公的年金は2026年度まで4年連続で増額されており、満額の基礎年金やモデル年金の水準も引き上げられました。とはいえ、実際に受け取れる金額は、収入や加入期間、働き方しだいで人それぞれです。

本記事では、平均年収約610万円で約40年働いた男性の年金額の目安を中心に、モデルケースと平均受給額を整理します。あわせて、年金だけでは足りない「娯楽費」との付き合い方も考えてみましょう。

齊藤 慧
厚生労働省や社会保障の現場を記者として取材してきた経験から申し上げますと、毎年のように発表される『年金のモデル受給額』や『改定率アップ』という華やかな見出しの裏には、生活者の視点を奪いかねない大きな落とし穴があります。

とくに『4年連続で額面が引き上げられた』という情報は一見の朗報です。

ただ、私たちがスーパーのレジや電気代の支払いで使うのは『額面の数字』ではなく、税金や介護保険料などが天引きされた後の『純手取り(可処分所得)』です。

平均年収約610万円というエリートコースを歩んだ方がもらえる月額17万円余りの年金から、実際にいくら手元に残り、なぜ生活費がカツカツになりやすいのか。厳しい国家財政の現実を踏まえ、ご自身の通帳を守るための手取り防衛の視点を持って本文を読み解いてください。

※本記事は、編集部が厚生労働省などが公表する公式資料を確認の上、執筆・検証しています。
ココがポイント
  • 2026年度の年金改定はプラスとなったが、物価高騰率を下回る改定幅であるため、実質的な購買力は低下傾向にある。
  • 平均年収約610万円・40年加入男性のモデル額「月約17.6万円」を単身世帯や夫婦世帯の平均的な生活費と比較すると、基礎生活費を賄うのが精一杯であるのが現実。
  • 老後の家計破綻を防ぐには、年金の「額面」ではなく住民税や社会保険料が引かれた後の「純手取り」を計算し、就労の継続による収入の多層化を図ることが不可欠である。

1. 【2026年度】国民年金・厚生年金の年金額モデルを確認

2026年度の年金額について、厚生労働省は次のような例を示しています。

  • 国民年金(老齢基礎年金・満額):月額7万608円(1人分)
  • 厚生年金(夫婦2人分のモデル):月額23万7279円

厚生年金のモデルは、平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円で40年間働いた夫の厚生年金に、夫婦2人分の基礎年金を合わせた金額です。共働きや単身など世帯の形が多様化しているいま、すべての世帯に当てはまるとはいえません。あくまでも、参考値と捉えてください。

2. 4年連続の増額でも「実質は目減り」している

注意したいのは、増額が家計のゆとりに直結するとは限らない点です。2026年度の改定率は国民年金で前年度比1.9%でしたが、物価上昇率は3.2%に達しています。

背景には「マクロ経済スライド」という仕組みがあります。将来にわたって年金制度を維持するため、物価や賃金の伸びから調整率を差し引いて改定額を決める仕組みです。

このため年金の伸びは物価に追いつかず、実質的な購買力はむしろ下がっています。つまり、収入が年金だけではインフレに負けてしまい、生活が苦しくなってしまうことを意味します。