6月に入ると、自営業やフリーランスの方、そして退職後に勤務先の健康保険を離れた方のもとに、国民健康保険料の納付書が順次届きます。

物価高や光熱費の上昇が続くなか、家計に直結する固定費として「今年はいくらになるのか」と気になっている方も多いのではないでしょうか。

厚生労働省によると、2026年度から国民健康保険料の年間上限額(賦課限度額)が引き上げられ、合計で「110万円」となる見通しです。直近5年間で上限額はおよそ「11万円」上がっており、特に所得の高い世帯にとって影響の大きい改正といえます。

なお、市区町村によっては「国民健康保険税」という名称で徴収している自治体もありますが、仕組みは基本的に同じです。

本記事では、わかりやすさのため以下では「国民健康保険料」と表記したうえで、制度の基本・保険料の決まり方・2026年度の上限引き上げ・原則6月から始まる納期について順に整理していきます。

1. 国民健康保険とは?基本のしくみをやさしく整理

国民健康保険(以下、国保)は、自営業の方やフリーランス、定年退職後に勤務先の健康保険を抜けた方、無職の方など、職場の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)や後期高齢者医療制度に加入していない方を対象とした公的医療保険制度です。

運営は加入者が納める保険料と、国や地方自治体の公費負担によって支えられています。

病気やけがで医療機関を受診したときに、原則3割(年齢や所得によって変動)の自己負担で済むのは、この公的医療保険があるためです。

1.1 こんな方が国民健康保険の対象に

  • 自営業・フリーランスとして働く方
  • 会社を退職し、任意継続や家族の被扶養者にならなかった方
  • パート・アルバイトで職場の健康保険に加入していない方
  • 無職の方(学生・専業主婦を含む)

かつて筆者が自治体の窓口で資格の切り替えに対応していた当時は、「退職してから手続きを忘れていた」という相談も少なくありませんでした。

国保への切り替えは原則14日以内が手続き期限とされており、遅れている間も保険料は遡って課されます。退職や離職のタイミングでは、早めに住んでいる自治体の窓口で手続きを済ませておきましょう。

2. 【医療分・支援金分・介護分】保険料の決まり方を整理

国民健康保険料は、厚生労働省が示す枠組みのもとで、各市区町村の条例によって具体的な料率や算定方法が定められています。仕組みを大きく分けると、次の3区分の合計で年間の保険料が決まります。

  1. 医療給付費分(医療分):加入者の医療費に充てられる部分
  2. 後期高齢者支援金等分(支援金分):後期高齢者医療制度を支えるための負担分
  3. 介護納付金分(介護分):40歳以上65歳未満の方が負担する介護保険分

そのうえで、各区分の保険料は「応能割」と「応益割」の組み合わせで計算されます。

  • 応能割(負担能力に応じた部分):所得割(前年所得に応じて課される)/資産割(固定資産税額に応じて課される、採用していない自治体もあり)
  • 応益割(受益に応じた部分):均等割(加入者1人あたり一律)/平等割(1世帯あたり一律)

世帯単位で被保険者ごとに各区分の保険料を計算し、それらを合算した金額が「年間の国民健康保険料」になります。具体的な料率は自治体ごとに異なるため、詳しい金額はお住まいの市区町村の通知書や窓口で確認してみてください。

3. 【2026年度】保険料の上限額が「110万円」へ引き上げ

国民健康保険料の年間上限額(賦課限度額)は引き上げられる方針です。所得の高い世帯にどこまで負担を求めるかという観点で、これまで段階的な引き上げが続いてきました。

3.1 5年間でおよそ「11万円」分の引き上げ

賦課限度額とは、保険料がこれ以上は増えないように設けられた「年間の上限」のことです。直近5年間で上限額は段階的に引き上げられており、合計ではおよそ「99万円」から「110万円」へと、「11万円」分が積み上がってきました。

この引き上げには、医療費の増加や現役世代の負担構造をふまえ、相対的に所得が高い世帯にも応分の負担を求める狙いがあります。

一方で、上限に到達しない多くの中間所得層の保険料水準を抑える側面もあります。

3.2 上限に到達するのはどんな世帯?

賦課限度額に到達する世帯は、加入者数や所得構成にもよりますが、おおむね事業所得や給与所得などの合計が高水準にある世帯です。

退職して国保に加入した50歳代後半から60歳代の方でも、退職金や不動産所得などで前年の所得が高くなった年は、上限近くまで保険料が上がるケースがあります。

かつて自治体で賦課を担当してきた立場から見ると、所得が前年比で大きく変動した年は、想定外の保険料額に驚く方が多くいました。

確定申告の所得金額がそのまま翌年度の保険料計算に使われるため、申告内容の段階から国保料への波及を意識しておきたいところです。

4. 【6月スタート】国民健康保険料の納期はどう設定されているか

国民健康保険料の納付スケジュールは自治体によって異なりますが、6月から翌年3月までの「10回払い」を採用しているところが多く見られます。

前年の所得が確定したあと、6月に当該年度の保険料額が決定し、納付書が郵送される流れです。

4.1 東京都杉並区の例(普通徴収)

  • 納期:6月から翌年3月までの「10回払い」
  • 第1期の納期限:6月末日(休日の場合は翌営業日)
  • 納付方法:口座振替、コンビニ、金融機関・郵便局・区役所窓口、スマホ決済アプリ、クレジットカード、インターネットバンキングなど
  • 納付書の郵送時期:6月

65歳から74歳までの方で一定の要件を満たす場合は、年金からの天引き(特別徴収)に切り替わるケースもあります。杉並区では10月以降、偶数月の年金支給日にあわせて徴収されます。

参考:杉並区「国民健康保険料の納期」

納付書が手元に届いたら、まずは「総額」と「各期の納期限」を確認してみてください。一括前納や口座振替に切り替えると、納め忘れの防止につながります。

会社を退職した直後の年は前年の所得が高く、保険料の負担感が大きくなりがちなので、生活費との兼ね合いを早めに整理しておきましょう。

5. 【まとめ】上限引き上げと納期スタート。今年度の通知書はしっかり確認を

2026年度は、国民健康保険料の年間上限額が「110万円」に引き上げられる方向で議論が進んでおり、5年間でおよそ「11万円」の上昇となります。

上限に到達する世帯は限られますが、現役世代から退職後の世代まで、保険料そのものの見直しは多くの加入者に影響する内容です。

そして6月は、自治体によっては「10回払い」の第1期がスタートする時期です。納付書が届いたら、医療分・支援金分・介護分の内訳と、各期の納期限を確認してみてはいかがでしょうか。

負担が大きいと感じたときは、減免制度や納付相談の窓口もあるため、ためらわずにお住まいの市区町村の保険年金担当課へ問い合わせてみてください。

制度を正しく理解し、家計のなかに国民健康保険料の支払いを上手に組み込んでおくこと。それが、毎年の負担を「驚き」ではなく「想定内」にしていく一歩につながります。

参考資料