定年退職を迎えると、それまで入っていた勤務先の健康保険をどうするかを決めることになります。再雇用やパートで働き続ける方、任意継続を選ぶ方、国民健康保険に入る方、家族の被扶養者になる方と、入り方はいくつかあります。

パートなど短時間で働く人が勤務先の健康保険に入るための要件のうち、月額8万8000円以上という賃金の要件が令和8年10月に撤廃予定です。

この記事では、定年退職後の健康保険の入り方と国民健康保険料の決まり方を確認したうえで、10月からの見直しで何が変わるのかを見ていきます。

なお、国民健康保険の対象と保険料の決まり方に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

【2026年度の国民健康保険料】まもなく6月から納期スタート!年間上限は「110万円」に引き上げへ
【2026年度の国民健康保険料】まもなく6月から納期スタート!年間上限は「110万円」に引き上げへ

1. 定年退職後の健康保険は4つの入り方がある

定年退職で勤務先の健康保険を離れたあとは、どこかの公的医療保険に入る必要があります。主な入り方は4つです。

1.1 再雇用やパートで勤務先の健康保険に入る

定年退職後も再雇用やパートで働き、勤務先の健康保険の加入要件を満たせば、引き続き勤務先の健康保険の被保険者になります。短時間で働く場合の要件は、次の章で確認します。

1.2 任意継続は退職日の翌日から20日以内に手続きする

協会けんぽの案内では、任意継続に入るには、退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あり、退職日の翌日から20日以内に手続きをすることが必要です。加入できる期間は2年間です。

保険料は退職前に控除されていた保険料の2倍の額で全額自己負担ですが、令和8年度は標準報酬月額32万円が上限とされています。

1.3 国民健康保険は14日以内に市区町村へ届け出る

任意継続や家族の被扶養者を選ばない場合は、お住まいの市区町村の国民健康保険に入ります。大阪市は、会社などの健康保険を脱退したときは世帯主が14日以内に届け出るよう案内しています。

国民健康保険(以下、国保)は、自営業の方やフリーランス、定年退職後に勤務先の健康保険を抜けた方、無職の方など、職場の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)や後期高齢者医療制度に加入していない方を対象とした公的医療保険制度です。

出所:【2026年度の国民健康保険料】まもなく6月から納期スタート!年間上限は「110万円」に引き上げへ

1.4 家族の被扶養者は60歳以上なら年収180万円未満

被扶養者になるには、年収130万円未満であることが要件です。60歳以上の方は180万円未満になります。同居している場合は、被保険者の年収の半分未満であることも条件です。

この金額は協会けんぽだけのものではなく、健康保険組合や共済組合でも同じ基準が使われています。ただし収入の確認に必要な書類や、別居している家族への仕送りの扱いは保険者ごとに違うことがありますので、加入先に確かめておくと確実です。

2. 国民健康保険料は前年の所得と世帯の人数で決まる

国民健康保険を選ぶときに気になるのが保険料です。国民健康保険料の決まり方を確認しておきます。

2.1 所得割と均等割などを組み合わせて計算する

厚生労働省によると、国民健康保険の保険料は、所得割、資産割、1人当たりの均等割、1世帯当たりの平等割で構成され、どれを組み合わせるかは市区町村が条例で決めています。

所得割は前年の所得をもとに計算されます。定年退職したあとしばらくは、在職中の給与が保険料に反映されることがあります。

2.2 令和8年度から子ども・子育て支援金分が加わった

世田谷区の案内では、令和8年4月分から、これまでの基礎(医療)分・後期高齢者支援分・介護分に加えて、子ども・子育て支援金分が合算されるようになりました。

具体的な料率は市区町村ごとに違うため、国民健康保険に入る前に、お住まいの市区町村で保険料の見込みを試算してもらうと安心です。

3. 2026年10月、短時間で働く人の健康保険は賃金の要件が撤廃される予定

定年退職後にパートで働く場合、勤務先の健康保険に入れるかどうかで、国民健康保険や家族の被扶養者を選ぶ必要があるかが変わります。10月からの見直しの内容を確認します。

3.1 現行の要件は週20時間以上・月額8万8000円以上・学生でないこと

日本年金機構によると、厚生年金保険の被保険者が51人以上の企業などで短時間で働く人は、週の所定労働時間が20時間以上、学生でない、所定内賃金が月額8万8000円以上という要件を満たすと、健康保険と厚生年金保険に加入します。2か月以内の期間を定めて使われる人などは対象から除かれます。

3.2 月額8万8000円以上の要件は令和8年10月に撤廃予定

日本年金機構は、最低賃金以上で週20時間以上働くと所定内賃金が月額8万8000円以上になるため、この要件は令和8年10月に撤廃予定と案内しています。撤廃されると、週20時間以上などの要件で加入が判断されることになります。

企業規模の要件も段階的に広がり、令和9年10月から36人以上、令和11年10月から21人以上、令和14年10月から11人以上の企業などが対象になる予定です。

定年退職後にパートで働くときの健康保険の分かれ目(2026年10月以降の予定)2/2

定年退職後にパートで働く場合に、週20時間以上か、勤め先が被保険者51人以上の企業などかで、勤め先の健康保険・家族の被扶養者・国民健康保険に分かれる流れを示した図

出所:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」、協会けんぽ「被扶養者資格の再確認について」をもとにLIMO編集部作成

太田 彩子

役場で国民健康保険の資格の切り替えを担当していた頃、勤め先の健康保険に入ったあとも、国民健康保険をやめる届出がまだという方の相談を受けたことがありました。勤め先の保険に入る手続きと、国民健康保険をやめる届出は別のものだと覚えておくと安心です。