を解説します。
この記事の3つのポイント
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売上の約28%にすぎないサービス事業が、全社の粗利の4割超を稼ぎ出している -
Appleのサービス事業は「自社ハードウェアの普及」を前提としたビジネスモデルである -
経営トップの交代により、iPhoneに次ぐ新たなハードウェアの創出が期待されている -
AI投資競争には直接参加せず、インフラが整うのを待ってハードウェアで勝負する戦略をとっている
「iPhoneの会社」というイメージの裏側
売上構成に見るAppleの現在地
Appleが発表した直近の四半期決算(2026年6月27日締め)のデータを見ると、同社の売上高の構成は以下のようになっています。
- iPhone:49.6%(54,252百万米ドル)
- サービス:28.1%(30,739百万米ドル)
- Mac:9.5%(10,352百万米ドル)
- ウェアラブル・ホーム・アクセサリ:7.2%(7,883百万米ドル)
- iPad:5.7%(6,191百万米ドル)
※全社売上高は109,417百万米ドル
この数字を見ると、やはりAppleはiPhoneの会社であると受け止める人も多いでしょう。しかし、泉田良輔氏は、この数字の推移にこそ注目すべきだと指摘します。
「やっぱりここで気づくべきは、サービスの比率が年々上がってきている点です」
長期的な推移を見ると、サービス事業は新製品の発売サイクルに依存する季節性がほとんどなく、単調に伸び続けています。2010年9月四半期には全社の9.4%にすぎなかったサービス売上の構成比は、今回28.1%にまで拡大しました。
一方で、他のハードウェア製品の推移は対照的です。iPhoneは新シリーズ投入期に売上の山ができる明確な季節性を持ちながら、全体として水準を切り上げてきました。しかし、Macは絶対額で見ると2010年9月四半期から直近まで約16年で2.1倍に成長したものの、全社の成長(5.4倍)には及んでいません。ウェアラブル製品も2021年6月四半期の構成比10.8%をピークに直近では7.2%へ低下しており、iPadに至っては直近の四半期で前年同期比マイナス5.9%と減速が見られます。
Apple 製品カテゴリ別 四半期売上高の推移(2010年9月四半期〜2026年6月四半期)2/3
出所:Apple Inc.「決算8-K Exhibit 99.1/99.2」(SEC EDGAR・64四半期)を基にイズミダイズム作成
※Appleは開示区分を過去に複数回変更しています。2018年より前の期間は旧区分を合算した近似値であり、旧区分のiPhone・iPadには関連サービスが含まれるため現行区分より範囲が広い点にご留意ください。
粗利で見ると景色が変わる
売上高の構成だけを見るとiPhoneが圧倒的ですが、利益の源泉である「粗利(売上高から売上原価を差し引いた利益)」に目を向けると、Appleの真の収益構造が浮かび上がってきます。
直近の四半期において、製品全体の粗利は31,525百万米ドル(構成比57.6%)でした。これに対し、サービス事業の粗利は23,245百万米ドル(構成比42.4%)に達しています。つまり、売上高では全体の28.1%にすぎないサービス事業が、全社の粗利の4割超を稼ぎ出しているのです。
Appleの粗利構成比(FY2026 第3四半期・製品/サービス別)3/3
出所:Apple Inc.「Form 10-Q」(2026年7月31日)/「Form 8-K Exhibit 99.1」(2026年7月30日)を基にイズミダイズム作成
※注記:なお、今回の決算で発表された全社粗利率50.1%には、関税還付による約2ポイントの押し上げ効果が含まれています。また、希薄化後EPS(1株当たり純利益)$2.02にも$0.11の押し上げが含まれており、これらを除いた実力値としての粗利率は約48.1%、EPSは約$1.91となります。
泉田氏はこの強固な収益基盤について、次のように分析します。
「Appleってハードウェア売ってなんぼの会社だと思うんですけど、それに関連してついてくるサービスの収益がもう4割強になっているので、結構安定しているなと思います」
