3. 【元銀行員の視点】上限に張り付く層は保険料が軽く、年金も抑えられている
上限のしくみは、負担と給付の両側に効いています。片方だけを見ると評価を誤ります。
3.1 負担率で見ると逆転が起きる
標準報酬月額が65万円で頭打ちになるということは、月収が65万円の方も100万円の方も、厚生年金保険料は同じ額になるということです。
収入に対する保険料の割合で見ると、収入が高いほど負担は軽くなります。ここだけを見れば高収入層に有利な仕組みに見えます。
ただし年金額の計算にも同じ65万円までしか反映されません。負担が軽い分、受け取る額も抑えられます。月30万円以上が0.12%にとどまるのは、この頭打ちが効いているためです。
3.2 2027年からは両側が動く
上限が68万円、71万円、75万円と上がっていくと、該当する方の保険料は増えます。同時に、年金額の計算に反映される部分も広がります。
負担だけが増えるわけではありませんが、手取りへの影響は先に出ます。受給は先の話なので、現役期の家計としては負担増が先行する形です。
4. 【確認したいこと】自分が上限に該当するかを見る
影響があるかどうかは、給与明細と標準報酬月額で確かめられます。
4.1 給与明細の控除欄を見る
厚生年金保険料が毎月同じ額で止まっているなら、上限に達している可能性があります。標準報酬月額は毎年1回、4月から6月の報酬をもとに見直されます。
勤務先から届く標準報酬決定通知書でも確認できます。手元にない場合は、ねんきんネットで加入記録から標準報酬月額を見ることもできます。
4.2 賞与にも上限がある
見落としやすいのが賞与の扱いです。厚生年金の標準賞与額には1回あたり150万円という上限があります。
賞与の比重が大きい方は、月額と賞与の両方で頭打ちになっていることがあります。年収に対する実際の反映割合は、想像より低いかもしれません。
5. 【判断軸】年金の頭打ちをどこで補うか
上限があること自体は変えられません。そのうえで何をするかという話になります。
5.1 上限を超える部分は自分で積み上げる
公的年金で反映されない部分は、企業年金やiDeCo、NISAといった手段で補うことになります。どれを使うかは勤務先の制度によって変わります。
ただしこれらには元本割れの可能性や、受け取り時の税制など、それぞれ異なる注意点があります。公的年金のように受給額が約束されているわけではありません。
5.2 世帯単位で見ると余地が変わる
ご本人の年金が頭打ちでも、配偶者の加入状況によって世帯の受給額は変わります。配偶者が厚生年金に加入して働く期間を延ばせば、世帯としての2階部分は積み上がります。
個々の条件によって最適な形は変わりますので、判断に迷う場合は年金事務所や金融機関の窓口で、ご自身の加入記録をもとに相談してみてください。
6. まとめにかえて
厚生年金の平均受給額は月額15万289円で、月20万円以上は18.8%、月30万円以上は0.12%でした。約8割は月20万円未満です。
背景には、保険料と年金額の計算に使う標準報酬月額が65万円で頭打ちになるしくみがあります。会社員男性の約10%がこの上限に該当しています。
2025年6月13日に成立した年金制度改正法により、この上限は2027年9月から68万円、2028年9月から71万円、2029年9月から75万円へと段階的に引き上げられます。負担と受給の両方が動くので、いま高い報酬を受けている方は影響を確認しておくことをおすすめします。
参考資料
和田 直子