60歳を過ぎたころから、ふと「あのころに戻れるなら、もう少し違う選択をしたのに」と口にする人が少なくありません。若いうちは老後がずっと遠い話に感じられ、目の前の生活や仕事に精一杯だったからこそ、後になって気づくことも多いようです。

横野 会由子
筆者はファイナンシャルアドバイザーとして日頃お客様の資産形成のご相談を承りますが、60歳代のお客様から実際にこんなお声を聞くことがしばしあります。

特に年金や貯蓄をめぐる後悔は、実際に受給が始まる60代を迎えてから胸に迫ってきます。今回は、老後になって「若いうちにしておけばよかった」と語られることの多い5つのポイントを、2026年度(令和8年度)の年金データとあわせて整理します。

ココがポイント
  • 60歳代になってから後悔しやすいお金と生活の5つのポイント
  • 厚生年金と国民年金の男女別・平均受給月額(最新データ)
  • 若いうちから無理なく始められる老後対策と相談窓口の活用法

1. 60歳代が語る「若いうちにしておけばよかった」5選

1.1 ①ねんきん定期便を毎年きちんと確認する

毎年誕生月に日本年金機構から届くねんきん定期便を、封を切らずにしまい込んでいた人ほど、受給が近づいてから慌てる傾向があります。加入期間の抜けや、勤務先の記録漏れは、若いうちに気づけば訂正できることが多いものです。50歳代・60歳代になってから20年前の記録を掘り起こす作業には、大きな労力がかかります。

1.2 ②厚生年金への加入継続を意識する

厚生年金は現役時代の報酬と加入期間で受給額が決まる仕組みで、加入期間が長いほど老後の年金額は積み上がります。一時的な離職や短時間勤務への切り替えは、そのときの生活には必要でも、老後の受給額には影響します。若いうちから雇用形態や勤務時間の選択が老後にどう跳ね返るかを意識しておけたら、と語る60代は多い印象です。

1.3 ③NISAとiDeCoで長期の積立を始める

NISAは運用益が非課税になる制度で、若いうちから始めるほど時間を味方につけられます。iDeCoは掛金が所得控除になり、運用益も非課税、受け取り時にも税制優遇があるという三重の税制メリットがあります。20歳代・30歳代のうちから月々少額でも積み立てておけば、複利の効果で老後資産の厚みが変わってきます。

1.4 ④健康への投資を惜しまない

60歳代・70歳代の家計を圧迫する要因の1つが医療費・介護費です。若いうちに歯の治療や生活習慣病の予防、適度な運動習慣を身につけておけば、老後の医療費支出を抑えられます。健康は経済的な安心にも直結する資産の1つです。

1.5 ⑤家計簿と支出見直しの習慣を身につける

収入が多い時期ほど支出が膨らみやすく、月々の家計を細かく把握しないまま50歳代・60歳代を迎えるケースも見られます。家計簿アプリや口座連携ツールが充実した今、若いうちから固定費を可視化する習慣が身につくと、老後の暮らしを設計しやすくなります。