3. なぜドリンクステーションなのか?新規カテゴリー参入を決意した経緯
では、なぜNoendはこのカテゴリーに参入したのでしょうか。
ドリンクステーションは、これまでNoendが展開してきた美容・セルフケア系の製品とはまったくジャンルが異なるように見えます。しかし、開発の出発点には、Noendがこれまで手掛けてきた製品との技術的なつながりがあったといいます。
Noendでは、シャワーヘッドや洗濯機用アダプターなど、水に関する製品を手掛けてきました。これらに共通しているのは、高い浄水技術です。特に塩素除去の品質にこだわっており、一般社団法人浄水器協会からのお墨付きも得ています。
こうしたNoendの資産を「どれだけ多くの人の役に立てることができるか」という視点で検討を重ね、その結果、候補として挙がったのが「ウォーターサーバー」でした。
浅川代表は、ウォーターサーバー市場について「市場規模は大きい一方、製品の選択肢は意外と限られている」と感じていたと話します。デザインや価格だけではない、新たな価値を提供できる余地があると考えたことが、開発を進める決め手になりました。
そこから、「氷を作れるウォーターサーバーがあったらいいよね」「コーヒーって、こういうふうに入れる方がおいしく飲めるよね」「今はジムやサロンで水素水の需要が増えているよね」と、どんどん発想は広がり、最終形の5-in-1ドリンクステーションに辿りつきました。
4. 開発で苦労したのは「サイズ」と「多機能化」の両立
機能を増やせば、当然ながら内部の構造は複雑になります。
Drink Atelierの開発で、浅川代表が特に苦労したと語ったのが、本体サイズを抑えながら、十分な原水タンクの容量と多機能性をどう両立するかでした。
多機能にするだけなら、本体を大型化すれば解決できます。しかし、キッチンに置く製品として考えれば、それでは本末転倒です。
水道水を貯める原水タンクの容量も重要なポイントです。スリム化のために小さくしてしまうと、水を補充する頻度が高くなり、利便性が落ちてしまいます。
そこで、多機能化によって本体を大きくしないための工夫として取り入れたのが、「外付けユニット」という発想でした。
Drink Atelierはすべての機能を本体内部に詰め込むのではなく、コーヒードリップや水素水生成といった機能をモジュール化し、本体に取り付ける設計になっています。これにより、本体サイズを大きくすることなく、必要に応じて機能を追加することが可能になりました。
最終的にDrink Atelierは、幅295×奥行432×高さ484mmというキッチンにも設置しやすいスリムなサイズになり、原水タンクの容量も5Lを確保し、日々の使いやすさにも配慮したサイズと容量を両立させました。
外付けユニットを採用した構造は、将来的な可能性も秘めています。
浅川代表は「外付けユニットなら新しいアタッチメントを追加して機能を拡張する余地もある」と話します。これはNoendブランドの「終わらない開発」という考え方にも通じてきます。
5. クラウドファンディングで「売る」のではなく、ユーザーの声を聞く
Drink Atelierは従来のNoend商品と同様にクラウドファンディングから販売をスタートします。
Noendにとってクラウドファンディングは、新製品をいち早く販売する場所であると同時に、ユーザーとのコミュニケーションの場でもあります。
浅川代表は、その違いを次のように説明します。
「一般販売の場合だと、購入前の質問はそこまで多くない。分からなかったら買わない、というだけだが、クラウドファンディングの場合は製品開発やマーケティングに役立つ質の高いフィードバックを多数得ることができる」
Noendの初期商品ではテストマーケティングの意味合いが強く、一方的に情報を発信していましたが、現在はユーザーが質問や意見を伝えやすい導線を用意し、より積極的に声を聞くスタイルに変化させたそうです。
Drink Atelierについても、取材時点で購入前の質問が300〜400件ほど寄せられているとのこと。「今後もこういうものがあったらうれしい」といった意見もあり、次の製品やブランドの方向性を考える上でも重要なヒントになっています。
6. 買い切り型は受け入れられるのか?クラウドファンディングで検証したいこと
今回のクラウドファンディングで検証したいこととして浅川代表が例に挙げたのが、「買い切り型のドリンクサーバーが受け入れられるかどうか」です。
一般的なドリンクサーバーには、月額料金を支払うサブスクリプション型のサービスも多くありますが、Drink Atelierは本体を購入し、水道水を補充して使用するスタイルを採用しています。
Drink Atelierは買い切り型のため、本体価格を一度に支払う必要があります。価格は一般販売で19万8000円、クラウドファンディングで13万8600円という設定です。
交換用の浄水フィルターは1万3800円で、交換目安は1000L。一般的な使用量なら年1回程度の交換が発生する計算です。こうしたメンテナンス費用も含め、ユーザーが全体のコストをどのように受け止めるのかも注目されるポイントです。
機能が似ているから同じ販売方法を取るのではなく、Drink Atelierならではの価値があるからこそ、所有するという選択肢が成立するのかを確かめる。ここにもNoendらしい実験的な姿勢が見えます。
7. Noendの「顔」になる製品へ。新しい領域への挑戦は続く
浅川代表は、Drink AtelierをNoendのラインナップの中でも重要な位置にある製品だと考えています。
シャワーヘッドや洗濯機用アダプターも生活に役立つ製品ですが、Drink Atelierは水を飲む、コーヒーを飲む、氷を使うなど、一日の中で何度も使う可能性があり、役に立つ場面もそれだけ多くなります。
Drink Atelierは、Noendにとって単なる新製品ではなく、今後のブランドを象徴する存在としての期待も背負っており、浅川代表も「Noendの顔になれるポテンシャルはある」と自信をのぞかせます。
Noendは年内にも、新しい領域への製品発表を計画しているとのこと。クラウドファンディングを活用した独自の開発手法やマーケティングで、どのような新しい価値を提案してくれるのか、注目したいところです。
8. 家電ライターのひとこと
「異なる5つの機能をスリムな1台に詰め込んだ」というだけでも注目に値するDrink Atelierは、個々の機能においても、光るものが多くあります。
例えば、製氷では不純物を徹底的に取り除き、透明感のある溶けにくい氷を作り出します。これは冷蔵庫で作る氷とは一味異なり、「最高の一杯を作る」という強いこだわりを感じさせます。
コーヒーのドリップも、お湯を回転させながら注いだり、蒸らし時間にこだわったり、美味しいコーヒーを淹れるための工夫が凝らされており、単なるおまけ機能ではありません。
「自分の家ならここに置く」「お酒を飲むときに氷にこだわってみるか」など、公開済みの情報からだけでも、いろいろと楽しい妄想を広げてくれる一品でした。
参考資料
大蔵 大輔



